お休みどころ

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『自閉症 過去・現在・未来』を読んで 2019年2月23日(土)

   先月自宅に1冊の本が届きました。『自閉症 過去・現在・未来』(編集・発行:日本自閉症協会、2019年)です。大変興味あるテーマですが、なんで僕の家に届いたのか不思議でした。読みながら思い出しました。僕は2018年10月に熊本市で開かれた講演会(「自閉症を正しく理解すること 〜自閉症の支援でもっとも大切なこと〜」、演者:ゲイリー・メジボフ)に参加しました。感銘を受けましたので、主催団体の1つである「熊本県自閉症協会」の会員になりました。日本の各県に自閉症協会があり、その全国組織が「日本自閉症協会」なのです。熊本の協会員なので本を送ってくださったのだとわかりました。
   本は協会の創立50年誌です。「○○年誌」というと一般的には資料集的な感じで、あまりおもしろくない本が多いです。僕も正直言って期待せずに読み始めたのですが、内容が非常によく、しかも広範にわたっているので、読むのをやめられませんでした。そのうちに「これは最後まで読み通さないといけないぞ」と思うようになりました。いい本には読み手をつかまえて離さない魅力があります。
   もっともためになったのは、僕が当たり前と考えている自閉スペクトラム症(自閉症の現代的な診断名)の支援が、1つ1つ先人の努力によって勝ち取られたものだとわかったことです。例えば僕の住んでいる人吉球磨地域にも、自閉スペクトラム症の人や知的発達症の人が入所できる施設が3つあります。ですが50年前には入所施設が全然なく、家族や当事者が声を上げ続けて、自分たちの手で施設を1つ1つ作っていったのです。また学校にも居場所がなく、入学を拒否されてしまうこともしばしばだったそうです。特別支援学級や特別支援学校が普通にある現在からは想像できないことです。
   創設当時の保護者の方たちの記録を読むと、とにかく「いっしょに悩んで語れる仲間がほしい」という思いに突き動かされていたことがよくわかります。自分の子どもに与えられた社会的な居場所がない、また治療や支援もほとんどない。そんななかから団体を作り上げていかれたのだからすごいです。そして政治的な陳情なども続けた結果、強度行動障害の支援充実から発達障害者支援法の成立に至るまで社会制度が改良され、さまざまな医療・教育・福祉サービスが増えていったのでした。
   いま現在は50年前の保護者の方たちの目指したものはある程度形になっています。そしてより軽度の方へのよりきめ細かい支援が目指されています。この本から浮き出てくる問いは、「今後はどんな支援を目指すべきか?」です。その答えは多分野による統合的な支援だと思います。そしてそのことが本の編集のなかに表れています。
   本の内容を順番に要約すると以下のようになります。50年間における医療面の変化。∋碧〔未諒儔宗6軌虧未諒儔宗た討硫颪料論澆砲弔い董ナ〇礇機璽咼垢諒儔宗α蠱婿業について。保険事業について。╋┣颪亮損椹業について。当事者からはどう見えるか。各県の協会より。資料・年表。このように自閉スペクトラム症の人たちの支援には多様な側面があり、1つの分野だけには収まりきらないものがあります。ですので医療・保健・教育・福祉・司法・行政などの専門職と、当事者や家族が協力して、支援ネットワークを作りながら動いていくことがもっとも大切なのです。
   ではこのように努力することは、社会全体にとってどんな意味があるのでしょうか?この答えも本の中にヒントが出てきます。僕なりにまとめると以下のようになります。仝朕邑朕佑梁人佑弊犬方が尊重される(型にはめ過ぎない)。病気や障がいがあっても身近な地域でより安心して暮らせる(多方面からのていねいなアセスメントと支援)。I袖い箴磴いがあっても自信や誇りを持ちながら自分が目指すものを追求できる(当事者のエンパワメント)。ど袖い箴磴いを持つ経験をとおして得た知恵が、社会に伝わる(当事者発信の新たな文化)。ジ渋紊鮴犬るうえでの人間的な豊かさとは何か?という問いが深まる(幸せの探求)。
   「社会的弱者」の支援というのは深みを持ちます。それは「弱者」といえど強みがあり、「強者」といえど弱みがあるという発見に行きつきます。人間はもろく不確実で、いつもリスクにさらされています。どんなに個人で生きていけるように見える社会であっても、中核には助け合いの精神がなければ成り立たないはずです。いまどんな人たちが困っていて、どんな支援が必要で、そのためにはどんな社会的なサービスが必要なのか?いつも課題を発見していく精神が大切なのだと思います。

 

写真1 『自閉症 過去・現在・未来』(編集・発行:日本自閉症協会、2019年)。協会の活動史にとどまらず、さらに深くて広い内容がある。

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