お休みどころ

こころの相談活動を作り続ける
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2019年1月日録3

1/17(木)   映画DVD『ブリグズビー・ベア』(デイブ・マッカリー監督、2017年、アメリカ)を観た。子どもたちも観れるかわいい熊の話かと思ったら、1人の芸術家の成長の物語だった。芸術的なセンスのある人は特異性を持つので、それに合った生き方を見つけるのが難しい。自分自身の人生の道や居場所を探し求めるプロセスはどうしても困難になる。そんな内容なのに、娘のやすみはなぜか観ていた。いい映画には内容に関わらず子どもが観れるところがあると思う。
1/20(日)精神科専門医を目指す「専攻医」の指導に当たる「精神科専門医制度指導医」という立場がある。僕もこの指導医なのだが、資格更新のために受講が求められる「指導医講習会」があったので、東京に出かけた。日帰りの強行スケジュールだったので、時間が間に合うか心配だったが、大丈夫だったのでホッとした。家族も僕の移動に合わせて動いてくれたのでありがたかった。
   専攻医の指導法が主なテーマかと思ったが、専門医制度がどう変わりつつあるかという話が多かった。僕は制度的な面にはあまり関心がないが、大学病院に所属しないと専門医になれない仕組みではなく、地域の病院やクリニックで仕事をしながら専門医になれるような仕組みにしてほしい。僕自身もそうだったから。できればへき地医療に携わりながら専門医が取れるようであってほしいと思う。
   講義のなかには、「精神療法の基本について」(白波瀬丈一郎)という講義もあった。この講義のなかでいちばん鍵になる言葉が「negative capability」だった。これは詩人であるジョン・キーツ(1795〜1821、イギリス)の言葉で、「不確定な、はっきりしない、モヤモヤした状態のまま、問題を手放さずに抱えておく耐久能力」といったような意味になる。日本語訳はまだ確定していないそうだ(インターネット上の論文、「Keats: “Negative Capability” の 「訳語」をめぐる概念の検証」による)。
   僕は精神科を目指した初期に読んだ土居健郎さんの本『方法としての面接』でこの言葉に出会って、いままでずっと心の中に大切に保ってきたので、とてもうれしかった。土居さんによれば、精神科面接の進展の鍵は、「わからない」とか「腑に落ちない」と感じられる部分に隠れており、話を聞いたり質問したりしながらこのはっきりしない部分にアプローチすることが、見立てにつながる。僕自身は困難事例のケース会議で、納得のいかない点を参加者が自由に出し合うなかで、支援方針が見つかるのを何度も経験してきた。おそらく精神科の臨床に限らず、あらゆる創造的な活動には、このnegative capabilityが働いているのではないか。

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