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自閉スペクトラム症支援の講演会に参加する2 2018年9月1日(土)

講演会「自閉症を正しく理解すること」(ゲイリー・メジボフ)の要点


●自閉症の人の学習スタイル
・TEACCHプログラムの創設者であるエリック・ショプラーははじめシカゴ大学のOrthogenic Schoolで自閉症の子どもたちのケアを学んだ。そこでの基本方針は、(貎討ら離す、▲侫薀好肇譟璽轡腑鵑覆匹瞭眦感情を行動で表出させる、だった。でも子どもたちがよくならなかった。
・エリック・ショプラーはOrthogenic Schoolを反面教師として支援法を考えた。基本的な考え方は、ー閉症の原因は母親ではなく脳にある、⊆由に行動させることではなく、本人にわかりやすい環境を作ってあげること(「構造化」)を重視する、だった。
・エリック・ショプラーは自閉症支援の理論的な基盤を探していた。ゲイリー・メジボフは認知社会学習理論を学んできていたので、ゲイリー・メジボフにいっしょに活動してくれるように頼んだ。
・自閉症の人たちと定型発達の人たちの脳の働きや認知の仕方には違いがある。そこに注目して違いをていねいに把握して、その上で支援法を考えるのがTEACCHプログラムの土台。脳の損傷ではなく、脳の違いと考えたところに独自性があった。
・学習スタイルの要点は以下の7項目になる。(顕修箸靴討亮閉症、∋覲佚に学ぶことの強さ、ものごとのつながりの把握が苦手、ぜ孫垉’修瞭団А癖孫埆萢が苦手)、ズ拮瑤肪躇佞鮓けやすい、刺激への反応の違い(感覚過敏)、Ь霾鵑鬚泙箸瓩△欧襪海箸龍貅蠅機
・自閉症の人の特性をていねいに把握して相互理解を促進することは、異文化間に橋をかけることに似ている。
・目で見て学ぶことが、耳で聞いて学ぶことよりも圧倒的に得意な人が多い。なのでできるだけ絵や図、写真などを活用する。自閉症の人は感情の理解が特に苦手だが、人の感情も絵や写真を使って伝えていく。たとえば驚きの感情なら、ビックリ箱や驚きの表情などを絵で示す。
・ものごとのつながりの把握に時間がかかることが多く、ゆっくり伝える。また頭のなかの情報を使うのにも時間がかかることがある。
・たとえば「車というもの」と「クルマという言葉」を結びつける練習をするときには、絵と言葉が並んでいる図(「絵を本のような辞書」)を使う。
・1つだけの作業なら得意な人が多いが、いくつもの作業を同時並行で進めていくのは苦手な人が多い。特に優先順位を付けることや段取りをすることが苦手。そのためにスケジュールを作って張り出すことなどが助けになる。
・注意が細部に向きやすい。細かく具体的に把握するのは得意だが、たくさんのものの全体像を見るのは苦手。なので一度にたくさんのことを伝えるのではなく、1つずつ示すことが支援になる。
・環境からの刺激への反応の仕方にも違いがある。より狭くより強く感じることが多い。たとえば音をよりうるさく感じたり、光をまぶしく感じたり、においをくさく感じたり、シャツの肌触りを気持ち悪く感じたりする。
・1つの絵のなかのパーツには目がいきやすいが、その絵が全体として何を伝えようとしているかの把握に苦労することが多い。
・いつ、どこで、どのようにしたらいいのかを、はっきり示すことが支援になる。「なんとなく、こういう風にすればいい」というのでは、はっきり正しいのか間違っているのかがわからない。定型発達の人は逆にあまり細かく縛られない方が楽に感じる。
・全く新しいことよりも、なじみのあることの方が楽。少しずつ変化をつけながら学んでいけるようにすることが支援になる。
・自閉症の人の求めていることのなかで、いちばん基本的なのは以下の4点。\こΔ鰺解したい。⊆,鵬燭起こるかをつかみたい。正しいか間違っているかがはっきりわかる。ぜ分が状況をコントロールできている感覚を持てる。

 

●構造化された指導
・構造化の技法には、(理的構造化、∋間のスケジュール化、3萋飴抉腓了伝箸漾↓せ覲佚な構造化、などがある。
・スケジュールに慣れていくなかで、子どもたちは時間の整理の仕方を身につける。
・構造化の工夫の例には以下のようなものがある。
・絵カードで次にやることを示す。
・本人が興味を持っているものを活用する(例えばアニメのキャラクター)。
・文字を大きくして、項目と項目の間に間隔を取る。
・知的な課題が大きくて絵カードを理解できない人の場合には、具体物で伝える。例えばお皿が置いてあれば食事をする、くつがあれば外出する、など。
・複雑な活動の場合にはアクティビティ・システムを作ることもできる。活動の内容を多段階に分けて、視覚的に提示する。例えば食事なら「サラダ」「スパゲッティー」「アイスティー」「別の1つを選ぶ」といった具合に。
・入浴の際に左のひじばかりを洗っていた人の場合、体を洗う活動を、「頭」「胴体」「両手」「両足」「タオル」といった具合に絵カードで提示した。
・スケジュールどおりに進められない場合もある。その際には当日のスケジュールと翌日のスケジュールをいっしょに持ってきて、明日やりましょうと説明すると、受け入れられることが多い。
・支援の目指すところは本人の生活や社会活動の自立。1対1で付き添わなくても活動できること。そのなかで本人の自信がついていく。
・アクティビティ・システムは個別のニーズに応じてさまざまに応用できる。
・例えば調理、買い物、1週間の予定、衣類の衣替え、窓拭き、植物の水やり、歯みがき、ごみの分別、草取りなど。
・その人がなぜ活動できなくなっているのかを分析して、その人に合った構造化の工夫をすることが大事。
・構造化のメリットには以下のものがある。環境を予測可能なものにできる。情報を順序立てて視覚的に提示できる。慣れている活動の範囲を拡大できる。興味の範囲を広げることができる。生活の自立度を高めていくことができる。

 

●自閉症支援でもっとも大切なこと。
・中核的な価値観(コア・バリュー)は、TEACCHの支援者の姿勢や向き合い方について、あるべき姿をまとめたものである。
・中核的な価値観は自分から書いたものではない。TEACCHの見学にあちこちから来られた訪問者のなかに、「TEACCHには理論や技法だけでなく、独特の精神や哲学がある」と言ってくださった方が多かった。それでまとめてみてスタッフの意見を聞いてみたら、関心が非常に高かった。そこでいまに至るまでまとめ続けている。
・スタッフの関心がいちばん高かったのは、「自閉症を理解すること」だった。そこには自閉症という文化を理解し、受け入れ、好きになり、敬意を抱くというプロセスが含まれている。どれほど彼らが苦労していることか。
・「50年にわたって自閉症を支援し続けている人はなかなかいない。どうしてそんなに続けることができたんですか?」と聞かれることもある。考えてみると、私が自閉症の人たちを好きであり、尊敬しているからかなと思う。彼らとはいっしょに笑うことができる。彼らとは違いがあるからおもしろい。
・氷山モデルの考え方が役に立つ。自閉症の人たちの行動は氷山の目に見える部分のようなもの。その下にはずっと大きな氷の塊がある。彼らの認知特性や感覚の問題などが、目に見える行動の背景にある。目に見える部分だけに注目していてはいけない。
・常に最高の仕事を目指す。他の人たちが賢明だと思う以上のケアをする。人が安全だと思う以上のリスクをおかして支援する。人が現実的だと思う以上のことを夢見る。人が可能だと思う以上のものを期待する。
・技法と同じかそれ以上に人間関係が重要。エリック・ショプラーは未発達の技法から始めざるをえなかった。その段階でも自閉症の人たちの母親たちとのつながりのなかで、人が集まり、活動が発展してきた。いまでは技法はだいぶ洗練されてきた。それでも母親たちとの関係は変わることなく続いてきた。
・自閉症のケアはストレスフルな活動なので、親たちと支援者たちが、互いに支えあうつながりが必要だ。
・いっしょに働くチームには、互いに敬意を持ち思いやること、おおらかな気持ちで接すること、働きながら楽しむこと、が必要だ。
・他の人や状況に対して、いつもいい面を探していくこと。「幻想なき理想主義者」(JFケネディ)として振る舞う。誠実さと肯定的な精神を持つ。
・人間の持つエネルギーがとても大事。自閉症支援は非常にエネルギーを要する仕事だ。私はTEACCHのチームに人を雇うとき、最初は経験の有無や推薦状の有無に注目していた。でも年月がたつうちに、次第にその人の持つエネルギーを見ようとするようになった。経験や知識はもちろん大事である。でも前向きで肯定的なエネルギーはもっと大事である。なぜならエネルギーは教えて伝えることはできないから。
・TEACCHではジェネラリスト・モデルを採用している。役職による仕事の違いはあっても、基本的には誰もが問題に関わり、解決を探すべきだと考える。特定の職種の人だけが問題に取り組むのでは、組織が硬直化して前に進めない。
・TEACCHの伝統に誇りを持ち、伝統から学ぶことは大切だが、それ以上に変化し続けていることが大切。
・私は海外平和部隊でミクロネシアで教育を3年間手伝った。教えた人たちのなかには、貧しかったり、家庭が不遇だったり、教育を受ける機会がほとんどなかった人たちがいた。決して傲慢になってはいけないと学んだ。
・自閉症の人たちにこちらの真心が伝わらないと、信頼してもらえないところがある。
・人としての発達のなかで、「自立して生きていける」ということがとても大切。あまりにも完璧にケアしようとしている保護者には、「子どもさんの自閉症の部分のケアは完璧ですね、でも子どもさんには「子ども」の部分もあり、遊んだり笑ったり自由に過ごすことも大切なんですよ」と伝えている。
・自閉症支援はほとんどほめられることのない仕事だ。自分たちの仕事について、親や教員や他の支援職が全く気づかないことがよくある。でも人を変えうる仕事だと考え、自分を励ましている。誇りを持ち、光栄に思っている。
・詩人のゲーテは詩のなかで、生きがいのある人生について書いている。「仕事をいっしょうけんめいにすること、楽しみを持つこと、世界を変えること」と。支援職の皆さんの仕事は世界を変えているんです。
・他者の強さや経験、ものの見方に価値があると考える。他者の言うことによく耳を傾け、自分の考えに彼らが反対しても防衛的にならないように気を付ける。自分自身の限界を認識する。

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