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ギャンブル障害について話す 2017年6月10日(日)

  精神科の現場にいると、ギャンブルの問題を抱えた人にときどき出会います。僕は依存症を専門的に診療しているわけではないのですが、発達症や他の精神疾患に付随する形でパチンコなどへの依存症がみられることがあるのです。病名としては「ギャンブル障害」になります。重要な問題ではあるのですが、僕がみているケースはそう多くないこともあり、あまり関心を持たずにいままできていました。
  それが急に調べないといけなくなりました。ギャンブル障害の支援についての講演を依頼されたのです。頼んでくださったのは笠肇さんで、「人吉球磨難病友の会」の代表をされています。難病支援の文脈でお会いした方なのですが、とても活動的でかつ親切であり、難病支援の様子を友人に詳しく教えてくださったりしました。なので僕は恩義を感じていたのです。
  意外なことに、今回の依頼は難病とは全く別の文脈からでした。笠さんは球磨郡の錦町に住まれていますが、その地域にボートレースの場外売り券場が開設される案が出ているそうです。笠さんはそれには反対で、そこからギャンブル障害について調べ始めたそうです。行動的な笠さんらしいですね。
  ただ僕は依存症の専門医ではありませんので、最初はお断りして依存症の専門医をお勧めしました。ですが入門編で大丈夫とのことで頼まれ、引き受けてしまいました。まずは見取り図になる専門書を読もうと、さっそく『依存症・衝動制御障害の治療』(責任編集:福居顯二、中山書店、2011年)を注文してみました。
  ギャンブル障害は、アルコールや薬物などの「物質依存」の周辺にある疾患です。「衝動制御障害」という疾患グループの1つとしてとらえられています。ただ患者さんの多さから言っても歴史から言ってもアルコール使用障害が群を抜いて重要であり、この本でも多くのページが割かれています。症状、脳内メカニズム、支援法のいずれを取っても、ギャンブル障害とアルコール使用障害には共通点が多いです。なので僕の講演も、物質依存 ⇒ 衝動制御障害 ⇒ ギャンブル障害、と話を進めていくことにしました。また参加者の多くが一般の方であり、依存症といってもイメージが湧きにくいことが予想されますので、なるべく架空の事例を多く取り入れて、病状や支援の実際がつかみやすいようにしました。
  「顕著な二大症状は借金と虚言である」(上掲書183ページ)と書かれているように、支援者が苦労するのがお金の問題とウソの問題です。ですのでゞ眩管理と∪議召粉愀犬鼎りが治療のポイントになるのですが、これがどちらもひとすじなわではいきません。
  ,龍眩管理のためには病状に応じたさまざまな公的な金銭管理システムが用意されていないといけません。ですが現時点では社会福祉協議会による金銭管理(権利擁護事業)と法定後見制度ぐらいであり、両方とも本人が拒否した場合に導入が困難になります。なのでどの市町村にも浪費者の問題があり、行政などの支援者が悩んでいるのです。
  また△寮議召粉愀犬鼎りのためには、病院受診をするだけではなく、当事者どうしが批判しあわずに話す自助グループへ参加することが大切になります。経験した者どうしでないと、語れない深みがあるのです。球磨地方でも以前吉田病院のソーシャルワーカーが自助グループを立ち上げたことがあったのですが、参加人数の問題やメンバー間のトラブルなどでうまくいかなかったそうです。現時点では八代市の自助グループ「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」に通わざるをえませんが、残念ながら遠距離のために続かない方もおられます。
  日本におけるギャンブル障害のほとんどはパチンコ・スロットによるものとのことです(上掲書182ページ)。パチンコをまずはギャンブルであって規制が必要な対象であると位置づけることが必要です。不思議なことになぜかギャンブルとして扱われないまま今に至っているそうです。海外では登録制カードを作って、依存症の人がカジノに入れなくするなどの公的な支援システムも作られているそうですから、日本でも取り組みが必要だと思います。また予防的な意味合いからは、子どもたちへの教育にギャンブルの問題を取り入れることも必要ですね。
  家族が本人の借金の尻拭いなどに疲れはてて、うつ病になるケースも多いそうです。家族支援も必要です。家族どうしの自助グループには「ギャマノン」がありますが、これも球磨地方には残念なことにありません。いまから作っていくことが必要です。
  僕自身の勉強のためにも、今回講演を依頼していただいてよかったでした。資料作りにとても時間がかかりましたが、今日やっと作り終えました。当日がどうなるか楽しみです。

[追記]  6月21日の当日、75人が集まってくださり、皆さん熱心に聞いてくださいました。僕が会ったことのない方がたくさん来てくださってうれしかったでした。球磨地方ではギャンブル障害の自助グループ(当事者どうしの支えあいの集まり)が以前はありましたが、いまはありません。今後立ち上がっていけばと思います。なおボートレースの場外売り券場の開設は中止になりました。ですが「場外舟券売り場を考える会」は活動を続けるそうです。ギャンブル問題の支援体制が広がっていけばいいですね。

 

写真1  当日の様子。

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