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新潟の精神神経学会に参加する3 2019年6月21日(金)

   以下は精神神経学会の2日目と3日目で取った僕のノートです。発表者の名前も書かせていただいていますが、僕の聞き取りは正確ではありませんので、文責は僕にあります。またあくまでも僕が関心を持ったところだけを記録しています。

●シンポジウム「ポジティブ精神医学の産業メンタルヘルスへの応用」(司会:大野裕、三村將)
◎ポジティブ精神医学的視点が企業や地域にもたらすもの(佐久間啓)
・精神科医療の実践をさらに広げて豊かな地域社会を作ることを目指している。
・医療施設・福祉施設に加えて、農場・レストラン・美術館なども作っている。
◎ポジティブ精神医学を活用した産業界におけるメンタルヘルス向上(須賀英道)
・精神科医は原因追求視点に傾きがち。今後は健康創生的な視点を持つ必要がある。
・働きがいとは、活力と熱意を持って仕事に没頭でき、仕事に誇りを持てること。
・モチベーションの向上が行動変容につながり、評価を受けることでさらにモチベーションが高まるという好循環を目指して介入する。
◎企業におけるメンタルヘルスプロモーションの現状と健康経営におけるポジティブメンタルヘルス(奥山真司)
・従来は職場環境の安全と身体面の健康が強調されてきた。それに加えてさらに幸福感の醸成まで目指している。
・幸福感の醸成は統制的なアプローチでは難しい。ー発的な相談、△△訥度自律的な教育、自主的な風土、を職場に定着させていくことが必要。

●シンポジウム「ASDとADHDの臨床的特徴と鑑別診断」(司会:岩波明、柏淳)
◎「小児期のASDとADHDの臨床的特徴と鑑別診断」(横山冨士男)
・ASDとADHDには似たような状態を呈しやすい。両方ともに全体を把握するのが苦手である。
・対人交流の面では、ADHDは広く浅い関係で表面的になりやすい。ASDでは好き嫌いが激しく、共通の興味を介して仲間を作ることがある一方で、他者です視点を持ちにくい。

●ワークショップ「脳波の応用コース」(司会:山内俊雄、矢部博興)
◎臨床脳波の持つ限界と解決法(山内俊雄)
・脳波では期待した異常波が出ずにがっかりすることも多い。理由としては以下のものがある。’承’修変動するため、タイミングが合わないと異常波が見つからない。脳機能の異常がまれにしか脳波に反映されない病気だから。F皮上脳波では拾える異常が限られているから。
・脳波の波形から診断がつくことはまれである。脳波は脳機能の一面を見ているに過ぎない。また脳の全体ではなく限られた領域の状態を表している。
・対策として以下のものがある。‐評から脳機能障害を疑ったらすぐに脳波を取る。1回だけでなく繰り返し取る。7于瓩鯆匹Δ海箸埜えてくることがある。の彎仮評と突き合わせることで脳波の意義が高まる。ド螻菲,魍萢僂垢襦β召諒法を検討する(長時間脳波、ビデオ脳波、頭蓋内脳波)。
◎「非てんかんの脳波」(太田克也)
・軽い意識障害でも脳波はよく反映する。
・昏迷では意識清明のときの脳波。
・意識障害が重くなるにつれて基礎律動が徐波化する。
・認知症では初期は脳波異常は目立たない。
◎「てんかんの脳波について」(原恵子)
・30歳以降の初発の多くは局在関連てんかん。そのうち半分が側頭葉てんかんであり、高齢者での初発に限れば7割が側頭葉てんかんである。
・側頭葉てんかんは4〜16歳での発症が多い。
・側頭葉てんかんを疑うときには必ず睡眠脳波を取る必要がある。90%以上でF7かF8に最大点がある。双極誘導ではF7かF8で位相の逆転がある。ときに側頭部に徐波がみられる。欠神てんかんとの鑑別のために過呼吸賦活は4分行う。
・初回脳波でてんかん性放電が見つかるのが30〜50%。数回繰り返して80〜90%にまで高まる。迷ったら再度脳波を行う。
◎「長時間ビデオ脳波記録」(渡邊さつき)
・目的には以下のものがある。,討鵑んの発作や分類の検討。⊂播隻位の推定。てんかんと非てんかんの鑑別。
・限界としては、発作頻度が低いと行えないことがある記録する数日から1週間の間に発作が起こることが予想されるなら行える。
・発作時脳波の典型的な特徴としては、進展がみられることがある。発作焦点から、/局が増え周波数が減る形での進展、他領域への進展、が起こる。
・前頭葉てんかんの特徴には、/臾加罎傍きやすい、∋続が短い、0貳佞鵬薪戮盞り返す、がある。
・心因性非てんかん発作の特徴には、“作時に閉眼、▲ぅ筌ぅ笋垢襪茲Δ兵鵑瞭阿、上半身と下半身の動きが同期しない、て阿の変動が大きい、セ続が長い、がある。

●シンポジウム「昨今の産業衛生のトピックスとメンタルヘルス的視点」(司会:工藤喬、渡辺洋一郎)
◎「『働き方改革』における精神科産業医の役割と課題」(小山文彦)
・職場のメンタルヘルス問題の支援にあたっては、情報共有が大事である。内容としては、^絣愿な症状、勤労状況のアセスメント、生活状況のアセスメント、せ業所側の懸念のアセスメント、がある。
・職員面接とその前後のミーティング(産業医・保健師・人事労務)で連携をはかることが大事。
・不調の原因として職場外の要因にも注意する。
◎「健康経営に関する精神科医の役割」(田中克俊)
・精神疾患は大きな生産性の低下をもたらす。勤務できないことによる労働損失率は、うつ病28%、気分変調症14%、併存22%。
・出勤できても生産性が落ちてしまうことによる悪影響はずっと大きい。うつ病やアルコール使用障害は11〜12%の低下。
・睡眠不足は注意力を低下させ、ミスを起きやすくする。予防のために、睡眠衛生の指導が行われている事業所もある。
・インターネットを利用した認知行動療法も効果的である。
◎「『障害者就労』における精神科産業医の役割と課題」(神山昭男)
・身体障害者の雇用が義務化されたのは1960年。知的障害者は1998年。精神障害者はやっと2018年に義務化された。
・ハローワークを通しての障害者就労では、精神障害者の割合が増えている。
・しかし定着率は65%程度と高くなく、50人以下の事業所ではさらに低い。定着率は発達障害>知的障害>身体障害>精神障害であり、精神障害がもっとも低い。
・また障害者求人>一般求人の障害開示>一般求人の障害非開示の順に定着率が低くなる。
・地域の支援機関と連携した方が定着率がよくなる。
・産業医の支援の例には以下のものがある。
・労務管理については、ともかく出勤できることを第一の目標とする。作業はシンプルで直列。45〜60分ごとに休憩を15分取る。定期的に席替えをする。病状が悪化しないように勤務時間を最適に。業務に個人差があってもよしとする。教育にはゲーム感覚を取り入れる。
・健康管理についてはセルフケアを基本とする。定期面談で生活指導を行う。心身両面を包括的にケアする。集団や個人の教育を業務時間に組み込む。 
◎「『労災医療』における主治医と精神科産業医の役割と課題」(黒木宣夫)
・精神障害(自殺ではない)の労災認定が増えてきている。
・顧客からのクレーム・退職強要・配置転換・嫌がらせ・いじめ・上司とのトラブルでは認められにくい。
・主治医の立場でも、産業医の立場でも、労災請求には全面的に協力するのがよい。しかし労災請求をすることで本人と企業の関係が悪化してしまうケースもあるので、よく考える必要がある。

●シンポジウム「精神科医は強度行動障害に何ができるか?」(司会:市川宏伸、會田千恵)
◎「精神科医は強度行動障害に何ができるか?」(市川宏伸)
・知的障害者入所施設には、実際には自閉スペクトラム症と知的障害をあわせ持つ人が多く入所している。
・異食・常同行動・自傷などがみられることがあり、ケアが難しい。
・「強度行動障害」は、もともとは福祉・療育から出てきた概念である。
・強度行動障害を持つ人は、以前は長期入院になってしまっていた。
・以前は福祉側には医療との連携に消極的な面があった。医療側には福祉現場への理解不足があった。
◎「精神科医が強度行動障害にできることを『行動』の視点から考える」(會田千恵)
・重い強度行動障害を持つ人は全国で8000人程度と推測されている。
・精神科病院への入院治療でできること。ゞ杁淅鯑馘な本人の保護。家族や施設スタッフのレスパイト。8〆困箙堝鮎祿欧良床繊ぬ物調整。イ海世錣蟾堝阿箙堝鮎祿欧離螢札奪函行動療法や構造化による介入。
・心理社会的な介入が第一選択。行動療法・コミュニケーション指導・地域支援機関との連携が有効。今後は非薬物療法を多くして、薬物療法と行動制限を適正化していく必要がある。
◎「精神科医が出来ること〜福祉施設における役割〜」(田中恭子)
・福祉施設は2つの問題に直面している。ゞ度行動障害。入所者の高齢化。
・入所者の入院理由はイレウスと肺炎が多い。しかし強度行動障害のために十分に医療機関に受け入れてもらえない面がある。
◎指定発言 (井上雅彦)
・重度や最重度の知的障害を持つ人の10〜20%に強度行動障害がある。
・スタッフのバーンアウトやいらだちにつながりやすい。
・隔離室などで刺激を減らすだけでは、望ましい行動の獲得にはつながらない。
・問題行動を客観的に記録できるようにツールを工夫する余地がある。
・強度行動障害のリスクファクターには、ー閉スペクトラム症+重度の知的障害、△海世錣蟾堝阿龍さ、2板躊超など環境面の課題、がある。リスクの高いケースには、早期からの継続的な支援が必要。

●シンポジウム「発達障害とてんかん:各診療科の立場から」(司会:曾根大地、谷口豪)
◎「発達障害とてんかん:成人てんかん科の立場から」(曾根大地)
・てんかんと発達障害は合併しやすい。
・てんかん外来では発達障害が過小評価されている面があるかもしれない。
・合併例では、てんかん単独とは違う課題が出てきやすい。)椰佑ら情報を得にくい。意識減損の発見が難しい。精神症状との区別がより難しい。だ人の診療科へのトランジションが難しい。
◎「発達障害とてんかんー成人発達専門外来診療医の立場からー」(中岡健太郎)
・自閉スペクトラム症とてんかんの合併率は報告によって差が大きい。幼児よりも児童思春期の方が合併率が高い。
・合併のリスクファクターには、|療障害(重くなるほど合併しやすくなる)、⊇性、症候性の自閉スペクトラム症である(遺伝子異常などの背景疾患がある)。
◎「てんかんの外科治療と認知発達機能への影響」(岩崎真樹)
・てんかん外科には根治手術と緩和手術がある。
・根治手術になるのは、ヽで蝋轍従鼻↓脳腫瘍、H藜膳狙障害、のケースが多い。
・てんかんのうちの約30%が薬剤抵抗性てんかんである。薬剤抵抗性てんかんのリスクファクターには、”分てんかん、高い発作頻度、D垢へ輊卒間、がある。
・海馬切除術を行っても、記名力は変わらない人が多く、一部に改善や悪化する人もいる。
・乳幼児の手術は片側巨脳症にたいしてのものが多い。
◎「神経発達症と小児てんかん」(中川栄二)
・神経発達の点からは、神経回路が形成される9〜10歳までにてんかん発作を抑制できるかがポイントになる。子どもの脳には大きな可塑性と代償性がある。なるべく早いうちに神経回路を再構築するのが大事である。
・てんかんの発症後にADHD特性が目立ってくるケースもある。

●シンポジウム「精神疾患の背後に発達障害特性を見いだしたとき、いかに治療すべきか」(司会:岡田俊、小平雅基)
◎「発達障害における強迫性と発達障害を背景とする強迫症状」(小平雅基)
・強迫性にはADHD・チック症・トゥレット症の合併が多い。
・認知行動療法の導入が難しいケースもある。また自閉スペクトラム症では感情に焦点を当てるのが苦手な子どもが多い。そこで以下のような工夫をしている。/搬隆恭个陵彖任鯱誕蠅砲垢襦陰性感情を持つことに対して肯定的に話す。4蕎霰聴のためのツールを活用する。
◎「発達障害に伴う不安と発達障害を基盤とする表現型としての不安症」(岡田俊)
・自閉スペクトラム症では不安が強い。例えば以下のものがある。/佑里泙覆兇靴琉嫐がわからない不安。∩蠎蠅良従陲箙堝阿琉嫂泙感じられない不安。これから起こる出来事が予測できない不安。せ廚い鬚Δ泙伝えられない不安。イ靴辰りしない社会的状況におかれる不安。
・ADHDでも不安が強い。ー分の行動や感情を制御できない不安。⊆分の望む関係性を自分で壊してしまう不安。失敗を重ねてしまう不安。ぬ榲に向けて順序立てて行動できない不安。
・特性が育ちに与える悪影響もある。〕椣藜圓隼劼匹發隆愀言。⊃搬料の発達。B亟超の関係性。っ膣峇愀検
・エリクソンの発達課題のうちして青年期までの課題を乗り越えられていない子どもも多い。
・社交不安症や選択制緘黙は背景に自閉スペクトラム症があることが多い。
◎「発達障害を有する患者のトラウマ関連症状」(岩垂喜貴)
・トラウマに暴露されたあとにも、他者との愛着があれば予後は良好である。しかし発達症の子どもは愛着関係を持つのが苦手な面があり、トラウマ後の症状も重くなりやすい。
・安全基地の確保と愛着形成の促進が治療の目標である。かわいいなと思えるようになったときに治療は進展する。
・治療の構造化と治療チームの生き残りが成功すると、子どもは抑うつ・不安・外傷体験の振り返りができるようになっていく。
・別れをていねいに扱うことが大切である。

 

写真1   新潟市美術館。「インポッシブル・アーキテクチャー」という企画展が開催されていた。実現しなかった建築の構想が集められていた。たしかに芸術は「できあがったもの」よりも「できあがらなかったもの」のなかにあるのかもしれない。

 

写真2   美術館の隣の公園には良寛の像があった。新潟県の人だったようだ。

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