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児童青年精神医学会に参加する3 2018年10月12日(金)

●子どもの人権と法に関するパネルディスカッション
◎少年法の適用年齢引下げ(20歳未満から18歳 へ)に関する議論状況(山健一)
・少年事件は大幅に減少し続けている。重大事件も減っている。子どもの総数が減っていることを考えて、人口比で調整してもやはりそうである。
・少年院の入所者の方が刑務所の入所者よりも再犯率が低い。
・少年司法には家裁調査官による丁寧な分析と働きかけがある。
・少年の処分は責任の大小だけでは決まらず、矯正教育の必要性を考えて決まる。
・少年院は本人の健全な育成という理念に基づいて運営されている。刑務所と違って、基本的に自由時間はなく、担当者はあらゆる生活場面に働きかける。
・少年院では刑務所とは違い、出院の時期も決まっていない。
・少年事件の顕著な減少を見ると、いまの少年法は有効に機能していると考えられる。
・現在、家庭裁判所で扱われる少年の約5割を18・19歳の少年が占めている。少年法の適用年齢を引き下げると、教育的な働きかけができなくなる。

◎児童精神医学の観点から「18歳問題」を考える(富田拓)
・非行少年の問題を考える歳には、虐待と発達障害の関与に注目する必要がある。
・少年院の入所者の約6割が過去に虐待を受けている。子どもの時期の逆境的な体験がいくつあったかを見るACEスコアも高い子が多い。
・発達障害などの精神疾患を持つ子も多い。少年院では精神障害が21.0%(うち発達障害が10.7%)。児童自立支援施設ではADHDが25%、自閉スペクトラム症が15%。
・虐待や発達障害など家裁調査官の調査をもとにわかることが多い。家裁裁判所にはアセスメントやケースワークの機能がある。
・少年院には教育的な処遇がある。刑務所と少年院では機能に大きな違いがある。

・ 脳科学的にも思春期から25歳ぐらいにかけて脳機能の可塑性があるとされており、この時期のうちに矯正教育が行われるのが望ましい。
・少年の殺人も強姦も激減しており、少年事件は量も質も史上最低を更新し続けている。世界的に見ても少年法はうまく機能している。

◎少年法の保安処分化に反対する(高岡健)
・少年事件の処遇には精神医療や教育が必要である。家裁の調査官が入らなくなると要保護性の判断がなくなってしまう。

◎会場も含めての討論
・少年院の現場では3割くらいに発達症があり、そのうちの6割は未診断で入所してくる。中学生の入所者は減っており、18・19歳の入所者の割合が高くなってきている。少年院は矯正教育の最後の砦である。
・18・19歳の子どもの社会的なサポートは手薄である。学校や児相も関われない時に、どこが支えるのか?
・元来刑務所は罰を与える場、少年院は教育を与える場として1世紀近く運営されてきた。文化が大きく違う。
・少年法の適用年齢を引き下げると、18・19歳の子どものケースで親への介入ができなくなってしまう。
・少年法の適用年齢を引き上げた方がよいという立場もあるが、個人と国家の関係などを考えて、慎重に議論すべきである。

 

●平和で持続可能な世界への道(Pathways to a More Peaceful and Sustainable World.  James F.Leckman)
・最初にトゥレット症候群と強迫症の原因や治療を探る研究に従事した。
・強迫症の人の脳脊髄液のなかのオキシトシンが上昇しているのを見つけた。この上昇はチック症の既往や家族歴のない人でのみみられた。
・オキシトシンは視床下部、心臓、胸腺、消化管、生殖器で生成され、報酬、ストレス反応、感覚、生殖に関わる。
・オキシトシンの神経系は対人関係の絆の形成において重要な役割を果たす。
・オキシトシンの上昇は母親が乳児とやり取りすることや、父親が子どもと遊びをすることと関連がある。
・乳幼児の養育に関わる生物学に関心を持ったときに、トルコの弟子から乳幼児養育の支援活動について教えてもらった。その活動に協力しながら研究を進めている。
・2013年のErnst Strungmann フォーラムではより平和な世界を作る方法が話し合われたが、その方法の1つに幼児早期の養育をよくすることがある。養育をよくすることで逆境的な体験の影響を軽減できうる。
・幼児期早期の親子への介入は社会経済においてもメリットがある。
・幼児の健全な発達は持続可能な社会の礎である。
・母子教育プログラムを政策的に活用できうる。
・子どもたちや将来の世代のために、この世界をより良い場所にする行動を起こさないといけない。

 

●発達障害に対する行政的取り組み(日詰正文)
・臨床家は目の前の患者を助けるのが仕事だが、法律の枠組みのなかでしか仕事はしていけない。臨床家がより良い仕事をするためには、行政官とのつながりを作り、自分たちが困っていることや改善すべき現状を伝えていくことが必要である。
・勤務している「のぞみの園」には、高齢の知的障害の人が多数入所している。高齢の知的障害者のケアの改善のために発信している。
・発達障害に関して今後の取り組みが必要な分野には以下のものがある。\在化している事例へのアプローチ。強度行動障害の人や施設を退所した知的障害・発達障害の人たちを支えていける地域づくり。災害や犯罪の加害・被害など緊急な対応が必要な場面への対応システム。つ拘的な支援のための体制づくり(高齢期までの支援、かかりつけ医や保健師の育成)。ヅ事者どおしが支えあえる仕組みづくり。専門的なアセスメントや治療プログラムの普及。 

 

●子どもの権利条約の視点からみた日本の子ども・若者問題(喜多明人)
・子どもの支援を真剣にやりはじめると、自分の専門や本業だけではおさまらなくなっていく。どこまでが自分たちの社会的な使命なのか、そのラインにとどまれなくなる。
・1991年当時、子どもの権利条約を日本が批准する見込みはなかった。NPO法人子どもの権利条約ネットワークを立ち上げたが、学者としてそこまでするべきではないという見方がほとんどだった。
・子どもの権利条約を条約化する提案はポーランドの医師が原動力となって行われた。ポーランドはホロコーストやカティンの森事件などで膨大な子どもや若者を失った。その苦しみを2度と味わわないように防波堤を作りたいというのが原点だった。
・医師ヤヌシュ・コルチャック(1878〜1942)は子どもの権利条約の「精神的な父」とされている。
・いまの子どもの権利条約だけでは、発展途上国の子どもの権利が十分に守られないために、不十分だという批判が世界的には多い。
・子どもの権利条約の精神を日本に広めていきたい。普及啓発が私たちの仕事である。
・現在の日本では、子どもが受け身になっていたり、自ら活動する意欲に欠けることが問題である。ダメージに弱い面がある。
・青少年の自殺も増えている。
・チャイルドラインは子どもの電話相談窓口だが、「子どもの相談を受ける」というスタンスではなく、「子ども自身が力をつけていけるように」と思って立ち上げた。子どものエンパワメントが目的。
・子どもに向けられた暴力の問題は悪化している。いじめ32万、虐待13万、体罰や暴言、セクハラなど。虐待死もあった。人権感覚の欠如が背景にある。
・子どもの権利についての条例を作った市町村が現在47ある。
・現在は学校の疲弊が顕著になっている。若者の教師離れも進んでいる。
・“鷙圈↓貧困・養育困難家庭、H達障害、への対応で学校はもはや限界に直面しており、助けを求めないといけない状況である。
・不登校も増えている。福祉的支援の強化が必要である。スクールソーシャルワーカーの導入など。また学校以外の多様な学びも認めていかないといけない。フリースクールなど。
・訪問型の子ども食堂を提案している。 

 

●子どもたちの高次脳機能障害(中島恵子)
・もともと成人の神経疾患への認知リハビリテーションをしてきたが、子どもの高次脳機能障害にも関わるようになった。
・高次脳機能障害の診断には’召隆鐚租疾患や事故があることを確認する(画像診断)。△修侶覯霧什澆瞭常生活に障害があらわれていること(注意・記憶・遂行機能・社会的行動)。除外診断の確認。が必要である。
・子どもの高次脳機能障害はアメリカでは子どもの500人に1人だが、学校で認識されているケースは少ない、とされている。
・原因としては、事故や低酸素脳症などがある。
・高次脳機能障害があれば、小中学校では特別支援学級(病・虚弱)を利用することができる。
・イギリスでは、子どもの高次脳機能障害の発症には2つのピークがあり、5歳未満では転落や虐待、14〜20歳では交通事故が多いとされている。
・以前は子どもの時期は脳の可塑性があるために症状が目立たないと考えられていたが、現在では脳の発達への影響から成績の低下や友人関係の悪化などさまざまな問題が起こりうることが認識されている。
・脳の認知機能は、ゝ淦期の落ち込み、△修慮紊硫麌、ある時期から発達ペースが緩やかになること、という3段階で変化する。
・成人の場合には高次脳機能障害による能力低下の回復が目標になる。子どもの場合には回復だけでなくその後の発達が問題になり、ある時期から他の子との開きが出てきやすいのでそこが難しい。
・認知リハビリテーションにおいては、モデリングが大事で、まずは見本を見てもらい、それを繰り返していく。
・最初は作業量を多くせず、できるようになってから増やしていく。
・抽象概念の把握が苦手になりやすいので、具体物を活用する。できるだけ多感覚に訴える表現をする。また言葉の理解ができているかをまめに確認する。
・短期記憶の低下には、繰り返しで対応する。論理的思考の苦手さには、まずは見本を示す。攻撃的行動にはクールダウンや刺激を減らすことで対応。
・問題となる症状には、イライラ、人のせいにしてしまう、物を投げる、不用意に大声で話す、ボーッとしてしまう、などがある。

 

写真1 安田講堂。思っていたよりもずっと小さな建物だった。

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