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てんかんについての本を読む 2017年2月26日(日)

  最近は診療のなかで精神疾患とまぎらわしい「てんかん」のケースに遭遇することが増えてきました。また小児期はてんかんになりやすい時期ですので、子どもの診療をしているとてんかんを持っている方に出会います。「もしかしててんかんかも?」と疑えれば検査や治療を進めていけますが、気が付かないままになってしまうこともよくあります。
  精神科の現場で必要なてんかんの基礎知識を得たくて、『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)を読んでみました。予想以上に現場で役立つ即戦力的な内容で、読み終われて非常に良かったでした。僕にとって特に参考になった第1章と第2章の内容を以下に引用・要約してみました。専門的な内容が多くなってしまいますので、興味のある部分だけさっと読んでいただければと思います。

『てんかん診療スキルアップ』
●序
・てんかんは神経疾患に位置付けられているけれども、てんかん診療は精神科から切り離せない。
・てんかんはさまざまな精神疾患を併発しやすい。

●第1章 精神科外来を初診するてんかん発作
A、てんかん発作の基礎知識
・通常はてんかん発作は患者ごとに発作症状と型がほぼ決まっている。
・発作症状からある程度てんかん症候群を推測することが可能である。
・てんかん発作そのものを起こす大脳の領域(てんかん原性領域)と、発作症状を引き起こす領域(発作症状出現域)を分けて考える。
・1981年の発作型分類では、まずは全般発作と部分発作に二分する。
・特殊なてんかんを除き、通常は全般発作を起こすケースが部分発作を起こすことはない。また部分発作のケースでは二次性全般化以外の全般発作をみとめることはない。
・てんかんは誤診しやすい疾患である。
・特に鑑別に気を付けないといけないものに、心因性非てんかん発作と失神がある。
・「前兆」は部分発作である。
・てんかん発作の一般的な特徴には以下のものがある。突然開始し、突然終了する。通常は数秒から数分で終了する(2分以下が多い)。患者ごとに発作時の症状のパターンや出現部位が決まっている(常同性)。発声することもある。舌を噛むことがある。発作時には目は開いている。声かけだけで意識レヴェルは変化しない。
・見落としがちであるが、二次性全般化する前の発作症状が重要。
・「若年欠神てんかん」では、数秒間ボーっとし、動作が停止し、速やかに回復する。過呼吸で発作が起こりやすくなるため、運動や合唱のときなどに起こりやすい。
・「若年ミオクロニーてんかん」では、朝起きて1時間以内や夕方に起こる「一瞬びくっとする」ミオクロニー発作が起きる。また強直間代けいれんも起きる。ミオクロニー発作は通常は両側の腕に起こりやすい。
・「側頭葉てんかん」では前兆のあとに、意識障害をきたして口や手の自動症を伴う複雑部分発作が起こる。前兆には吐き気や既視感、感覚性失語(人の言っていることや書いてある文字が理解できない)などがある。
・「前頭葉てんかん」には症状のパターンがいくつもある。意識消失は通常は1分以内で、もうろう状態も少ない。左右対称でない激しい両側の運動症状が起こることがある(フェンシング姿位、4の字徴候、自転車こぎのような自動症、過運動発作、大声を出すなど)。
・「後頭葉てんかん」では視野の一部が暗くなったり、キラキラしたものが見えたりといった視覚に関係する症状が起こる(複雑な幻視では側頭葉てんかんを疑う)。
 

B、夢様状態を含む“精神発作”
・「夢様状態」は側頭葉てんかんの発作症状の一種。見当識が保たれたまま周囲の認知の仕方が変容する。既視感、未知感、追想(過去の記憶がパノラマ様の幻影として思い浮かぶ)なども出現する。
・意識障害を伴わないてんかん発作のうち、言語・記憶・感情・認識の障害を引き起こしたり、錯覚や幻覚を引き起こすものを、「精神発作」と総称する。
・精神発作には、夢様状態、恐怖発作、言語障害発作、記憶障害発作、認知障害発作、感情発作、錯覚発作、構造幻覚発作などが含まれる。
・精神発作の患者は精神科外来を初診する可能性も高いが、精神疾患との区別が難しいことがある。
・「恐怖発作」は精神発作のなかでも頻度が高い。パニック発作との鑑別が求められる。
 

C、複雑部分発作
・複雑部分発作とは意識障害を伴う部分発作のこと。
・自動症を伴うことも多い。自動症とは体の一部または全身の奇妙な反復性の動作のこと。口部自動症では、くちゃくちゃ噛むように口を動かす、唾を飲みこむ、舌なめずりをする、口をぴちゃぴちゃさせるなどがみられる。手の自動症では、手探りするような動作をしたり、服をまさぐったりする。
・複雑部分発作と単純部分発作の区別のポイントには以下のものがある。意識障害があると、ボーっとした様子であり、視線が合わない。呼びかけや痛み刺激にも反応しない。複雑部分発作では発作後に、発作中の様子を思い出せない。
・自動症を伴う欠神発作と複雑部分発作は症状だけでは区別できないことも多い。脳波所見を参考にする。欠神発作では過呼吸不活によって「3Hz棘徐波」が出現することが多い。
・ 側頭葉てんかんの80%を占める内側側頭葉てんかんは海馬や偏桃体に焦点を持ち、難治例に外科的な治療が有効である。典型的な複雑部分発作の症状がみられる。二次性全般化することは比較的まれである。熱性けいれんの既往があることがよくある。
・前頭葉は側頭葉に次いでてんかん焦点を生じやすい大脳の領域。前頭葉てんかんは難治性のものも多く、発作が意識障害をきたすとも限らず、激しい情動や動きを伴うことが多いので、心因性非てんかん発作と誤診されやすい。前頭葉由来の複雑部分発作では激しい行動症状がみられやすい。発作症状は以下の3つに分けられる。焦点性運動発作(一側の身体部位に限局、間代が主徴、上肢や顔面に多い)、補足運動発作(上下肢の近位筋の収縮による強直姿勢、フェンシング姿位など)、精神運動発作(自動症や過運動発作など)。
 

D、非けいれん性てんかん重積発作
・「非けいれん性てんかん重積発作」とは、目立ったけいれん症状を生じないてんかん発作が、長時間持続したり短時間で反復したりする状態である。精神疾患に似た状態を示すことがある。
・ 精神科外来を初診するケースには以下のものがありうる。仝験侈兪曄ν泙Δ帖困惑・攻撃性・認知機能障害などの精神症状が目立つ場合。∪鎖声栖気隆擬圓傍こった非けいれん性てんかん重積発作。H鵑韻い譴鸚てんかん重積発作がてんかんの初回発作として起こったり、他の発作型が主だったところに非けいれん性てんかん重積発作が起こった場合。
・発作症状は多彩である。上記に加えて、軽度のもうろう状態、言語障害、自動症、健忘、昏睡のような状態などがみられる。特異的な臨床症状は存在しない。
・ 脳波が必須。脳波所見も多彩である。律動性波形の持続や頻発に加えて、棘徐波、律動性徐波などがみられる。単純部分発作の重積では脳波所見が出現しにくい。
・非けいれん性てんかん重積発作を疑うサインとしては以下のものがある。’沼潅罅脳腫瘍、認知症、脳外科手術の既往などのリスクファクターの存在。⊇兎討弊鎖西評。4禝絮親阿琉枉錙
・向精神薬で起こったものは原疾患の悪化と誤診されやすいので注意が必要。
・「欠神発作重積」では意識混濁や行動の変容がみられ、典型的には「反応はあるが、混乱が目立ち、単純な動作も促してやっとできる状態」になる。開始と終了は明瞭。初期治療としてはベンゾジアゼピンの静注を行い、その後はバルプロ酸を使う。中年以上の女性に好発する欠神発作重積もあるが、ベンゾジアゼピンの離脱や向精神薬の中毒が誘因になることが多い。
・「複雑部分発作重積」では前兆を伴って緩徐に発症する意識混濁がみられる。欠神発作重積よりも精神症状の頻度が高く、口部自動症や片側性のジストニア(眼球偏位や眼振など)がみられるのが特徴的。
・「単純部分発作重積」では体の一部のピクつきの持続が代表的。恐怖発作・眼振・消化器症状・精神症状の持続もみられる。脳波の異常所見が検出されないことが多い。
 

●第2章 精神科領域における発作性エピソードの鑑別診断
・問診する際に、てんかん発作の症状と、非てんかん性の症状を対比させながら症状を切り分けていくと、誤りを減らすことができる。
・てんかん発作の三大症状は、けいれん、意識障害、感覚発作または運動発作。

A、意識消失
〇失神
・失神とは、何らかの原因で脳血流が低下し、一過性の意識消失が起きて姿勢が保持できなくなること。そして自然に完全な意識の回復がみられることである。
・失神の原因の代表的なものには、ゝ立性低血圧、反射性失神、心原性失神がある。
・失神の発生率は、10〜20歳代の若年者と70歳以上の高齢者にピークがある。△麓稠者に多く、,鉢は高齢者に多い。
・病歴聴取が重要。前駆症状、意識障害の発症形式、随伴症状、外傷の有無、回復過程の様子などを確認する。
・失神による意識障害は1分以内のことが多く、てんかんでは数分間になることが多い。失神ではすみやかに意識清明になるが、てんかんでは意識回復までに10分以上かかったり、覚醒度が完全に回復せずもうろう状態が続いたり、咬舌を伴ったりする。
〇日中の眠気
・日中の眠気の訴えがあった場合、まずはほんとうに眠気を表しているのかを考える必要がある。眠気を感じていても疲労感や倦怠感の訴えだけがあることがある。特に子どもでは言葉で表現できないので、「イライラしやすい」「集中力がない」と周囲に受け取られている場合がある。
・過眠が疑われたら以下の点を確認する。平日と休日で眠気や睡眠時間の変化はあるか?アトピー性皮膚炎の痒みなど身体不調での不眠ではないか?精神疾患の影響での不眠では?内服中の薬剤の影響はないか(向精神薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬など)?
・日中の眠気のスコアリング・ツールとしては、「エプワース眠気尺度(ESS)」がある。睡眠日誌での記録も大事。
・鑑別を要する疾患には、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、解離症などがある。

B、健忘
・健忘をきたす原因には、物質によるもの(アルコール、薬物など)、身体疾患によるもの(複雑部分発作、頭部外傷、脳腫瘍、一過性全健忘、コルサコフ症候群など)、その他(電気けいれん療法など)がある。認知症やせん妄も健忘をきたしうる。
・「一過性全健忘」は突然発症し、数時間に及ぶ逆行性健忘をきたす疾患。その間、即時記憶は正常であり、意識障害もない。片頭痛に合併しやすい。予後は良好であり、積極的な治療を要しない。
・「解離性健忘」は脳の器質的な障害ではなく、精神的な外傷やストレスがきっかけとなって起こる健忘。

C、異常行動
・ 睡眠遊行症や夜驚症などは睡眠時随伴症と総称される。睡眠時随伴症は睡眠段階と密接な関係がある。
・ REM睡眠行動異常症は睡眠時随伴症の代表的なものである。特徴としては、男性に多い、40〜70歳代に多い、発症年齢は15〜80歳なことがある。症状としては、演説口調、叫び声、ののしり声、四肢を振り回す、殴る、蹴る、布団から飛び出る、攻撃される夢内容、夢内容を反映する行動をする、などがよくみられる。異常行動は睡眠の後半3分の1に起こりやすい。
・ 終夜睡眠ポリグラフ検査によって診断を確定する。夜間の前頭葉てんかんなどとの鑑別を要する。
・ 心因性非てんかん発作はよくみられるもので、てんかん専門施設の外来の1〜2割を占めると言われている。てんかん発作と合併することも少なくない。特徴としては、てんかん発作の症候に適合しない、常同的でない、断続的で長く続きやすい、心理的な要因や状況要因が強く関係している、生理的な睡眠中には起こらないことなどがある。
・ 心因性非てんかん発作に知的発達症が合併するのは1〜3割程度とされている。鑑別には発作時のビデオ・脳波同時記録が有用である。
・ パニック症の診断のためには、内側側頭葉てんかんとの鑑別が必要である。鑑別点としては、発作の持続時間(側頭葉てんかんは2〜3分)、症状の常同性、広場恐怖の合併の有無(パニック症の方が合併しやすい)、初発年齢(側頭葉てんかんは小児期から思春期、パニック症はそれ以降に起こりやすい)、などがある。

 

写真1 『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)。非常に実践的に編集された本だ。

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