「ふれあいまちカフェin人吉球磨」にご参加ください 2013年9月22日(日)
僕の友人に岡山隆二さんがいます。岡山さんは「鐘ヶ丘ホーム」という特別養護老人ホームの施設長をされていますが、本領は福祉ネットワークの構築にあります。つまり幅広い人脈を作って、人と人との出会いの場を作っていき、そこから新しい活動グループができてくるような、「つなぐ」仕事をする人なのです。
岡山さんとの関わりは、岡山さんがこのブログにコメントをくださったときから始まりました。そのあとお休みどころで1回と「鐘ヶ丘ホーム」で1回お会いしました。「家での暮らしに近いような施設」を作られていて、入所者の方たちも穏やかそうでした(残念ながら何十人も入所待ちの状況だそうです)。
岡山さんは非常にバランスの取れた人で、福祉分野に限らない広い知識を持ち、語りも理知的です。それでいて威張らず気さくで、しかも見た目も爽やかというオールマイティさがあります。あまりにいろいろ揃っているので、普通ならこちらが嫉妬の念を抱きそうですが、なぜかそうなりません。どこかサラっとしたところがあるのです。
さて、その岡山さんから「集会を企画するので実行委員会に入ってください」と誘われました。もちろん僕はOKしました。どんな集まりになるのか楽しみにしていたら、先日「実行委員会を開きます」と連絡がありました。それで9月19日に人吉保健所の1室に出かけました。
岡山さんらしいなと思ったのは、実行委員会が「会の運営を細々と話し合う場」ではなく、「人と人の出会いの場」として開かれていたことです。実行委員の面々の立場は公務員だったり病院の社会福祉士だったりいろいろでしたが、共通しているところは仕事を越えて人の輪を作ろうとしている人たちなことです。そういうネットワーカーたちのネットワークを作りたいというのが岡山さんの意図なのでしょう。
そういうわけで会場とか時間とか設営とかそういった実務はすでに決まっていて(岡山さんは高い実務力があります)、この日の話題は会のテーマとPRについてでした。会は「ワールドカフェ」という形式で進められます。参加者は4人がけのテーブルをあちこち移動しながら、いろんな人とテーマについてワイワイ語り合うのです。つまり一般の「壇上からの講師の話を聞く」という集まりに比べて、ずっと参加型で、テーマを掘り下げたりみんなで新しいアイディアを出したりするのに向いているやり方なのです。
ただこのやり方ですごく発展的な議論が行われるには、的を得た厚みのあるテーマ(問いかけ)を設定する必要があります。その問いかけが参加者にとって切実で、強い関心を呼ぶものであるほど、話し合いが白熱するはずです。つまり「未来を作っていくためのキーポイント」を的確に突いた問いかけを見つける必要があるのです。
今回の「ふれあいまちカフェin人吉球磨」のキーワードは「助け合い」や「共生」と決まっていました。でもちょっと待って。どちらもあまりに抽象度が高くて実生活に響かない議論になりそうなワードでは? 僕としてはすぐにピンときにくいところがありました。
そこで実行委員の皆さんと話していくなかでわかってきたのは、会の一番根っこにあるテーマが「多様な人にとって住みやすい地域とは?」なことです。年を取っても、病気をしても住みやすい地域とは何か? 子どもが住みやすく、子どもを育てやすい地域とは? 若者たちが夢を持って働ける地域って何? 過疎化や高齢化、若者の都市への流出という現実があるなかで、生き生きとした地域を作っていくために自分たちは何ができるのか? そこに福祉という言葉の原点があるはずです。そこにこそ参加者の皆さんに問いかけるだけの値打ち、そしてそれぞれの4人テーブルから湧き出した知恵を結集する必要性があるはずです。
PRについては皆さん上手な方たちであり、すぐにも動き出す感じでした。僕も自分の職場や友人たちに紹介することを約束しました。インターネットを利用した情報発信もいろいろ行うそうです。
そういうわけで、「ふれあいまちカフェin人吉球磨」は熱気ある集まりになりそうです。開催は10月19日(土)の13:00〜17:30、場所は多良木町町民体育館、参加費は無料です。定員は300人ですから、どれだけたくさん来ていただいても大丈夫です(笑)。関心のある方はぜひおいでください。いっしょに「ワールドカフェ」方式で盛り上がれたらと思います。
「ふれあいまちカフェin人吉球磨」の申し込み方法
電話09082287551
Fax0966456221
メールmachicafe.info@gmail.com
[追記] このイベントについて職場で紹介したら、病院長の村上良慈さんが1冊の本を貸してくださいました。それが『ワールドカフェをやろう』(香取一昭・大川恒著、日本経済新聞社、2009年)です。これは「ワールドカフェ」という話し合いの方式についてのとてもよくできた解説書で、理論的背景や創始者の人柄に始まり実際の「ワールドカフェ」の運営術に至るまで、非常にコンパクトにまとめられています。あまりにうまくまとめてあるので、「要領が良すぎて味わいが薄い」と感じる部分もありますが、実際にワールドカフェ方式で行った会議の実例などは迫力を感じさせます。
僕がおもしろいと思ったのは、この本にも現代世界の大きなうねりが反映されている点です。多くの人が指摘していることですが、インターネットが広く普及した現在では、人は手持ちのコンパクトな百科事典を持っているようなものです。そうなると専門的な知識の量だけでは「権威」を保つことはできないのです。
例えば病院を例に取ると、医師の患者に対する権威は以前よりはずっと低くなりました。「知識をもとに判断して指示する」という診療スタイルは減り、「いっしょに話し合って治療方針を決めていく」というやり方になりつつあります。また医師と他のスタッフ(看護師など)の関係についても同様で、「治療法について指示する」やり方ではなくて、「さまざまな職種で話し合いを開きながら進めていく」ようになりました。つまり医療の場では、関わる人全員がより「対等」に近付きつつあるのです。
これは他の職場についても同様でしょう。政治でもビジネスでも教育でも芸能でも、この「対等性」が浸透しつつあるのが見て取れます。だからこそ世界的に「対等な人たちが集まって、話し合いながら物事を進めていく方法」が求められているのです。「ワールドカフェ」方式もそのアイディアの1つです。僕たちは自分の所属しているいる集団がより「風通しのいい組織」になるように、工夫していく必要があるのでしょう。
写真1 「ふれあいまちカフェin人吉球磨」のチラシ(表の側)。
写真2 チラシの裏面。
写真3 『ワールドカフェをやろう』(香取一昭・大川恒著、日本経済新聞社、2009年)の表紙。