お休みどころ

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休息とリラックス法 2019年2月10日(日)

   病院で発達症を持つ子どもたちの診療をしていて最近よく感じるのが、「リラックスが苦手な子どもが多いのでは?」ということです。病院を受診するのは何かの問題(イライラ・対人トラブル・不登校・ゲーム依存など)があるからであり、病状が落ち着かないうちは過度に緊張していたりストレスを抱えていたりして当たり前です。ですが問題を解消しようと1つ1つ関わっていき、最後に現れてくるのが緊張の問題であることがよくあるのです。
   同じことは僕が処方する薬にも表れています。かんしゃくや衝動的な行動が問題になっている子どもが受診したとき、はじめはイライラ止めの薬を出します。それでかなり効果の出る場合も多いのですが、うまくいかないケースもあります。何がうまくいかないのかを調べていくと、結局のところ普段から過度に緊張していて、その蓄積のうえで感情の爆発が起こっていたということが多いのです。
   不安・緊張・ストレスといったものはうつや身体愁訴に関連しやすく、なかなか治りにくい大人のうつ病の方がおられたときには、背景にあるストレス(対人関係・家族背景・職場など)を掘り下げてみるのが一般的です。ですが子どもの場合にはイライラやかんしゃく・衝動行為などがおさまらない場合にも、背景にあるストレスを掘り下げてみる必要がありそうです。ゲーム依存についても似たようなことがあり、生活や学習においての不安や緊張のために、ゲームにひたってしまっていることがよくあります。
   そうすると、治療は必然的に不安や緊張をどう緩和させるかを含みます。ゲームやネット・動画などは依存しやすいですから、それ以外にもリラックス法を探してもらっています。ですがおもしろいのは、リラックス法は人それぞれであり、一律に決められないのです。音楽が好きな人もいれば、漫画がいい人もいます。折り紙、絵を描くこと、散歩、スポーツ、小物作り、おしゃべりなどさまざまです。その子に合ったやり方を、その子と家族と支援者が、いっしょにていねいに探していくしかないのです。
   自分に合ったリラックス法をなるべくたくさん見つけてもらうことが、大人になってからのストレス対処に役立ちます。発達症の子どもたちがかわいそうなのは、対人交流を苦手とする子が多いことです。一般的にはちょっとした家族や同僚・友人・近隣などとの交流で、ホッとしたり慰められたりすることが多いと思います。ですが対人交流が苦手な子どもの場合、人との関わりでくつろげることがほとんどないのです。特に引きこもりの子どもの場合、人との関わりの経験自体がきわめて少なくなってしまっています。
   ではどうしていけばいいのでしょうか?僕としては、現代がストレスの時代であることや、ストレス対処が生活上の重要な技術であることを、学校で子どもたちに伝えることが大切だと思います。現代はストレス対処を学習しないといけない社会状況にあると思うのです。
   インターネットを代表とする科学技術の進展で、人間が知識を頭に詰め込む必要性は軽減しています。機械の導入で肉体労働の負担も以前よりは減ってきているでしょう。ですがそのぶん対人サービスやマネジメント業務が増え、心理的ストレスにさらされる機会は増えていると思うのです。ピリピリしたりイライラしたり、精神的に追い詰められる機会は珍しくなく、それが精神科受診者の増加につながっているのではと推測されます。
   現代における富とは何かと考えると、リラックスできたり、無心になれたり、芯からくつろげる体験にあるのかもしれません。精神科の病院に求められる役割のなかでも、「ホッとできる場の提供」が大きくなってきている気がします。自分に合った「お休みどころ」を見つけたいというのが、おそらく現代人のニーズなのでしょう。出会った人にくつろいでもらえる技術を僕も探していきたいと思います。

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