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司法面接研修に参加する1 2017年3月13日(月)

  「司法面接」という言葉はおそらく多くの方にとって聞き慣れないものではないかと思います。僕にとってもそうでした。大まかに言えば、「性虐待などを受けている可能性のある子どもに対して行われる、司法判断に活用できるような正確な情報聴取のための面接。正確性の向上と子どもの負担軽減のためにさまざまな工夫がされている」といった意味ではないかと思います。従来は児童相談所・警察・検察などで何回も何回も話を聞かれることで、話の内容が変化してしまったり、トラウマ症状などの二次被害が出たりすることが多かったそうですが、いまは多職種協同で1回で面接を済ませるやり方が主流になっています。
  この司法面接という言葉を僕が初めて聞いたのは、児童青年精神医学会の性虐待についてのシンポジウムに参加したときでした。4人の講師のうちの1人の仲真紀子さん(北海道大学大学院 文学研究科教授)が司法面接について話されたのです。話の内容もすばらしかったですが、なによりも仲さんの明るくて純真な人柄が非常に印象に残りました。性虐待のケースは深刻なものが多く、支援システムはまだ十分には整っていません。支援者にもどこか無力感や疲れが見えました。それだけに一層、仲さんの天真爛漫といっていいような優しい明るさが際立ったのです。
  学会で聞いた内容を吉田病院の子ども支援チームの例会で話したら、同僚が質問をしてくれました。「重くて話しづらい話題を子どもから引き出すために、どんな工夫をされているのだろう?」という疑問です。僕はとりあえず仲さんにメールを送ってみました。そうしたらすぐに返事をくださいました。送った僕もビックリでした。
  メールをやり取りするうちに、宮崎市で司法面接研修をしますよ、ということを教えていただけました。それで僕も参加させていただくことにしたのです。僕が働いているのは熊本県なので、県境をまたぐ形になりますが、主催される宮崎県庁こども家庭課の方のご理解で参加できることになりました。
  人吉市から宮崎市までは高速バスで2時間ほどかかりますので、前日の夜から出かけました。会場は「宮崎県中央福祉こどもセンター」です。これは中央児童相談所のある建物です。僕は児童相談所にも1ヶ所しか行ったことがありませんので、楽しみでした。
  研修は2日間です。意外だったのは医療職は僕とカウンセラーの方の2人しかいなかったことです。かわりに多かったのは警察・家庭裁判所・検察といった司法関係の方と、児童相談所や児童養護施設といった福祉関係の方たちでした。どちらも僕が普段ほとんど話したことがない人たちで、しかも子どもの支援をしていくうえで連携しないといけない立場の人たちですから、とてもうれしかったです。
  研修は2日間とも実習が中心で、実習の準備のために基礎的な講義を受ける感じでした。仲さんのお話は非常にわかりやすく、要点を絞りこんだものでした。全国を飛び回って指導に明け暮れておられるそうですが、さまざまな質問を受けながら、内容を練り上げてこられたのでしょう。非常に腰が低くてしかも話しやすい雰囲気を持っておられるので、参加する僕たちも自由に質問がしやすかったです。
  初日に学んだことのポイントを箇条書きにしてみます。
・「子どもから性虐待の訴えがあったが、調査の結果、被疑者は無実だった」というケースが過去に多発した。
・子どもは大人と比べて相手の言葉に影響されやすい。聞き取りをする大人の考えに子どもが誘導されてしまうのが、その原因であった。
・また何度も何度も聞き取りをされるうちに、記憶が変容してしまうのも、問題となった。子どもの「供述に信憑性がない」と判断されて、当事者すべてに負担がかかったケースも出てきた。
・さらに聞き取りを繰り返されるうちに、子ども自身が精神状態の悪化をきたすケースも多くなった。
・そのような背景のもとで、〇碧“獣任忙箸┐襪茲Δ弊騎寮をもった証言を引き出せる面接法、∋劼匹發良蘆瓦最小限になる面接法、が求められるようになった。
・いくつもの面接法の手順書(プロトコル)があるが、仲さんが指導に使っているのは「NICHDプロトコル」である。非常に具体的に話す文言が規定されているのが特徴である。
・子どもにいきなり話すように言っても話せない。NICHDプロトコルの前半部分は子どもに事実だけを話してもらうためのリハーサルや準備運動といった内容である。
・なるべくこちらが口をはさまずに子どもに話してもらうための工夫が大切である。「〜さんがたたいたの?」といった“閉じた質問”(内容が限定的で、「はい」か「いいえ」などで答える質問)はできるだけ使わずに、「〜について始めから終わりまで聞かせてください」「〜について詳しく教えてください」といった“開かれた質問”(自由に話して答える質問)を多用する。そのことでより正確性が高まり、また質問ばかりをあびせ続ける「尋問の雰囲気」が減る。子どもの自由報告がもっとも大切である。
・「Aの出来事とBの出来事の間に何があったか教えてください」、「そのあとに何がありましたか?」といった前後を問う質問も役に立つ。
・基本的な出来事の流れを聞き取れたら、もう少しポイントをしぼって尋ねる。「〜さんについて教えてください」、「〜はどんな物でしたか?」といったある程度内容を限定した質問をする。
・休憩を取り、別室でモニターを見ている人たち(バックスタッフ)のところに行く。もっと聞いた方がいいことなどをアドヴァイスしてもらう。
・最後に話したりないことがないかなどを確認して、子どもをねぎらって面接を終える。
・司法面接のDVDが裁判の証拠として採用されるようになってきている。そうすると子どもは法廷に行かなくてもよくなる。
・子どもの証言だけで立件するのは難しいことも多く、補助証拠を集めるのも大切である。
・司法関係者と福祉関係者の合同の研修や訓練も増えている。
・司法面接を行ううえで、児童相談所・警察・検察のチームワークが必要である。さらに教育・保健・医療などの関係者ともネットワークが広がっていくことが望ましい。

  その他の教えてもらったことは以下の通りです。
・子どもの支援の基盤になる法律は児童福祉法である。特に児童相談所が被虐待児童を施設などに一時保護することを定めている28条が重要である。
・虐待の疑いがあるケースに対して、裁判所の許可状を得たうえでなら司法警察官が自宅を調査することが可能である。これを「臨検(りんけん)」と言う。児童相談所の職員と警察官が合同で行うことが多い。
・家庭裁判所は大きく分けて[ズГ篩蠡海覆匹亡悗垢覯板軻發諒響茵焚隼事件)と∈瓩鯣箸靴燭衄箸垢それのある子どもの事件(少年事件)の2つに関わる。調停や審判を通して紛争が解決することを目指す。 
・児童養護施設の職員は子どもたちへの対応法の基礎として、コモンセンスペアレンティング(CSP)を学ぶことが多い。これは虐待をしてしまった親が子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニングを応用したものである。

 

写真1 司法面接研修の会場である宮崎県中央福祉こどもセンター。

 

写真2 会場の様子。グループワークとロールプレイが中心だった。

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