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強度行動障害の研修に参加する1 2017年9月14日(木)

  「強度行動障害」という言葉をご存じでしょうか?これは医学的な用語ではなく、主として重度の発達症に関わる福祉現場から出てきた言葉だそうです。大まかに言えば、「自傷行為や他害行為、危険な行動などがしょっちゅう起こり、特別な対応が必要な状態」を指しています。文字だけで読むとサラッと読めてしまいますが、本人・他の入所者・施設スタッフの安全を守るために大変な注意とエネルギーを要する深刻な状態です。
  僕が勤務している吉田病院にも発達症や身体障がいの方がたくさん受診されます。入院もよくあります。強度行動障害のレヴェルの方は少ないですが、入院される方には自傷行為や他害行為、浪費、盗み、性的な問題などがよくみられます。また背景に理解力の低下やこだわりの強さなどがあるので、なかなか対策を立てにくいのです。さらに精神薬の効果にも限界があり、あくまでも対症療法的に使われているのが実情です。
  一般的に言えば、重度の発達症の方の治療は難しいと言えます。ですが地域ではすごくニーズがあるのです。なので僕は「どうすれば重度の発達症の方の衝動行動を軽減できるのだろう?」と以前から思ってきました。少しでも改善できる方法があるなら、病院や施設のスタッフたちも絶望せずに済むと思うのです。
  そう思っていた時に、「強度行動障害を持つ自閉症及び知的障害児(者)に対する行動療法研修会」の案内が来ました。会場は佐賀県にある「肥前精神医療センター」です。以前にも2回研修に行ったことがある病院ですので、行くのも気が楽です。研修は2日間ですので、家族で泊りがけで行ってみることにしました。ただ病院の勤務日を2日間開けるのは、仕事がたまってしまって後が大変なのですが、我慢することにしました。
  9月14日の研修初日は午後からです。午前中に早くついてしまったので、会場から車で20分ほどの公園「わんぱく王国  そよ風の丘」(〒8420201佐賀県神埼市脊振町広滝1472, 高取山公園、電話0952519020)に行きました。山の急斜面を利用してかなり長い滑り台が設置されています。残念ながら上に上るリフトは土日祝日しか運行されないとのことでしたので、子どもたちと歩いて登れる範囲で遊びました。滑り台とアスレチックが組み合わさったような遊具で、子どもたちは興奮していました。
  いよいよ研修です。ちょっと意外だったのは、医師の視点からの研修があまり多くなかったことです。内容的にも概論といった感じでした。一方で内容が非常に充実していたのは、看護の研修と、通所施設の方の講演、ソーシャルワーカーの方の研修でした。これがまさに強度行動障害の支援の本質を表していると思います。診断や投薬面での進歩は現代はあまりなく、むしろ日々の行動の指導や特性への配慮、入所や通所施設の充実の側面が大きく進展しているのです。
  環境面での配慮・行動改善へのアプローチ・療育的なアプローチ・福祉施設との連携の4つを取り入れているところが、病院としては珍しいところではと思いました。これはなにも強度行動障害に限ったことではなく、今後も精神科病院全体の進むべき方向性だと思います。これらを充実させると、発達症の人が入院した際にも多面的にアプローチできるのです。職場の仲間たちといっしょに、少しずつ取り入れていきたいなと思いました。

 

写真1〜2は佐賀県にある公園「わんぱく王国 そよ風の丘」で撮った写真です。


写真1 山の斜面を利用して、長いスライダーが設置されている。

 

写真2 すべり台を滑るだけではなく、アスレチックスの要素もある。斜面が急なので怖い。

 

写真3 会場の様子。入所施設や通所施設のスタッフ、精神科看護師など多様な立場の人たちが集まっていた。

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強度行動障害の研修に参加する2 2017年9月14日(木)

  以下は研修で学んだことのまとめです。要約ではなく、僕にとって興味深かった講義のなかの興味深かったことだけを取り出してあります。また事例報告やグループワークについては少ししか書いていませんが、実際にはそれらがいちばん勉強になりましたし、楽しかったです。いろんな立場の人と話せるのが良かったでした。


強度行動障害を持つ自閉症及び知的障害児(者)に対する行動療法研修会(2017.9.14〜2017.9.15)
●「強度行動障害の医療機然杵澄繊廖偏鯏沈薹叩
・病棟では激しい自傷・異食・他害などがよくみられる。
・強度行動障害を持つ人の約8割は自閉スペクトラム症+(最)重度知的障害。
・強度行動障害の支援の歴史を見ると、施設や病院中心  ⇒  入所施設中心  ⇒  地域生活支援、と移行してきている。  
・精神科病院は発達レヴェルに応じた支援が弱い面がある。
・強度行動障害は医学的な診断名ではなく、状態像である。定義の一つに以下のものがある。「直接的他害(噛みつき、頭突つきなど)や間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持例えば場所・プログラム・人へのこだわり、多動、うなり、飛び出し、器物破損など)や自傷行為などが、通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇困難な者をいい、行動的に定義される群である」(飯田雅子ら、1989)。
・医学的な診断は以下のように多面的に行う。\戸茲両祿果勝知的・発達レヴェル。E喘罎ら合併してきた精神疾患。た搬療な合併症。
・知的障害の合併精神疾患としてはうつ病が多い(1〜3%程度)。ただし症状には典型的なうつ病とは異なる部分がある。他にも双極性感情障害、強迫性障害、統合失調症などがあるが、いずれも典型的なものとは異なる面があるので注意が必要。
・行動障害の理解の枠組みとして、「氷山モデル」がよく使われる。これは目の前の問題行動に注目するのではなく、背景にある本人の特性と環境の相互作用に注目する見方である。
・自閉症や知的障害の人が行動障害を起こしやすい環境としては、以下のようなものがある。見通しがきかない、やることがない、命令される、スケジュールの急な変化、簡単すぎる課題や難しすぎる課題、衣食住に関する不快。
・行動療法とは行動を変化させるための技法の集まりである。大きく分けて、行動に至る前の部分に注目・活用するもの(レスポンデント条件付けに基づくもの)と、行動の結果に注目・活用するもの(オペラント条件付けに基づくもの)がある。
・病棟の構造によって違いはあるが、入院の意義には以下のようなものがある。緊急避難的な本人の保護、家族や施設スタッフの休養、身体合併症への対応、行動や情緒面の状態評価、薬物調整、強度行動障害のリセット、行動療法による介入。
・薬物療法に関しては、以下の点に注目して、少量から始めて少しずつ増やしていく必要がある。大量処方は望ましくない。目標(軽減したい症状)をはっきりさせる。自覚症状を訴えることができない人が多いため、副作用に気づきにくい。脆弱性があり、もともと副作用が出やすい人も多い。
・出現しやすい身体合併症には以下のものがある。てんかん発作、イレウス、外傷、皮膚疾患、齲歯、呼吸器感染症。
・絵カードなどを利用した視覚支援(構造化と呼ばれる)も有効。
・強度行動障害医療の課題には、高齢化と身体合併症増加、地域移行の促進、などがある。


●「ASDの理解と支援の概要」(西村泰亮)
・自閉スペクトラム症の人の認知的な側面の特徴には以下のものがある。生活の中で混乱しやすい。他者の言動の背後にある気持ちや意図を読み間違え、極端なとらえ方をしやすい。一度思い込んだことをなかなか修正できない。未整理なまま蓄積している強い感情とその場面がセットになり、小さなきっかけで生々しく再現される傾向がある。
・自閉スペクトラム症人の感情的な側面の特徴には以下のものがある。感情が極端な形であらわれやすく、気分が極端に上がったり下がったりしやすい。なので抑うつ状態、躁状態、強度の不安状態、爆発的な怒りなどがみられやすい。
・環境の意味をわかりやすく整理して伝えること(構造化)が支援において重要である。
・視覚化も大切である。書字情報、写真、絵、具体物などを活用する。
・支援のポイントには以下のものがある。こだわりや好みを利用する。予告を徹底する。落ち着くための場所(カームダウンエリア)を用意する。新しい行動の形成にむかって少しずつ段階的に進めていく。望ましい行動は具体的にほめる。望ましくない行動は、より適応的な行動に変形させる。禁止をする際には、代わりの行動を提示する。他者への関心を育てる。コミュニケーション技術を段階的に高めていく。感情や衝動のコントロールなど自己管理能力を育てる。肯定的な自己像を描けるように支援する。


●「行動療法と自閉症支援」(山下葉子)
・行動療法の考え方では、以下の2つの視点から、適切な行動を増やし、不適切な行動を減らそうとする。ヾ超を整える。適切なフィードバックを行う。
・手順は以下の通りである。_霪の目標である行動を決定する。▲侫ードバックに使うもの(強化子)と使い方を決める。L槁弦堝阿隆兒,筏録を行う。ぬ槁弦堝阿髻屬っかけ」「行動」「結果」に分けて分析する。ゴ超やかかわり方を工夫する。Ν〜イ魴り返す。
・目標行動を決める際には、できるだけ具体的に表現することを心がける。「食事中に席を立たない」といった否定文ではなく、「椅子に座って食事をできる」といった肯定文で表現する。
・強化子にはシールやポイント、本人の好きな物や活動などがある。
・不適切な行動を減らそうとするとき、決して罰は使わない。
・行動の結果として起こっていること(機能)には以下のようなものがある。好きな感覚が得られる、スタッフの注目を得られる、嫌な活動から逃避する。例えば同じ「自分の頭をたたく」という行動にも、上記のどの機能が起こっているかによって、介入の仕方が違ってくる。


●グループワーク1「目標行動の設定の仕方」
・起こっている問題のなかから課題をいくつか抽出し、そのなかでどの課題に介入していくかを決める。そのうえで目標行動を記述し、強化子も決める。


●強度行動障害の看護(青山瑞穂)
・国立病院機構の役割として、民間病院・施設・在宅ではアプローチが困難なケースの医療がある。
・強度行動障害に対応する病棟が、現時点では全国で9施設、700床ある。
・強度行動障害を持つ人たちは、施設や精神科病院などに4000人以上入所している。
・主病名には(最)重度知的障害・自閉スペクトラム症・てんかん・脳性麻痺が多い。
・行動障害の内容には、粗暴行為・パニック・騒がしさ・多動・排泄の問題・食事の問題・睡眠の問題・物壊し・こだわり・他害行為・自傷行為などがある。
・看護目標には〃鮃管理、∋故防止、9堝鮎祿欧悗梁弍、の徹蕕悗了臆叩↓タ邑△梁砂鼎ある。
・健康管理においては、身体ケアや検査の実施が大切である。うまく訴えられない人が多く、また感染症などの身体疾患への脆弱性を持っている人が多い。
・事故防止においては特に仝輒瑤遼瓢漾↓異食の防止が重要である。異食の対象は無数にあり、特に衣類や食器(スプーン・箸・フォークも含む)に注意する必要がある。
・行動障害への対応としては、々堝偉屠,亡陲鼎統一された対応、構造化の視点からの対応、などがある。


●「強度行動障害の療育」(酒井英佑)
・「療養介護(重症心身障害病棟)」とは、医療機関であり、障害福祉サービス事業所でもある。医療と福祉の両面を兼ねている。
・療育介護の強みとして、療育を提供しながら医療を行えることがある。
・肥前精神医療センターで行われている療育の内容としては、以下のようなものがある。散歩・園芸・遠足・粗大運動・手芸・製作・貼り絵・ワーク・調理・スヌーズレン・アロマトリートメント・カラオケなど。
・参加人数の点からみると、集団療育(20名以上)、グループ療育(4〜8名)、個別療育(1〜2名)に分かれる。
・視覚化・構造化・スケジュールの明確化・強化子の活用などが大切である。


●「実践報告ー強度行動障害への対応ー」(黒木麻美)
・激しい行動障害を持つ利用者への対応の報告。
・視覚化や構造化を徹底している。ツールもここに応じて手作りしている。布をビリビリ破いてイライラを発散できる「ビリビリボックス」、排泄について理解するための冊子、言いたいことをカードを手にして伝えられる「コミュニケーションカード」などが紹介された。
・さまざまな支援を通して、行動障害が減っただけでなく、本人の笑顔や活動範囲が増えている。


●「グループワーク◆
・介入が上手くいかない時の、方向修正のやり方を検討した。


●「強度行動障害の地域移行」(井村裕司)
・退所先には、在宅、施設、精神科病院があるが、入院中に死亡する方もある。
・退所先の決定は時間がかかり、二転三転することも多い。
・家族支援が重要である。
・地域の施設との連携やバックアップも大切である。

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北海道への旅1 2017年9月22日(金)

  年に1度だけ1週間の夏期休暇があります。海外などへ遠出をするチャンスはこのときだけですので、毎年楽しみにしています。ただ子どもが3人になり、娘のしずくもまだ小さいので、海外へ行くのはあきらめることにしました。
   日本でどこに行きたいかを美紗さんと話してみると、「北海道に行ったことがないから行ってみたい」とのことでした。南国育ちの美紗さんは北日本に行ったことがほとんどなく、以前僕と行った山形県が最北なのでした。僕自身はいままでに北海道には2,3回行ったことがありますが、用事をしに行った感じであまり印象がありませんでした。楽しめる旅になるのかはわかりませんでしたが、目的地を北海道にしてみることにしました。
  行き先ですが、子どもたちが動物園を好きですので、旭川市の旭山動物園に行くことにしました。僕は知りませんでしたが、動物園の展示法などに変化を起こしたということを美紗さんが知っていました。また「広々とした丘陵地を見てみたい」というのが美紗さんの希望でしたので、旭川市の周辺にある美瑛町や富良野市にも行ってみることにしました。ガイドブックを見ても、人気のある地域のようです。飛行機の便は札幌空港が圧倒的に便利なのですが、幸いなことに旭川市に空港がありましたので、旭川空港を起点にすることにしました。
  ところが問題が1つ起きました。行き先を考えることにもたもたしている間に宿が埋まってしまっていたのです。富良野市の南にある勇払郡の「トマム」という施設に2泊しようと思っていたのですが、満室で1泊しか取れませんでした。富良野市や美瑛町の宿もすでに埋まっているところが多くありました。美紗さんがインターネットであれこれ検索して、なんとか宿を決めました。
  もうひとつの問題は子どもたちの世話をどうするかということです。飛行機に乗った際など、3人がそれぞれ寝たりすると、美紗さんと僕だけでは手が足りなくなるのです。たまたま美紗さんのご両親と話すことがありましたので、ご両親にいっしょに来ていただけないかお願いしてみました。美紗さんのお父さんは非常に真面目な方で、仕事一筋で旅行はほとんどされずに来ています。最近引退されたので、ちょうど旅に誘うチャンスだったのです。遠慮されるお父さんをなんとか説得して、いっしょに出かけられることになりました。
  旅に行くことが決まってからは、どこを回るかの計画を僕もいっしょうけんめい作りましたが、自分自身に強い動機がないせいか、どこか美紗さん任せで動いてしまったようなところがあります。おそらくいい旅になるだろうとは思っていましたが、どうなるかよくわからない面もありました。気持ちにちょっと中途半端さがありながらの旅のスタートになりました。

 

写真1 旭川空港に着いた。

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北海道への旅2 2017年9月22日(金)

  北海道への飛行機は羽田乗り継ぎで、それぞれ1時間半ぐらいの飛行時間でした。僕だけなら普通の移動ですが、子どもたちにとっては大変です。あやしたりおもちゃで遊んだりしながらなんとか時間を持たせました。
  初日の目的地は「旭川市 旭山動物園」(〒0788205北海道旭川市東旭川町倉沼、電話0166361104)です。通常の動物園と比べて動物の動きを生き生きと感じられることで名高いです。ところが運の悪いことに、僕が動物園にいる間に病院の案件をめぐって7回ぐらい長い電話で協議しないといけなくなりました。結局僕は電話でやり取りしたことしか記憶に残らなくなってしまいました。
  とはいえ旭山動物園の工夫は感じ取れました。まず驚いたのは値段の安さで、中学生以下は無料で、大人も820円です。職員さんは親切で、「ようこそ精神」が感じられました。動物の展示でおもしろいと思ったのは、「正解がない」というところです。「みんながガラス越しに動物の同じ姿を見る」というスタイルではなく、いろんな角度から動物が見れるようになっており、見る人それぞれが違った姿を見ていいような感じです。「それぞれの人が、それぞれのやり方で、動物の存在を感じ取ってほしい」というスタッフの意思を感じました。
  また動物と人間の折り合いの付け方を考えさせる展示が多かったのも印象的でした。絶滅に近づいていっている種類についての記載や、人間に害を及ぼす動物の記載もあります。漠然とした動物愛や、センチメンタルなかわいそうさなどをかもしだすことではなく、動物のリアルな姿を見てもらうことに展示が集中している感じです。なので自然と視点が広がっていきます。動物行動学や環境保護活動、人類の未来、動物園の歴史、動物多様性の意味など周辺領域への関心が生まれてくるのです。体験型で問題提起型の動物園だと思いました。
  翌日は旭川市の隣の美瑛町に行きました。美瑛町は丘の風景で名高いのですが、どこに行っていいのかよくわからないので、ガイドブックで見たお花畑「ぜるぶの丘」(〒0710200北海道上川郡美瑛町大三、電話0166923160)に行ってみました。広いお花畑は歩いて回るのは大変なので、バギーに乗って回る人が多いです。僕たちは一行7人なので乗りきれません。どうすればいいかをスタッフの方に尋ねると、親切な方で、トラクターのような乗り物で僕たちを乗せて回ってくださいました。
  この方に教わったことがいくつかあります。.薀戰鵐澄爾浪峇が終わったので、来年咲かせるために根元で切ってある。白樺の樹はやせた土地に生える。H瑛町は香川県と同じくらい広い。しかし人口は1万1千人ほど。と瑛町の丘の風景が有名になったのには、写真家の前田真三(1922〜1998)の仕事の影響が大きい。美瑛町のもともとある自然を、人々が働き生活しながら変えていった結果が、美しさになっているんだと思いました。

 

写真1〜2は「旭川市 旭山動物園」で撮った写真です。


写真1 クマのコーナーには、クマと背丈を比較できるような展示があった。

 

写真2 ペンギンの泳ぐ姿を間近に見ることができる。

 

写真3 「ぜるぶの丘」。お花畑の周りをバギーで走ることができる。

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北海道への旅3 2017年9月22日(金)

  次に同じ美瑛町にある「ファームズ千代田」(0710200北海道上川郡美瑛町春日台4221、電話0166927015)に寄りました。そもそもは昼食が目的だったのですが、レストランがツァー客で満員だったので、敷地内の「ふれあい牧場」に行きました。ふれあい牧場にはヤギや羊やうさぎなどがいて、エサをやったり抱いたりできるようになっています。娘のやすみは大喜びでした。広大な敷地で牛の放牧をしている牧場ですので、牛肉や乳製品を中心としたランチもすばらしかったです。
  泊まったのは「星野リゾート トマム」(北海道勇払郡占冠村中トマム、電話0167581111)という施設です。トマムというのはアイヌ語の地名(湿地や泥炭地の意味だそうです)であり、非常に印象的な音の響きですが、この巨大な山岳リゾートの名前でもあります。広大な林の中に突然高層タワーが現れたり、かなり大きな屋内プールがあったりします。僕たちは行けませんでしたが、気球に乗れるところがあったり、早朝に山頂から雲海を見れる場所があります。敷地内にアトラクションが点在していて、バスで移動しながら体験していく感じです。このようなテーマパーク型の宿泊施設が今後はもっと増えていくと思われます。現代人は「安全で快適な冒険」に飢えているのかもしれませんね。「安全」と「冒険」とはそもそも矛盾しているのですが…。 
  最後の夜に泊まったのが、美瑛町にある「ペンション木のうた」(〒0710221北海道上川郡美瑛町美田夕張、電話0166925592)です。ここは民宿に近い小規模な宿で、ご夫婦で運営されています。内装が洗練されているのでおとぎの国のような雰囲気があります。現実と夢とが織り合わさった感じです。
  絵本コーナーが非常に充実しています。やすみが『ヘンゼルとグレーテル』(作:グリム兄弟、絵:飯田正美、訳:天沼春樹、パロル舎、1997年)を読んでというので、朗読をしました。ヘンゼルとクレーテルは以前も読んだことがあったはずですが、残酷な児童虐待の話であることに驚いてしまいました。児童虐待の問題は大昔からあったのですね。
  帰る日の午前に最後に美瑛町の丘の風景を見て回りました。広大な丘が波打つように連なっていて、見渡す限り牧草地やトウモロコシ畑、お花畑などが広がっています。僕がイギリスの田舎で見たような、どこまでも続く荒れ地の丘陵地とは違いますが、同じような広々とした風景です。空がすぐそこにあるように近いです。空間の大きさに感動してしまいました。
  北海道の歴史はアイヌの人々への侵略という不幸な側面を持っています。今回の旅ではアイヌのことを学べずに残念でしたが、地名の響きのおもしろさから、少し触れられた気がしました(トマム、シムカップ村など)。アイヌの人々が大事にした自然が、形を変えて現代のリゾートになっているのでしょう。
  今回の北海道旅行は僕自身が熱く望んだものではありませんでした。ですが実際に行ってみると僕が好きな風景にたくさん出会えました。大きな「空白の空間」に、僕の心はなぜか喜びます。ふるさとに帰ったような感じがなぜかするのです。
  しかも今回は家族でそれを味わえました。もはや自分1人の旅ではなく、家族といっしょの旅なのです。そこに僕の成長の余地がある気がしました。「自分の個性を発揮しすぎない良さ」というものがあると思うのです。家族チームで冒険や探究をしていきましょう。また遊びやリラクゼーションも取り入れて進んでいければと思います。

 

写真1〜2は「ファームズ千代田」で撮った写真です。


写真1 やすみはヤギにエサをやることができた。

 

写真2 ウサギもいた。

 

写真3 トマムの部屋から撮った写真。広大な敷地にアトラクションが点在している。

 

写真4 富良野市の風景。このような牧草地があちこちにある。

 

写真5 「ファーム冨田」にて。花の色が鮮やかだ。

 

写真6〜9は「ペンション木のうた」で撮った写真です。


写真6 ウサギがいる。写真は宿のおかみさん。

 

写真7 おとぎ話のような建物。

 

写真8 絵本やおもちゃのコーナーがある。

 

写真9 静かにゆっくりと夕食をいただくことができる。

 

写真10 美瑛町の丘の風景。空が近くて雲に躍動感がある。

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2017年9月日録1

9/1(金) 先日産業医として管理職の方々に話す機会があった。現在ではハラスメント対策が進んでいていいことだが、一方で管理職としてどう部下を指導するかが問題になっている。極端なケースでは、正当な指導をした管理職が部下から「パワハラ」として訴えられてしまう。時代によって上司と部下の力関係は変わるのだろうが、難しい問題があることには変わりはない。さらにメンタルヘルス問題が関わってくると、事態はさらに複雑になる。今後は精神科スタッフが労働紛争に関わらないといけないことが増えると思われる。
9/3(日) 子どもたちを遊びに連れていく場所を探していたときに、美紗さんが「グリーンランド」(〒8640033熊本県荒尾市緑ケ丘、電話0968661112)のプールが3日まで開いていることを見つけた。もう夏も終わりでプールは無理と思っていたので、喜んで出かけた。人吉は熊本県の南の端で、グリーンランドのある荒尾は北の端なので、高速道路でも2時間以上かかる。距離は遠いが、かなり大規模なテーマパークで、何日もかけないと回りきれないほどの遊具やアトラクションがある。プールも種類がいくつもあり、波があったり、流れがあったりして退屈しない。子どもにとっておもしろい遊びは、運動や知性の発達を促進するようにできている。いい遊園地というのは、教育施設に近づいていくのかも知れない。
9/5(火) 湯前町の教育支援委員会に参加した。毎年思うことだが、湯前町は子ども支援がきめ細かい。会議の趣旨は特別支援教育が必要かどうかを話し合うことなのだが、会議とは別に本人・家族との面談を行い、子どもの学校生活全般の課題や家族の不安などにまで丁寧に対応している。一般的に大規模な市町村になるほど件数が多くなり、重症なケースしか面談に上がってこない傾向がある。湯前町は小規模な町(人口約4000人)だからこそできていることだが、すばらしいと思う。
9/6(水)ときどき子どもたちを連れて食事に行くのが、「相良藩  田(でん)」(8680022熊本県人吉市願成寺町404-1、電話0966246556)だ。田は古民家を利用した食事処で、建物の雰囲気だけでも非常に落ち着く。またメニューは御膳ぐらいなのだが、御膳の内容がいつも変化しており、和食のおいしさを堪能できるので飽きが来ない。一見派手さはないが、味わうごとに好きになっていくところが、ほんとうにいいお店の証なのだろう。

 

 

写真1〜3は熊本県荒尾市のテーマパーク「グリーンランド」に行った時の写真です。


写真1 プールは波のあるものや流れのあるものなどいくつも種類があった。

 


写真2 大きな立体迷路もある。突破のカギを見つけないと、何度も同じところをぐるぐる回ってしまう。

 


写真3 園内には幼児から大人までが楽しめるように多彩なアトラクションがある。


写真4〜6は人吉市にある食事処「相良藩  田(さがらはん  でん)」に行った時の写真です。


写真4 入口の様子。古民家を利用してある。

 

写真5 ガラスの窓がきれいだが、冬はすきま風が寒そうだ。

 


写真6 メニューはあまりなく御膳が中心だが、毎回内容が変化しており、飽きが来ない。

 


写真7 娘のしずくは4カ月になった。

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2017年9月日録2

9/7(木) 吉田病院の「子ども支援チーム」では毎月例会を開いている。今月は事例検討会だった。たまたま僕が担当しているケースだったのだが、自分のためにも参加できて大変良かった。普段見ている見方が一面にすぎないことがわかるし、全然違った視点を仲間に出してもらうことで、視野が広がったりホッと一息つけたりする。なによりスタッフ間の認識の共有がはかられるので、大きなズレが生じなくなる。自分たちの力の向上のためにも、事例検討会は必要だと思った。
  美紗さんも僕も以前から俳優のジャック・ブラックが好きだ。どう見ても普通の冴えないおじさんにしか見えないのに、スクリーンのなかでの輝きが感じられるから不思議だ。非常に楽しそうに演技しているように見える。そのジャック・ブラックが主演している映画『スクール・オブ・ロック』(リチャード・リンクレイター監督、2003年、アメリカ)のDVDを借りてみた。ジャック・ブラックは自分たちでロックバンドを結成して活動していると以前から聞いていたが、まさにロックをする人だからこそできた映画だ。製作陣の映画とロック音楽の両方への深い愛情を感じることができる。現代の傑作だと思う。
9/10(日) 子どもたちを連れて公園にピクニックに行くことにした。まだ行ったことがない場所を探して、「新八代駅がめさん公園」(8660815熊本県八代市長田町、電話0965334123)に行ってみることにした。新幹線の駅のすぐ目の前にある公園で、駅のホームから眺めたことはあるが、行ったことはなかった。着いてみると、広さも遊具の質も申し分ない公園で、親子連れが大勢来ていた。新しくできた公園なので、まだ樹が育っておらず、木陰が少ないのだけが難点だ。日差しが強かったのでグッタリしてしまったが、少ない木陰にシートを引いてお弁当を食べることができたのは良かった。公園では子どもたちが思い切り遊ぶことができる。公園が充実している地域はいい地域だと思う。
9/12(火) 子どもの相談や診察をする機会が増えている。小さい子どもほど問題が型にはまりにくいことが多く、いろんな場面で多角的に様子をみていくことが必要だ。また小さい子どもほど今後変化していく余地が大きいので、判断が難しくなる。職種の違う立場からいろんな意見を出し、そのうえで経過をみながら柔軟に対処できる能力が求められる。繊細さが問われる仕事で、僕にできるのか自信が持てないところだ。

 

 

写真8〜10は熊本県八代市にある公園「新八代駅がめさん公園」で撮った写真です。


写真8 大人向けの体操コーナーもある。

 

写真9 遊具はかなり大きく、デザイン的にも優れている。

 

写真10 木陰にシートを敷いてピクニックをした。

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2017年9月日録3

9/13(水) なぜかわからないが、子どもたちを叱るときにはカッとなってしまう。普通なら怒らないようなことでどなってしまったり、場合によってはたたいてしまうこともある。「子どものことになると冷静になれない」とよく聞くが、まさに自分がそうだ。
  お風呂に入っているとき、響が入浴剤を触った手で目をこすり、目が痛くなって泣き出した。シャワーで目を洗い流そうとしたが、響がギャアギャア泣いて落ちつかない。「静かにしなさい!」とどなってしまった。結局美紗さんが目薬をさして、響は落ち着いた。僕自身も落ち着いてから、やすみに「パパはやすみちゃんたちのことになるとカッとしてしまう」と言うと、「優しく怒らないと誰も遊んでくれないよ」とやすみに諭された。まだやすみは4歳だが、すでに僕よりも冷静に見ているところがあるんだと気づいた。僕がやすみにできることとは、自分の間違う姿を見てもらうことなのだろう。
9/19(火) 僕は球磨地方の5つの市町村の教育支援委員会に参加している。これは通常学級か特別支援学級かどちらで学んだ方が子どものためになるのかを審議する場なのだが、それだけでなく困難事例への支援方針にも少しだが触れることができる。吉田病院への入院事例をみても、ほとんどが「本人の問題+家族の課題」というケースであり、本人だけでなく家族全体をみていく視点が大事だと痛感する。これからは学校の先生方といっしょに事例検討形式で、多面的に支援策を考えていく練習をすることが必要だと思う。
9/20(水) 美紗さんに用事がある間、響としずくを連れて山江村の絵本図書館「やまえ絵本の森」に出かけた。ここで偶然手にしたのが、『円周率の謎を追う  江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』(作家:鳴海風、画家:伊野孝行、2016年、くもん出版)だ。関孝和(1642〜1708)の数学が大変深いものであることは以前から聞いていたが、この本を読むとそれが「円周率を求めるにはどうすればいいのか?」という一つの多いな問題を徹底的に考え抜いた成果なのだとわかる。才能のある人は困難にぶつかってこそ創造的になれる。課題が人を育てる。またあとがきを描かれている上野健爾さんは僕が高校生の時に数学セミナーで教わった方だったので、大変うれしかった。

 


写真11 しずくが熱を出した。

 

写真12〜13は山江村にある「やまえ絵本の森」で撮った写真です。


写真12 畳のスペースもあり、子どもが寝転ぶことができる。

 

写真13 『円周率の謎を追う  江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』(作家:鳴海風、画家:伊野孝行、2016年、くもん出版)。あとがきを書かれているのが、僕が高校時代に教えを受けた上野健爾さんで非常にうれしかった。

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神田橋條治さんの冊子を読む 2017年8月5日(土)

  神田橋條治さんは精神科医です。僕が精神科医療の実務を教わった先生なのですが、精神科の研究や著作だけでなく、教え上手としても名高いです。神田橋さんが事例検討会の前にすこし話す小話や、聞き手の質問への回答が、ファンの手によってまとめられて継続的に出版されています。それが冊子『治療のこころ』シリーズです(1〜22巻、発行:花クリニック神田橋研究会)。
  実は僕が神田橋さんを知ったのも、この『治療のこころ』シリーズを読んだのが最初です。精神疾患を持つ友人が集めていて、僕に貸してくれたのです。専門用語が多くてわからない部分が多かったのですが、その一方で精神科分野にとらわれない普遍的な真実が語られていて、光が射してくるようでした。僕の探求にも先が見えていなかったのですが、「見晴らしのよい場所」を夢見させてくれる力があったのです。僕にとっては思い出深い本です。
  ただ最近は神田橋さんが神格化され過ぎていて、『治療のこころ』もあまりおもしろくないと感じてきました。僕自身が神田橋さんの素晴らしさと感じてきたものは「神のように全てを知り尽くして、整然と説明する」「他の人がまねできない超人的な治療をする」ということではないのです。むしろ「全然答えのない状況で、本質を突いた問いを発する直観性」「珍案・奇案・馬鹿げた案も含めて、さまざまな仮説を提出できる生産性」「失敗を恐れず、間違いながら探求していく大胆さ」といった「知的な手探りの力」こそが神田橋さんの魅力だと思います。すでにできあがった論を話すだけの神田橋さんには「知のきらめき」を感じられないのでした。
  そんなところに神田橋さんが新しい『治療のこころ 巻二十二 問いに答える十』(花クリニック神田橋研究会発行、2017年)を送ってくださいました。パッと開いてやはり神秘的な要素を感じたものですから、長い間食指が動きませんでした。それでも大事な先生ですから、読んでみました。
  講演の際に神田橋さんが参加者からの質問を読み上げて回答していく様子が、そのまま記録されています。前半は刺激に乏しい質問が多く、神田橋さんも神秘的で超人的な論を展開するにとどまっています。おもしろくなってくるのは後半で、治療の本質にかかわる質問が出てきます。そして難しい質問が出るほど神田橋さんの頭は冴え、精神科治療を根本から説き起こすことになるのです。
  神田橋さんの語りというのは要約が難しいです。内容よりも語り口そのもののおもしろさが大きいからでしょうし、科学的と言うよりは文学的な美しさがあるからでしょう。結論と言うよりも言葉の流れそのものにおもしろさがあるのです。なので「読んで要点を頭に入れる読書」というよりも、「読みながら自分自身の心が変化していく読書」と言えるでしょう。
  著作と講演を通じて、何十年にもわたって、大勢の支援職を育ててこられたのはまさに偉業です。神田橋さんの本質は治療者よりも教育者にあるのかもしれません。異論を唱えたいところも多々ありますが、やっぱりすばらしい先生を持てたことをうれしく思いました。そして僕も自分のフィールドで、先生のように自由な発想力を持ちながら、探求していきたいと思いました。

 

写真1 『治療のこころ 巻二十二』の写真。

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上球磨認知症初期集中支援チームで鹿児島県庁に話しに行く 2017年8月10日(木)

  「認知症初期集中支援チーム」というチームが各市町村にできつつあり、僕も参加していることは以前から書いてきました。このチームは虐待やごみ屋敷、危険運転など認知症に関連した困難事例に対して多職種アプローチを行うためにつくられたものです。社会福祉士+保健師+医師が必須メンバーで、そこに福祉課の方や地域包括支援センターの方、作業療法士などが加わってチームを作ります。僕は「上球磨(かみくま)」と「人吉市(ひとよしし)」のチームを担当しています。
  上球磨地域(水上村+湯前町+多良木町)のチームは設立も球磨地方でいちばん早く、僕にとっても初めて参加したチームですので思い入れがあります。また意欲と行動力を持った仲間ばかりなので、議論が非常に発展し、自分にとっても勉強になります。上球磨チームの中核となっている社会福祉士の山浦さんとよく話すのですが、地域には支援がうまく作動していない困難事例がたくさんあります。認知症に限らず、貧困・養育困難・DV・虐待・精神疾患・浪費など複合的な課題がからみあったケースばかりです。そういった困難事例に対する多職種アプローチをしていけるようにみんなでスキルアップしていくこと。そこが上球磨チームの究極の目標です。いまは認知症に関連したケースの支援をしていますが、いずれは総合的な困難事例対応チームが作れるようになっていたいのです。
  上球磨チームは設立が早かったこともあり、いままでにも他地域からの見学を受け入れたり、研修に出かけたりしています。今年2017年の2月には、鹿児島県の薩摩川内市に招いていただきました。チームの中核メンバーで話すはじめての機会だったのですが、非常にうまくいって喜んでいただけましたし、また自分たちにとっても実り多い研修旅行になりました。
  その際に鹿児島県庁の方が聞きに来てくださっていたのですが、今度は鹿児島県庁で話してくださいとお誘いをいただきました。「地域支援事業充実・強化支援事業」という会議があり、認知症初期集中支援チームを取り上げてくださるのだそうです。予算の関係もあり、1,2人での発表をとのご依頼だったのですが、僕自身はチーム員の多くで行きたいという思いがありました。多職種で意見を出し合って協働していくところこそが初期集中支援チームの核心だと思うからです。山浦さんに相談し、有志で発表することになりました。最終的に発表者は僕を入れて5人、研修旅行の参加者は8人になりました。自発的にこれだけの人たちが集まるのですから、意欲的な人ばかりだというのも信じていただけると思います。内容の打ち合わせをしながら、当日を迎えました。
  鹿児島市に入ってから渋滞に巻き込まれてしまい、時間に間に合うかが心配でした。ですがなんとかぎりぎりに着きました。昼食をしながら県庁の方と打ち合わせをしたのですが、話しやすい方ばかりで意外でした。僕たちの住んでいる球磨地方にも初期集中支援チームがまだ立ち上がっていない町村がありますが、鹿児島県にもたくさんあるそうです。そういった地域の立ち上げのサポートになれば、というのが主催者の意図でした。講演をするだけでなくて、グループワークに参加したり、質問に答えたりする時間もあるそうですので、できるだけこれから立ち上げるところにエールを送りたいと思いました。
  僕たちの講演の時間になりました。最初は湯前町の福祉課の方で、行政の立場からチーム立ち上げへの経緯を話しました。行政の方がチーム員会議に参加していることがとても大切なことで、支援者と事務方の風通しを良くする意味合いがあります。事務系の方が支援に大切な視点を提示したり、核心を突く質問をしたりすることも多いのです。
  次に山浦さんと堂本さんという2人の社会福祉士から、困難事例の支援の実際をケースに即して話してもらいました。そもそも困難事例は「普通に支援しようとしてもうまくいかないケース」ですので、支援には時間がかかったり、うまくいかなかったりします。偶然も利用しながらどんなふうに事態を切り開いていったかが伝わる迫力ある内容でした。
  次に保健師のNさんからチームの課題や今後の展望について話してもらいました。「独居者への対応」「内服管理ができないケースへの対応」「家族支援がうまくいかないケースへの対応」「マンパワー不足」「もっとタイムリーな訪問ができないか」などの課題を提示し、それらの克服や対応できるケースの範囲を広げていくことなどが将来の展望であることを話してくれました。思慮深く掘り下げて考えるタイプのNさんらしい発表でした。
  ここまで終わって僕の持ち時間は30分あるはずでしたが、すでに残り15分しかありませんでした。時間に追われて早口で要点のみ話す形になってしまいましたが、初期集中支援チームの活動全般について具体例を交えながら話すことができました。
  ここからはグループワークでしたが、まだチームが立ち上がっていない市町村の方からいろいろな質問が出ました。僕に聞き取れた範囲では以下のようなものです。「予算配分や人員配置はどうするか?」。「サポート医への報酬は?」。「サポート医の居宅訪問は可能か?」。「ケース支援の終結はどのタイミングでするのか?」。「飲み会などの交流はチーム員でしているか?」。「立ち上げに向けて、まずはどこから手を付けたらいいのか?」。「情報収集のシートは?」。「発達症がベースにある認知症のケースへの対応について」。「危険運転のケースへの対応」。「包括支援センター職員が兼務する場合の業務分担」。
  いずれも大事な質問ですね。ですが僕が何よりも言いたかったのは、「まずは会議を始めてください」ということです。情報の整理に使うシートにしても、認知機能の評価尺度にしても、ケースをこなしながら徐々にヴァージョンアップしていけばいいのです。それよりも何の準備もなくても、地域でどんな困ったケースがあるかということを話すだけでもいいから始めることの方が重要と思います。極論かもしれませんが…。
  上球磨チームでは困難事例への支援がだいぶ進んで、「ケースが少ないなぁ」と感じるくらいの状態になっています。最初は地域にたまっていた事例がどんどん上がってくるのですが、一段落する時期がやがてきます。ちょっと停滞感も感じていたのでした。そんなときに研修に出かけて自分たちの活動について話すと、自分たちの原点がみえてきます。それが「認知症に限らない総合対応力の強化」という点です。また過疎化に直面している地域にあって、「医療・保健・福祉の視点からの生き生きした地域づくりへの貢献」というのも大切な目標だと思います。
  これからも上球磨チームでは、認知症を切り口にいろんなケース支援を行いながら、自分たちが目指すものをとらえなおしていきたいと思います。優秀な仲間たちと仕事したり考えたりできることは貴重です。自分が磨かれるような場を持てている幸運を忘れないようにしながら、進んでいきたいです。

 

写真1 チームで出かけた鹿児島県庁の様子。

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