お休みどころ

こころの相談活動を作り続ける
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過労の問題について 2017年7月16日(日)

   過労の問題については以前から関心を持ってきました。僕は役場や企業の産業医の仕事もしていますので、もしも長時間残業者(月に100時間以上など)が出た場合には面談をしないといけません(幸いなことに、まだしたことはありません)。また新聞にも過労死の問題がよく載っています。過労⇒うつ病⇒自殺、という流れは多いにありえることですので、精神科医として予防に動かないといけない分野なのです。
   とはいえ自分自身に関係することだとは思ってきませんでした。いまにして思えばもともと僕は仕事中毒になりやすい要素が満載なのですが、いままでは深刻な事態にならなかったので、考えてこなかったのだと思います。それが意外なきっかけから考えざるをえなくなりました。
   精神科医の仕事のなかで、書類作成が占める割合は、実はけっこう大きいです。僕の場合で言えば、典型的な勤務日には、朝から14〜15時までは外来診療、15時から1〜2時間ほどは家族面談やケース会議など、そのあと18〜19時までは病棟診療であり、以後20時くらいまでが書類作成の時間になります。書類といってもいろいろあり、認知症の方なら介護保険の意見書(半年に1回)や紹介元の病院への返書、訪問看護や訪問リハビリの指示書(月に1回)、施設とのやり取りなどです。成人の精神疾患の人なら自立支援医療の意見書(2年に1回)、障害年金の診断書(5年に1回)、返書、精神保健福祉手帳のための診断書、地域のサービスを受けるための医師意見書などです。子どもの場合なら学校などへの情報提供書、特別児童扶養手当の診断書、返書、休学や療養のための診断書などです。また民間の保険会社への診断書(入院期間など)を作ることもしょっちゅうです。
   僕はもともと書くのが好きですので、書類作成は比較的好きな業務です。また書きながら情報を整理する面も大きく、うっかり見過ごしていた面に気づけたり、診断名や行うべき検査を追加できたりすることもあるのです。カルテに添付されている過去の情報を振り返れたり、いまの状況を分析できたりするので、書いてまとめるメリットは大きいです。
  「書きながら考える、考えながら書く」というサイクルは、思考の基本なのではないかと思います。精神科の診療においてもっとも大切な情報はなにかと言えばいままでの経過ではないかと思いますので、カルテの「現病歴」欄には僕は力を入れていますし、書類を作成する際にも現病歴欄でそのまま活用できるような正確な内容になるように努力しています。
   ところが今年(2017年)の7月に入って書類量が急に激増したのです。理由は障害年金の診断書です。ここ数年僕の診療の主な対象は発達症の人たちです(子どもの診療も大半は発達症に関連しています)。ですので知的発達症の人たちの診断書を書く機会も多いのですが、なぜか知的発達症の人たちの障害年金の診断書の作成時期が7月に統一されているのだそうです(精神疾患の診断書は患者さんの誕生月ですので、一度には書類は来ません)。僕の「宿題コーナー」(作成すべき書類の置き場)に急にカルテが積みあがっていったのでびっくりし、また書いても書いても追いつきませんでした。当直の日など22時まで休みなく集中して取り組んだのですが、それでも終わらなかったのです。
   僕自身はやるべきことをためるのを好みませんので、その週の書類は基本的には週末までに終えるというルールにしてきました。さっさとしないと、よけいに苦しくなるからです。ですがとうとうこのルールを守れなくなりました。それでイライラしてしまったのです。
   知的発達症の障害年金の書類が7月に一気に来るというのは現場の実情を考えていないおかしな仕組みです。ただ「システムが不合理だ」と考えることよりも、自分の苦しさが過労の問題ではないかと考えてみることの方が、より大事な視点ではと僕には思えます。仕事が際限なく増えていっているので、どこかで一線を引かないといけない時期にさしかかっているのではと思うのです。
   書類が多くなる最大の理由は、外来の診療患者数が増えていっていることです。僕は週に4〜6人の新規の受診者を受けることが多いのですが、精神科の治療を終了する患者さんは週に1人あるかないかです。精神疾患の大半は慢性疾患ですので、診療を終了する方がいない週の方が多いのです。いまの僕は子どもの診療が中心で、子どもの場合は1回受診してもらって学校に情報提供書を書いて終了というケースもよくありますが、それでも少なくとも週に3人ぐらいは継続診療の方が増えていくことになります。これがずっと続いていっているのです。
   診療患者数が増えれば、それだけ1人当たりの診療に割ける時間が減り、患者さんの待ち時間が長くなります。ですので際限なく増えていくのはよくないことなのです。僕にできる対策としては、できるだけ改善した人の診療を終了したり、安定している方には処方を長期間(2〜3か月分)出すことなどがあります。ですが状態が安定していない方の場合、それもできません。どうしても2週間ごとなど間隔を短くして診療していかないとうまくいかないのです。
   より大きな視点で眺めると、結局は精神科の受診者数が増加していて、施設数が追い付いていないということが背景にあります。現在は日本中の精神科スタッフが過労に陥りやすい状況なのです。精神科の受診者の増加は世界的なレヴェルでの現象と聞いています。ですので当面は進行していくと予想されます。病院のなかで働いているだけでも過労になりやすいのです。
   さらに僕の場合は休日に地域での支援活動をしています。当初はお休みどころで相談を受けることを活動の中心にしようとしていたのですが、だんだんと公的な相談活動に移行し、そちらが中心になってきました。主に非常勤の仕事という形でしているのですが、いつのまにか数が増え、とうとう20件以上にもなってしまいました。内わけは以下のとおりです。
   市町村の「こころの相談」3ヶ所、教育支援委員会5か所(就学予定児童などに特別支援学級の利用が必要かを議論)、認知症初期集中支援チーム2か所、産業医5か所、役場のこころの相談1か所、児童相談所や児童施設の嘱託医3ヶ所、支援学校の学校医、障害者施策推進委員会1か所、フリースクールの顧問1か所、療育ネットワーク会議1か所。
   それぞれの仕事は年に数回でも、積み重なるとだんだん予定が詰まるようになります。さらに不定期の講演依頼も多くなりました。いまは7月なのにもう10月の休日の予定が埋まりつつある状況です。これらもどこかかで整理していかないと、いずれは僕がパンクするでしょう。また休日なのに家にほとんどいないということで、家族の不評を買ってもいるのです。
   そういうわけで現在の僕にとってもっとも手ごわい課題は、実は過労の問題だったのでした。気づいてみれば当たり前のようなことなのですが、いまのいままではっきりと意識したことはなかったでした。過労の問題は奥が深く、以下のような問題とも関連しています。「人間には体力にも精神力にも限界があること」。「仕事と家庭生活のバランスを取ること」。「自分が万能ではないので、活動の範囲をある程度しぼる必要があること」。「自分が取り組んでいる活動のなかで、何がいちばん大事なのか?」。「どのようにすれば休息できるのか?」。「自分の生きがいとは?」。結局のところ、過労を防ぐには、人生のさまざまな課題に優先順位を付けて対応していかないといけないのです。
   僕自身はどちらかといえば課題の発見や指摘は得意ですが、整理は苦手なところがあります。スパッと線を引いたり、頼まれたことを断ったり、何かを切り捨てるのが好きではないのです。とはいえずっと食べ過ぎていればいずれ健康問題が出てくるように、ずっと仕事を取り込んでいればやはり問題が起きてきます。自分のたどってきた道を少し振り返って、どうしても必要なことこそを優先して取り組んでいく必要がありそうです。偶然かもしれませんが、肉体的にも太りすぎによる問題が起こっており、自分の食べすぎも少し改善できないかとチャレンジしているところです。1年ぐらいすれば、成果が出るでしょうか? 乞うご期待です。

 

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