「墓碑銘」以降(6)
第二句集「墓碑銘」以降の句
2007.6.19(火)〜2007.10.27(土)
上島聖好
6.蝉しぐれ
蝶つがい ジャガイモの花 まろび飛ぶ
(亡父の誕生日に)
夏至の朝 ひぐらし一声 雨中から
水無月の 小石に染み入る 水一滴
水無月や 小石の中で 魚跳ねた
入口で われを待ちつつ アマガエル
梅雨空に 立ちあがるかな お休みどころ
(看板が立った)
水無月の ヒグラシ舞台 宵のはな
水無月の 鯨の如き 看板や
よろよろと 足どり危うく 舞い踊る
やすらかに 羽を広げて 死を待つか
夜の雨 差し芽の薔薇も よろこべり
梅雨空に 君は犬を 避妊する
鬼塚に 犬の子宮を 埋めにけり
犯されし メスは地面を 狂い掘る
蓮月の 蓮は叩かれ 夢一夜
梅雨合間 切株歩く サワガニや
夏の朝 ヒグラシ指して われも翔ぶ
蓮月の 十二夜の月 抱いて寝る
われら来て 山輝くや 赤トンボ
祖霊たち われはまといぬ 赤蜻蛉
アサガオに ひとつひとつの 御霊かな
夕立は 降らねばならぬ 西の風
アサガオの ラッパの花後の しずけさよ
虫の音の 群れに加わる ツクツクホーシ
夕立の 跡に残るは 虹の基
草の間を ぬっと生え出る 芋の蔓
チョウザメの 影重たきや 蝉しぐれ
八月二十三日 この地に根づく 人となり
遠ざかる 雷追いかけ 蝉時雨
遠ざかる 雷残して 青い空
わしわしと 蝉は鳴くなり 伊豆の朝
(伊豆にて5句)
伊豆の朝 きくともきかぬ 蝉の声
サルスベリ 伊豆の荒野に 我ひとり
伊豆の月 海に旅立つ 白百合と
クロアゲハ 生きよと罪人 励ましぬ
コスモスの 彼岸にざわめく 防空壕
(鎌倉にて7句)
白鹿洞 われはこもりて 死ににけり
紫陽花の 日に抱かれて 蘇り
みずひきの 花にひそめり 広大無尽
長谷寺で 海を眺めつ パンを食う
大仏の 胎に入りし 夏の午後
満月に 蝉は死につつ 秋の風
長福寺 晩夏の蝉の あかあかと
蝉しぐれ 「平和」の文字に 染みいれり
(花巻にて6句)
蝉しぐれ 水車を廻す 地水火風空
窓辺にツイ 精霊蜻蛉 止まりをり
ギンドロの 苗にたましい こもりけり
ギンドロの 葉の裏白し 産毛かな
シラサギに ポシャリポシャリと 晩夏雨
一瞬の 赤き蓮沼 走りゆく
重陽に ソラマメ四粒 種降ろす
水を汲む 指のうれしさ 秋雨も
山の神 献じましませ ホトトギス
(平谷の山の神祭りにて)
シカの声 笑いのめす 他になし
霧衣 纏いて友は 身罷りぬ
(吉本友子さんに捧げる2句)
友の死に 畑に立ちて 蕪を蒔く
銀杏のわれ 臭き香 鼻に充つ
どんぐりを 拾いし友と ゆく秋に
(朴才暎さんに捧げる)
わが業苦 ひきおこし罪 日入鳥泣く
2007.6.19(火)〜2007.10.27(土)
上島聖好
6.蝉しぐれ
蝶つがい ジャガイモの花 まろび飛ぶ
(亡父の誕生日に)
夏至の朝 ひぐらし一声 雨中から
水無月の 小石に染み入る 水一滴
水無月や 小石の中で 魚跳ねた
入口で われを待ちつつ アマガエル
梅雨空に 立ちあがるかな お休みどころ
(看板が立った)
水無月の ヒグラシ舞台 宵のはな
水無月の 鯨の如き 看板や
よろよろと 足どり危うく 舞い踊る
やすらかに 羽を広げて 死を待つか
夜の雨 差し芽の薔薇も よろこべり
梅雨空に 君は犬を 避妊する
鬼塚に 犬の子宮を 埋めにけり
犯されし メスは地面を 狂い掘る
蓮月の 蓮は叩かれ 夢一夜
梅雨合間 切株歩く サワガニや
夏の朝 ヒグラシ指して われも翔ぶ
蓮月の 十二夜の月 抱いて寝る
われら来て 山輝くや 赤トンボ
祖霊たち われはまといぬ 赤蜻蛉
アサガオに ひとつひとつの 御霊かな
夕立は 降らねばならぬ 西の風
アサガオの ラッパの花後の しずけさよ
虫の音の 群れに加わる ツクツクホーシ
夕立の 跡に残るは 虹の基
草の間を ぬっと生え出る 芋の蔓
チョウザメの 影重たきや 蝉しぐれ
八月二十三日 この地に根づく 人となり
遠ざかる 雷追いかけ 蝉時雨
遠ざかる 雷残して 青い空
わしわしと 蝉は鳴くなり 伊豆の朝
(伊豆にて5句)
伊豆の朝 きくともきかぬ 蝉の声
サルスベリ 伊豆の荒野に 我ひとり
伊豆の月 海に旅立つ 白百合と
クロアゲハ 生きよと罪人 励ましぬ
コスモスの 彼岸にざわめく 防空壕
(鎌倉にて7句)
白鹿洞 われはこもりて 死ににけり
紫陽花の 日に抱かれて 蘇り
みずひきの 花にひそめり 広大無尽
長谷寺で 海を眺めつ パンを食う
大仏の 胎に入りし 夏の午後
満月に 蝉は死につつ 秋の風
長福寺 晩夏の蝉の あかあかと
蝉しぐれ 「平和」の文字に 染みいれり
(花巻にて6句)
蝉しぐれ 水車を廻す 地水火風空
窓辺にツイ 精霊蜻蛉 止まりをり
ギンドロの 苗にたましい こもりけり
ギンドロの 葉の裏白し 産毛かな
シラサギに ポシャリポシャリと 晩夏雨
一瞬の 赤き蓮沼 走りゆく
重陽に ソラマメ四粒 種降ろす
水を汲む 指のうれしさ 秋雨も
山の神 献じましませ ホトトギス
(平谷の山の神祭りにて)
シカの声 笑いのめす 他になし
霧衣 纏いて友は 身罷りぬ
(吉本友子さんに捧げる2句)
友の死に 畑に立ちて 蕪を蒔く
銀杏のわれ 臭き香 鼻に充つ
どんぐりを 拾いし友と ゆく秋に
(朴才暎さんに捧げる)
わが業苦 ひきおこし罪 日入鳥泣く