お休みどころ

こころの相談活動を作り続ける
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2018年12月日録1

12/2(日) 産業保健の分野では腰痛は以前から大事なテーマだった。吉田病院でも腰痛委員会ができて活動している。そこで僕も腰痛の本を読もうと買ったのが、『腰痛のエビデンス』(菊地臣一著、金原出版、2018年)だった。実は大変な名著で含蓄が深く、読み通すのに時間と気力を要した。いい本ほど内容の密度が高い。要点を以下に抜粋する。
●腰痛は腰の問題だけでなく、性格・心理状態・人間関係(家族・職場・地域)などが関与している。
●腰痛は他の関節痛と違い苦悩を伴う。
●肥満と腰痛の関連は不明。
●虐待歴・睡眠障害・社会参加の制限は腰痛を悪化させる。
●誰にでも当てはまる腰痛予防に良い姿勢があるのかは不明。
●手術の成功自体ではなく生活の質の改善や満足度が重視されるようになってきている。
●腰痛の発生そのものを予防する手段は運動以外にはわかっていない。
●肥満・喫煙・持ち上げ動作・姿勢・心理的要素などの危険因子の改善が、予防に有効である証拠はない。
●人間工学的方法の有効性にも証拠はない。
●オーストラリアでは、メディアによるキャンペーンによって、活動障害の軽減⇒傷害保険請求の減少⇒医療費の削減がもたらされた。キャンペーンの内容は、腰痛があっても活動・運動・仕事を継続すること、そして安静を排除することであった。
●職場における運動器の主たる障害の原因は、対人ストレス・職場ストレス・仕事関連環境。
●高齢社会での腰痛治療には、「疾患を治す」という視点よりも、「日常生活に支障がなくなる」ことを目指す視点が求められる。
●温熱療法や冷却療法の有効性について、はっきりした結論は出ていない。
●運動不足の人には、非感染性疾患・認知機能低下・抑うつ症状・活動障害・身体機能低下などがより起こりやすい。
●治療手段としての安静に価値はない。
●鎮痛薬物療法は腰痛の治療手段として有効だが、いま再検討を迫られている。
●鎮痛薬物の併用についてはまだ十分に研究されておらず、エビデンスが乏しい。
●アメリカでは深刻なオピオイドの乱用がみられている。
●オピオイド入手目的でドクターショッピングをする患者には以下の特徴がみられる。名指しでの薬剤要求・同一症状での度々の受診・疑わしい病歴・不釣り合いな客観的指標。
●日本では整体・整骨・接骨院、マッサージ、鍼灸などがよく利用されているが、代替療法のエビデンスはまだ不十分である。
●保存療法で有効性が立証された手技がまだないのが現状。
●職場での身体的負荷の減少が、腰痛の有病率や就労障害の減少につながっていないとの指摘あり。
●慢性腰痛に対する認知行動療法の効果は立証されている。運動療法・行動療法と固定術ではほぼ同等の治療効果がある。
●マインドフルネスは期待の持てる手技であるが、現時点ではまだエビデンスが乏しい。
●音楽の有効性についての報告もある。
●脳への電気刺激も将来の治療法の候補として研究されている。
●脊椎外科医は手術を計画する際には心理・社会的因子に配慮する必要がある。
●手術例の約10%は、術前の身体症状に精神医学的問題が関与している。
●手術成績不良例の約30%で精神医学的問題が成績不良に関与している。
●多数回手術例や手術不成功例で、手術それ自体に問題のある患者はほとんどいない。手術の適応でないの手術をしたというのがほとんどのケースである。
12/4(火) 発達症の子どもたちの療育のための通所施設である児童発達支援センター「スイスイなかま」が人吉市にある。僕は嘱託医をしているので、半年ごとに健診に出かける。通所している子どもたちには慣れにくさの強い子が多く、初対面の僕の診察に耐えるのは大変だ。職員さんは事前に健診ですること(聴診する、首をさわる、お腹をさわる)を絵にして、手順が一目でわかるものを作り、子どもたちの予行演習までしてくださったそうだ。今日は9人の子どもたちの診察をしたが、みんな緊張しながらも診察を受けることができていた。これには就学前健診の練習の意味合いもこめてあるそうだ。
   保護者の方たちの相談も受けたが、やはりみなさん「この子が成長していくと、どうなるのか?」という不安を持っておられた。発達症の子どもの成長に伴う起こりやすいトラブルや対策、相談窓口と支援機関などをわかりやすくまとめた資料が必要だと思った。また困ったときの相談先が複数あるのも必要だと思う。

 

写真1 『腰痛のエビデンス』(菊地臣一著、金原出版、2018年)。すばらしい内容と密度を備えている。腰痛治療は整形外科と精神科の接点なのだとわかった。

 

写真2 近所の犬と遊ぶ娘のしずく。しずくは犬のところに行きたがる。

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