お休みどころ

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種子島への旅 2018年5月2日(水)

  偶然なのですが、5月の連休に休みが取れました。休みは取れてもどう使うかが難しいのですが、美紗さんの案で僕の両親を誘って旅行に行くことにしました。実は僕たちが両親を旅行に誘うのは初めてです。いままでは僕たちが実家に行ったときに、両親があちこち連れていってくれる形だったのでした。今年は両親が共に喜寿になることもあり、お祝いをかねて旅にご招待することにしたのです。
  子連れでの移動は大変なので、行き先は九州から近いところにしようと両親が言ってくれました。当初は屋久島を考えたのですが、連休には大混雑するそうです。そこで種子島(たねがしま)にすることにしました。美紗さんも僕も両親も、鹿児島県の離島には行ったことがなかったのです。
  父は長年エンジニアとして働いてきました。父は宇宙船の開発にも関心が深いです。なのでロケット発射施設「種子島宇宙センター」には前から行きたかったそうです。またあとからわかったのですが、種子島には日本最古の遺跡もあるそうです(約3万年前のもの)。考古学にも父は関心があるので、ちょうど良かったのでした。
  鹿児島空港で両親と待ち合わせて、飛行機で種子島に向かいました。所要時間は40分と短いのですが、小さなプロペラ機ですのですぐに揺れます。僕たちが出かけた日は悪天候で出発が大幅に遅れるぐらいでしたので、かなり揺れました。飛行場で数時間待たされたのと、揺れたことで、いきなり美紗さんは参ってしまいました。
  ですが着いてみた種子島はすばらしく自然度の高い場所でした。天然に近い森が一面に覆っていて、海岸はどこでもヴューポイントになりそうなほど広々としています。海の色はエメラルドグリーンで、非常に澄んでいます。北から順に「西之表市(にしのおもてし)」「中種子町(なかたねまち)」「南種子町(みなみたねまち)」という3つの市町村でできているのですが、町の中心部以外は林の合間に人家があるような感じです。わかりやすく言えば田舎なのですが、人間が少ないというだけではなくて、自然の景観を活かしながら地域の人々が生活しているのを感じました。すごくゆったりした時間の流れがあるのです。
  僕の感覚に過ぎませんが、都市部に行くほど時間の流れが速く、お金で消費することが思考の中心に出てくる気がします。逆に自然度の高い場所ではゆったりした感覚があり、人とのつながりが前面に出てきやすい気がします。もちろん田舎に住んでみると田舎の嫌らしさもあるのですが、都市部からたまに来るぶんには田舎の良さを味わいやすいです。だからこそ自然度の高い場所には休養場所としての役割が求められると思うのです。
  子どもたちは毎日海に入って遊びました。「風が強いので足先をつけるだけだよ」と何度も言ったのですが、ちょっとずつ海に入るうちに、やがてしゃがみだし、そのうちに寝そべって波が打ち寄せるのを楽しむようになります。サンゴのかけらが集まった白いサラサラの砂浜ですし、海水があまりにも透明ですから、入りたくなるのもわかるのです。そして波遊びは何の道具も要らないいちばんシンプルな遊びなのでした。五感を総動員するので教育効果も高いと思うのです。
  自然に近いと不便な点がたくさんあります。虫や獣が出たり、天候に振り回されたり、草刈りに終われたり、などです。自然を管理するのは難しく、そこがいちばん面倒な点です。ですが自然が刻々と変化するからこそ時間の流れを感じられるのだと思うのです。その意味では僕たちは生活のなかにある程度「自分の思い通りにならない抵抗」がないと、充実できないのかもしれません。
  さて種子島に戻ると、滞在中に風が非常に強くて寒かった以外には、大きな問題なく過ごせました。種子島にいると、普段の僕のセカセカした生活が、何かにとりつかれていたように感じられます。そして普段は予定を詰め込んで充実させようとし過ぎていると思いました。とりたてて何もしないような時間の方が、かえって豊かになるから不思議でした。子どもたちも僕の両親とたくさん過ごせました。
  結果的にですが、種子島は家族旅行に最適の地でした。家族旅行の目的は、結局のところ家族で過ごすことだけです。いかに濃密な時間のなかで家族と過ごすかが問題なのですが、種子島にはその濃密さがありました。両親が元気なうちに「子や孫と過ごす時間」を提供できて良かったです。両親にもいままで走り続けてきたぶん、ときにはゆっくりしてもらいたいです。僕自身も空白の時間をときどき持てるようでありたいと思いました。

 

写真1 飛行機にかなり揺られてやっと種子島空港に着いた。

 

写真2 宿泊した民宿「珊瑚礁」の前にはアコウの大樹があった。

 

写真3 子どもたちは全身ビショビショになって海で遊んだ。

 

写真4 写真ではわかりにくいが、滞在中にはかなりの突風が吹いていて寒かった。

 

写真5 種子島にはマングローブの北限の自生地がある。水際には陸地と海という異なる環境の両面があるので、多様な生き物が生息できる。

 

写真6 種子島空港センターの案内ツァーでは、ロケットの実物を間近で見ることができる。

 

写真7 宇宙センターのそばの海でも子どもたちは遊んだ。

 

写真8 子どもの公園である「あっぽーらんど」。「あっぽー」は方言で「遊ぼう」の意味。海賊船など凝った遊具があり大人気だった。

 

写真9 観光名所である「千倉の岩屋(ちくらのいわや)」へ。この洞窟は満潮のときは海に沈み、干潮のときのみ入ることができる。

 

写真10 洞窟のなかは意外に広い。

 

写真11 ここでも子どもたちは海に入った。

 

写真12 ハマヒルガオの花。故・島田等さんが書いてくださった詩を思い出した。自然の方を見なくなると人間はどこかおかしくなってしまう。

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