お休みどころ

こころの相談活動を作り続ける
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郷達也さんの新聞記事 2012年12月2日(日)

 水上村の出身でいま西日本新聞の人吉支局長をされている郷達也さんが、10月に取材に来られてお休みどころのことを新聞記事にしてくださいました(2012年12月1日版)。達也さんの妻の利恵さんとは以前お会いしたことがありましたが、達也さんとお会いしたのは初めて。なのでお休みどころについても達也さんはほとんどゼロから取材されたはずです。それなのにわずか1日で集めた情報を元に、これだけ広い視点で書かれるのですから、「さすがプロは違うなぁ」と驚きです。
 内容が現実と比べてあまりにかっこ良すぎますが、「こんな願いを持ちながら人生を生きてきたのかなぁ…」と僕にも勉強になりました。おそらく読者の皆さんにとっても、曖昧でわかりにくい「お休みどころ」のイメージが、よりクッキリと浮かび上がることと思います。達也さんには感謝の思いでいっぱいです。この記事に描き込まれたお休みどころを目指して、細々とでも活動を続けていけたらと思います(興野)。
 
 
「心の重荷下ろして」_無料保養所運営の精神科医_興野(おき・の) 康也(やす・なり)さん (36)
 
  水上村の役場から山奥に向かい車で20分。江代(えしろ)平谷地区に築100年を超える民家がある。辺りは杉林と田畑。22世帯約40人が住まうこの地では、渓流のせせらぎと鳥の鳴き声しか聞こえない。
 古民家は「お休みどころ」と言う。医師1人と、看護師や保健師資格を持つ女性2人が悩み相談に無料で応じる「心の保養所」だ。
 「あきんど 農夫 薬売り/重たい荷を背負ったひとびとに/ここで一休みして/のどをうるおし/さあ それから町にお入りなさい」
 屋号は、戦後の詩人茨木のり子さんのこの詩から取った。「ここは追い詰められ、行き場がないときにSOSを出せる場所。くつろいだり生き生きとできる場所。心の重荷を下ろしてもらい、楽しみや安心を提供できればそれでいい」
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 住まいは人吉市内にもあり、金曜から月曜は市内の精神科病院で勤務。残る3日を、主にここで看護師の妻美紗さん(33)らと過ごす。
 京都で過ごした学生時代、ハンセン病や原発問題などの講演・討論会を仲間たちと催す中で、気付いた。悩みを抱えてふさぎ込む人が多い―。
 「深い森の中で人を元気にさせる家を開きたい」。向かったのが、尊敬する翻訳家、北御門二郎氏(故人)が農業の傍らトルストイの翻訳を続けた水上村だった。縁もゆかりもない。それでも氏の家族に思いを語ると当時の村長までもが家探しを手伝ってくれ、平谷にたどり着いた。医大を卒業した2003年、お休みどころが生まれた。
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 うつ病で自殺を考えた人、身内がアルコール依存症の人、摂食障害の子を持つ親、離婚や伴侶を亡くし人生の岐路に立つ人…。さまざまな悩みを抱えた人がここで思いを打ち明ける。じっと耳を傾け心を解きほぐす。
 核家族化で家がバラバラになり、地域のつながりも薄れた。人は悩みをはき出せる場所を求めている、と思う。
 宣伝は一切ない。紹介や口コミだけで毎月10人以上がここを訪れる。過去、ハンセン病や水俣病患者による講演や、一人語り芝居などの「芸術祭」も開いた。常時開放された家は学問や音楽などを個々が自由に表現する場にもなっている。
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 高校2年のころ、日本初の国立ハンセン病療養所・長島愛生園(岡山県)に通い、患者が社会から「隔離」された現実を知った。「精神病患者も同じ。閉じ込められている。一緒に生きるために医療は絶対不可欠なもの」との思いから医師を目指した。投薬治療が多い精神科医療で対話療法に重きを置いている。
 山奥の医療過疎は、深刻な問題だ。「話だけで済むか、病院への受診が必要かなどを見極める。過疎地医療は、治療の優先順位を付ける『トリアージ』が大切」と語る。
 今、目指す方向性は「ボランティアからプロまでいる、悩み相談施設」。最近、かつての相談者が球磨郡内でお休みどころと同じ理念の保養所を開いた。こうした取り組みが人吉球磨に、社会全体に広がることを願う。
 「精神的なセーフティーネットがしっかりした社会こそ、自分たちが目指すもの。ほそぼそした活動で一つの実験だが、ゆっくり進めたい」  (人吉支局・郷達也)
 
横顔 1976年、京都市出身。東大理科1類に進学したが1年半で中退。京都府立医科大に入り直し医師免許を取得。2005年から7年間、鹿児島市の病院で働きながら「お休みどころ」と行き来した。今年6月から人吉市の吉田病院常勤医。12月に第1子が誕生予定。「女の子で名前は、やすみちゃん」。お休みどころ=0966(46)1113(留守のときは留守電をご利用ください)。
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