お休みどころ

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上球磨認知症初期集中支援チームで鹿児島県庁に話しに行く 2017年8月10日(木)

  「認知症初期集中支援チーム」というチームが各市町村にできつつあり、僕も参加していることは以前から書いてきました。このチームは虐待やごみ屋敷、危険運転など認知症に関連した困難事例に対して多職種アプローチを行うためにつくられたものです。社会福祉士+保健師+医師が必須メンバーで、そこに福祉課の方や地域包括支援センターの方、作業療法士などが加わってチームを作ります。僕は「上球磨(かみくま)」と「人吉市(ひとよしし)」のチームを担当しています。
  上球磨地域(水上村+湯前町+多良木町)のチームは設立も球磨地方でいちばん早く、僕にとっても初めて参加したチームですので思い入れがあります。また意欲と行動力を持った仲間ばかりなので、議論が非常に発展し、自分にとっても勉強になります。上球磨チームの中核となっている社会福祉士の山浦さんとよく話すのですが、地域には支援がうまく作動していない困難事例がたくさんあります。認知症に限らず、貧困・養育困難・DV・虐待・精神疾患・浪費など複合的な課題がからみあったケースばかりです。そういった困難事例に対する多職種アプローチをしていけるようにみんなでスキルアップしていくこと。そこが上球磨チームの究極の目標です。いまは認知症に関連したケースの支援をしていますが、いずれは総合的な困難事例対応チームが作れるようになっていたいのです。
  上球磨チームは設立が早かったこともあり、いままでにも他地域からの見学を受け入れたり、研修に出かけたりしています。今年2017年の2月には、鹿児島県の薩摩川内市に招いていただきました。チームの中核メンバーで話すはじめての機会だったのですが、非常にうまくいって喜んでいただけましたし、また自分たちにとっても実り多い研修旅行になりました。
  その際に鹿児島県庁の方が聞きに来てくださっていたのですが、今度は鹿児島県庁で話してくださいとお誘いをいただきました。「地域支援事業充実・強化支援事業」という会議があり、認知症初期集中支援チームを取り上げてくださるのだそうです。予算の関係もあり、1,2人での発表をとのご依頼だったのですが、僕自身はチーム員の多くで行きたいという思いがありました。多職種で意見を出し合って協働していくところこそが初期集中支援チームの核心だと思うからです。山浦さんに相談し、有志で発表することになりました。最終的に発表者は僕を入れて5人、研修旅行の参加者は8人になりました。自発的にこれだけの人たちが集まるのですから、意欲的な人ばかりだというのも信じていただけると思います。内容の打ち合わせをしながら、当日を迎えました。
  鹿児島市に入ってから渋滞に巻き込まれてしまい、時間に間に合うかが心配でした。ですがなんとかぎりぎりに着きました。昼食をしながら県庁の方と打ち合わせをしたのですが、話しやすい方ばかりで意外でした。僕たちの住んでいる球磨地方にも初期集中支援チームがまだ立ち上がっていない町村がありますが、鹿児島県にもたくさんあるそうです。そういった地域の立ち上げのサポートになれば、というのが主催者の意図でした。講演をするだけでなくて、グループワークに参加したり、質問に答えたりする時間もあるそうですので、できるだけこれから立ち上げるところにエールを送りたいと思いました。
  僕たちの講演の時間になりました。最初は湯前町の福祉課の方で、行政の立場からチーム立ち上げへの経緯を話しました。行政の方がチーム員会議に参加していることがとても大切なことで、支援者と事務方の風通しを良くする意味合いがあります。事務系の方が支援に大切な視点を提示したり、核心を突く質問をしたりすることも多いのです。
  次に山浦さんと堂本さんという2人の社会福祉士から、困難事例の支援の実際をケースに即して話してもらいました。そもそも困難事例は「普通に支援しようとしてもうまくいかないケース」ですので、支援には時間がかかったり、うまくいかなかったりします。偶然も利用しながらどんなふうに事態を切り開いていったかが伝わる迫力ある内容でした。
  次に保健師のNさんからチームの課題や今後の展望について話してもらいました。「独居者への対応」「内服管理ができないケースへの対応」「家族支援がうまくいかないケースへの対応」「マンパワー不足」「もっとタイムリーな訪問ができないか」などの課題を提示し、それらの克服や対応できるケースの範囲を広げていくことなどが将来の展望であることを話してくれました。思慮深く掘り下げて考えるタイプのNさんらしい発表でした。
  ここまで終わって僕の持ち時間は30分あるはずでしたが、すでに残り15分しかありませんでした。時間に追われて早口で要点のみ話す形になってしまいましたが、初期集中支援チームの活動全般について具体例を交えながら話すことができました。
  ここからはグループワークでしたが、まだチームが立ち上がっていない市町村の方からいろいろな質問が出ました。僕に聞き取れた範囲では以下のようなものです。「予算配分や人員配置はどうするか?」。「サポート医への報酬は?」。「サポート医の居宅訪問は可能か?」。「ケース支援の終結はどのタイミングでするのか?」。「飲み会などの交流はチーム員でしているか?」。「立ち上げに向けて、まずはどこから手を付けたらいいのか?」。「情報収集のシートは?」。「発達症がベースにある認知症のケースへの対応について」。「危険運転のケースへの対応」。「包括支援センター職員が兼務する場合の業務分担」。
  いずれも大事な質問ですね。ですが僕が何よりも言いたかったのは、「まずは会議を始めてください」ということです。情報の整理に使うシートにしても、認知機能の評価尺度にしても、ケースをこなしながら徐々にヴァージョンアップしていけばいいのです。それよりも何の準備もなくても、地域でどんな困ったケースがあるかということを話すだけでもいいから始めることの方が重要と思います。極論かもしれませんが…。
  上球磨チームでは困難事例への支援がだいぶ進んで、「ケースが少ないなぁ」と感じるくらいの状態になっています。最初は地域にたまっていた事例がどんどん上がってくるのですが、一段落する時期がやがてきます。ちょっと停滞感も感じていたのでした。そんなときに研修に出かけて自分たちの活動について話すと、自分たちの原点がみえてきます。それが「認知症に限らない総合対応力の強化」という点です。また過疎化に直面している地域にあって、「医療・保健・福祉の視点からの生き生きした地域づくりへの貢献」というのも大切な目標だと思います。
  これからも上球磨チームでは、認知症を切り口にいろんなケース支援を行いながら、自分たちが目指すものをとらえなおしていきたいと思います。優秀な仲間たちと仕事したり考えたりできることは貴重です。自分が磨かれるような場を持てている幸運を忘れないようにしながら、進んでいきたいです。

 

写真1 チームで出かけた鹿児島県庁の様子。

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