お休みどころ

こころの相談活動を作り続ける
<< October 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 院内広報誌の原稿1 2017年12月24日(日) | main | 2018年1月日録4 >>

子ども支援チームの事例検討会 2017年12月7日(木)

  ここ数年僕は球磨地方の子どもの支援や診療に力を注いでいます。僕が務める吉田病院でも職員の有志といっしょに「子ども支援チーム」を作り、毎月例会を開いて勉強しています。内容は研修会の報告や資料を読んでの報告が多いですが、外部の支援職の人に話してもらうこともあります。いくら僕が子どもの外来・入院診療をしたいと思っても、仲間の皆さんに助けてもらわないとできません。チームで向上していくことこそがもっとも大事なことなのです。
  この子ども支援チームでは年に2〜3回地域の人たちにも参加してもらう大きな勉強会を開いています。いままでは外部講師をお招きして講演していただく形式でした。ですがもう少し参加型で実践的な研修会もしたいと思ってきました。
  子ども支援チームの運営の取りまとめをしてくれている同僚の植竹さん(精神科ソーシャルワーカー)と相談し、今度は事例検討型の勉強会をしてみようと決めました。そこからは植竹さんが1人で準備を進めてくれたのですが、僕は任せきりで特に関わることはありませんでした。僕がしたことと言えば、事例検討会のチラシができた時に、つながりのある支援職や友人たちに送ったぐらいでした。
  僕自身はいままで数多くの事例検討会に参加してきました。参加メンバーや検討の進め方はさまざまですが、「自分が頭のなかに持っている知識を血肉化する」「従来とは違った角度からケースを見直してみる」「他の職種の人の考え方や支援手法を知る」という意味で、事例検討は絶大な効力を持ちます。ある分野についていくら書物や研修や実践で学んでも、多角的に事例検討することを重ねないと、成長には限界がある、というのが僕の感想です。ですので事例検討型の勉強会には僕はできるだけ参加するようにしています。
  今回の事例検討会にも参加申し込みがきっと多数あるのではと思っていました。ですので参加者の数の心配はしていなかったのですが、会の10日ほど前に植竹さんとやり取りした際には、意外なことにまだ申し込みが少ないとのことでした。それからは当日に参加者が十分にあるかが心配になりました。
  ですが結果的には当日参加の方が多く、十分に参加者がありました。吉田病院のスタッフも含めて、各テーブル6〜7人で、6テーブルになりました。参加された方の立場も様々です。例えば僕のテーブルにはスタッフ以外に、役場福祉課の社会福祉士(ソーシャルワーカー)、小学校の教諭、ハローワークの職員、高齢者施設の作業療法士がおられました。教員・福祉関係者・医療関係者・行政などを中心に、多彩な参加者があり、僕の知らない方も大勢おられました。また子どもに関わる方だけではなく、成人や高齢者の支援に当たっている人も来られていました。
  会は社会福祉士が中心になって進んでいきました。架空の事例の提供も社会福祉士でしたし、各テーブルの進行役(ファシリテイター)も社会福祉士でした。これには植竹さんのひそかな自負心があったのではと考えています。それは「社会福祉士が子ども支援のコーディネーターだ」ということです。実際にその通りで、子どもだけでなく全年齢にわたる地域の困難事例の支援に関して、社会福祉士が一番重要な司令塔の役割をしていると思います。病院のスタッフは地域支援においては後衛に位置していて、社会福祉士をはじめとする地域の支援職がつないでくれて、はじめて支援に参加できる立場なのです。支援の最前線にいて初期対応に関われるという意味では、社会福祉士の人たちをちょっとうらやましく感じます。
  さて会は以下のように進んでいきました。架空の事例の概要が提示された後、各自が「もっと質問したい事柄」を書き出して、それを質問して事例の全体像をあぶりだしていきます。これは事例の分析の着眼点を見つける作業で、事例の見立てに関わるトレーニングです。また植竹さんの意図としては、同じテーブルの他の人の意見を見て、「こんな違ったところに注目するんだなぁ」と相互の違いを感じてほしいと思っていたそうです。僕の感想は、「みんな自分の仕事に関連するところからケースを探っていくんだ」でした。例えばハローワークの方は就労状況から、作業療法士の方は作業能力から、教員は学習状況や家庭背景から、社会福祉士はどのような支援が入っているかといった視点から、分析を進めていっていると思いました。
  ちょっと脱線しますが、僕の友人の島倉さんの言っていたことが思い出されます。島倉さんは飲料会社にいて自動販売機の営業の仕事をしたあと、空調の営業の仕事に移りました。「以前は地面を見て自販機を置けそうなスペースを探すのが癖でしたが、いまでは天井を見てエアコンを置けるスペースがないかを探すのが癖になりました」というのが島倉さんの言葉でした。人間はやはり習慣の生き物で、日々やっていることをもとにして新しい状況にも対処しようとするのだと思います。習慣は強力ですが、いっぽうで視野を狭めてしまう面もあると思います。自分と違った視点があることを学ぶことが大切なのですが、これがとても難しいです。事例検討会はそういう機会になるんですね。
  事例の全体像をあぶりだしてからは、参加者それぞれが自分の立場からどんな支援をしていけるかを話し合いました。ポイントは以下のことです。各自には専門性があり、できる支援には限りがあります。ですが他機関と協力することで、支援の難しいケースにも関わっていけないだろうか?あるいはほんの少しその限界の向こうまで支援の手を伸ばせないだろうか?そう考えてみることが大事であり、支援職の懐を深くする作業なのです。もちろんこれには危うさもあり、「出しゃばり」や「かき回すだけ」になってしまう危険があります。だからといって「決まった仕事だけをする」という態度では、困難事例は地域に置き去りにされ、支援職のネットワークも広がりません。「慎重に協議しながら、大胆にチャレンジする」という姿勢が必要なのだと思います。
  討論の結果を2つのテーブルから発表してもらい、検討は終わりました。最後に植竹さんが会の目標が達成できたかを参加者に確認しました。‖召凌種の強みや立ち位置を知る、∋例の見立てについての新しいアイディアを得る、C楼茲了抉膺Δ力携を高める、という3つです。どれも見事に達成できたのではないかと思いました。
  僕も挨拶をしました。ぼんやりと覚えている限りでは、触れたのは以下のことです。困難事例に関わっていると、事例が困難というよりも、「問題が多分野にわたっていて、支援職どうしがつながりあうのが困難」と感じることがよくある。支援職の間にはさまざまな「隔てる壁」があるが、それを乗り越えて協力することを繰り返すなかで、地域の支援文化が高まるのだと思う。そして結果的にはより生き生きした地域を作ることに貢献しうる。球磨地方は過疎化に悩む小さな地域だが、小さいがゆえに支援者同士が顔見知りになって緊密な連携体制を作ることもできる。困難事例に丁寧に関わるなかで、先進的な試みをしていけると思う。そのためにも事例検討を続けていきたい。
  会が終わった後にも興奮が冷めやらず、皆さんあちこちで話していました。会をやってよかったなぁとうれしく思いました。自分の分野の外にいる人との生きた出会いなくして、専門性も深まっていかないのでしょう。このような「人と人とつなぐ場」を今後も作っていけたらと願いました。

 

写真1 事例検討会のチラシ。

『お休みどころ』通信 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | - | -

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://oyasumidokoro.rongakusha.com/trackback/1424896
この記事に対するトラックバック