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司法面接研修に参加する1 2017年3月13日(月)

  「司法面接」という言葉はおそらく多くの方にとって聞き慣れないものではないかと思います。僕にとってもそうでした。大まかに言えば、「性虐待などを受けている可能性のある子どもに対して行われる、司法判断に活用できるような正確な情報聴取のための面接。正確性の向上と子どもの負担軽減のためにさまざまな工夫がされている」といった意味ではないかと思います。従来は児童相談所・警察・検察などで何回も何回も話を聞かれることで、話の内容が変化してしまったり、トラウマ症状などの二次被害が出たりすることが多かったそうですが、いまは多職種協同で1回で面接を済ませるやり方が主流になっています。
  この司法面接という言葉を僕が初めて聞いたのは、児童青年精神医学会の性虐待についてのシンポジウムに参加したときでした。4人の講師のうちの1人の仲真紀子さん(北海道大学大学院 文学研究科教授)が司法面接について話されたのです。話の内容もすばらしかったですが、なによりも仲さんの明るくて純真な人柄が非常に印象に残りました。性虐待のケースは深刻なものが多く、支援システムはまだ十分には整っていません。支援者にもどこか無力感や疲れが見えました。それだけに一層、仲さんの天真爛漫といっていいような優しい明るさが際立ったのです。
  学会で聞いた内容を吉田病院の子ども支援チームの例会で話したら、同僚が質問をしてくれました。「重くて話しづらい話題を子どもから引き出すために、どんな工夫をされているのだろう?」という疑問です。僕はとりあえず仲さんにメールを送ってみました。そうしたらすぐに返事をくださいました。送った僕もビックリでした。
  メールをやり取りするうちに、宮崎市で司法面接研修をしますよ、ということを教えていただけました。それで僕も参加させていただくことにしたのです。僕が働いているのは熊本県なので、県境をまたぐ形になりますが、主催される宮崎県庁こども家庭課の方のご理解で参加できることになりました。
  人吉市から宮崎市までは高速バスで2時間ほどかかりますので、前日の夜から出かけました。会場は「宮崎県中央福祉こどもセンター」です。これは中央児童相談所のある建物です。僕は児童相談所にも1ヶ所しか行ったことがありませんので、楽しみでした。
  研修は2日間です。意外だったのは医療職は僕とカウンセラーの方の2人しかいなかったことです。かわりに多かったのは警察・家庭裁判所・検察といった司法関係の方と、児童相談所や児童養護施設といった福祉関係の方たちでした。どちらも僕が普段ほとんど話したことがない人たちで、しかも子どもの支援をしていくうえで連携しないといけない立場の人たちですから、とてもうれしかったです。
  研修は2日間とも実習が中心で、実習の準備のために基礎的な講義を受ける感じでした。仲さんのお話は非常にわかりやすく、要点を絞りこんだものでした。全国を飛び回って指導に明け暮れておられるそうですが、さまざまな質問を受けながら、内容を練り上げてこられたのでしょう。非常に腰が低くてしかも話しやすい雰囲気を持っておられるので、参加する僕たちも自由に質問がしやすかったです。
  初日に学んだことのポイントを箇条書きにしてみます。
・「子どもから性虐待の訴えがあったが、調査の結果、被疑者は無実だった」というケースが過去に多発した。
・子どもは大人と比べて相手の言葉に影響されやすい。聞き取りをする大人の考えに子どもが誘導されてしまうのが、その原因であった。
・また何度も何度も聞き取りをされるうちに、記憶が変容してしまうのも、問題となった。子どもの「供述に信憑性がない」と判断されて、当事者すべてに負担がかかったケースも出てきた。
・さらに聞き取りを繰り返されるうちに、子ども自身が精神状態の悪化をきたすケースも多くなった。
・そのような背景のもとで、〇碧“獣任忙箸┐襪茲Δ弊騎寮をもった証言を引き出せる面接法、∋劼匹發良蘆瓦最小限になる面接法、が求められるようになった。
・いくつもの面接法の手順書(プロトコル)があるが、仲さんが指導に使っているのは「NICHDプロトコル」である。非常に具体的に話す文言が規定されているのが特徴である。
・子どもにいきなり話すように言っても話せない。NICHDプロトコルの前半部分は子どもに事実だけを話してもらうためのリハーサルや準備運動といった内容である。
・なるべくこちらが口をはさまずに子どもに話してもらうための工夫が大切である。「〜さんがたたいたの?」といった“閉じた質問”(内容が限定的で、「はい」か「いいえ」などで答える質問)はできるだけ使わずに、「〜について始めから終わりまで聞かせてください」「〜について詳しく教えてください」といった“開かれた質問”(自由に話して答える質問)を多用する。そのことでより正確性が高まり、また質問ばかりをあびせ続ける「尋問の雰囲気」が減る。子どもの自由報告がもっとも大切である。
・「Aの出来事とBの出来事の間に何があったか教えてください」、「そのあとに何がありましたか?」といった前後を問う質問も役に立つ。
・基本的な出来事の流れを聞き取れたら、もう少しポイントをしぼって尋ねる。「〜さんについて教えてください」、「〜はどんな物でしたか?」といったある程度内容を限定した質問をする。
・休憩を取り、別室でモニターを見ている人たち(バックスタッフ)のところに行く。もっと聞いた方がいいことなどをアドヴァイスしてもらう。
・最後に話したりないことがないかなどを確認して、子どもをねぎらって面接を終える。
・司法面接のDVDが裁判の証拠として採用されるようになってきている。そうすると子どもは法廷に行かなくてもよくなる。
・子どもの証言だけで立件するのは難しいことも多く、補助証拠を集めるのも大切である。
・司法関係者と福祉関係者の合同の研修や訓練も増えている。
・司法面接を行ううえで、児童相談所・警察・検察のチームワークが必要である。さらに教育・保健・医療などの関係者ともネットワークが広がっていくことが望ましい。

  その他の教えてもらったことは以下の通りです。
・子どもの支援の基盤になる法律は児童福祉法である。特に児童相談所が被虐待児童を施設などに一時保護することを定めている28条が重要である。
・虐待の疑いがあるケースに対して、裁判所の許可状を得たうえでなら司法警察官が自宅を調査することが可能である。これを「臨検(りんけん)」と言う。児童相談所の職員と警察官が合同で行うことが多い。
・家庭裁判所は大きく分けて[ズГ篩蠡海覆匹亡悗垢覯板軻發諒響茵焚隼事件)と∈瓩鯣箸靴燭衄箸垢それのある子どもの事件(少年事件)の2つに関わる。調停や審判を通して紛争が解決することを目指す。 
・児童養護施設の職員は子どもたちへの対応法の基礎として、コモンセンスペアレンティング(CSP)を学ぶことが多い。これは虐待をしてしまった親が子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニングを応用したものである。

 

写真1 司法面接研修の会場である宮崎県中央福祉こどもセンター。

 

写真2 会場の様子。グループワークとロールプレイが中心だった。

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司法面接研修に参加する2 2017年3月13日(月)

  司法面接研修の2日目はさらに実践的でした。1つの面接の手順を学び、ロールプレイとその録画画像の検討が4回あり、その合間に講義がはさまっている感じです。講義だけでは学んだことは身に付かず、グループワークや実習が大切だと聞いたことがありますが、司法面接研修ではそれが徹底していました。仲さんは全国の多数の都道府県で何年間も講義されてきていますので、そのなかで改善を重ねてこられたのでしょう。
  参加者4人が1グループになり、実習を繰り返していくんですが、次第にグループのメンバーどうしも仲がよくなっていきます。僕のグループは児童養護施設の職員、児童相談所の心理士、警察の職員という構成でした。それぞれが違う立場で仕事をしていることもあり、物事の見方が違っていて興味深かったです。グループの構成メンバーが多様になるように仲さんは配置を工夫されていますが、多職種連携の土台となる相互の敬意を作るうえで大事な経験だと思いました。
  2日目に学んだポイントは以下の通りです。
・性虐待を立証するにはかなり詳細な聞き取りが求められる。また時間や場所や出来事を裏付けられる補助証拠が必要になる。
・できるだけ質問者が自由に報告する形の面接にする。これはウソの予防にも役立つ。
・性的な話題が出たときに聞き手がひるんでしまうと子どもが話しづらくなってしまうため、どんな話題にでも冷静に対応できる練習が必要である。
・実際には面接の場面で子どもが話してくれなかったり、「わかんない」を連発することもよくあるので、前もって「子どもが話してくれない場合」を想定して面接の計画を練る必要がある。尋ねる質問についても、「この質問でダメならこっちを」といった具合に具体的に考えておくことが大切。
・司法面接の前半の「質問に答える練習」の段階であまりにもうまく進まない場合には、面接をいったん中止して、もう少し時を待つ手もある。
・面接者は子どもに話してもらうことに集中しているので、別室でモニターを見ているバックスタッフが「面接の進め方」や「聞き足りないこと」などをアドヴァイスする。

  研修の最後の方になると、仲さんからの問いかけに対して参加者が答えていく形のやり取りが多くなりました。わずか2日で講師との対話型の勉強ができるようになったのはすごいことです。参加者にも意欲的な人が多く、チームワークも良かったです。とても楽しくて仲さん自身も研修を終わりたくないように感じておられる気がしました。僕自身も寂しく思いました。
  僕個人にとっての発見は以下の点です。
・医療の面接と司法の面接では、同じ「面接」ではあっても目的が違い、臨む姿勢や進め方も違う。
・僕の理解では、司法的な面接では以下の点が重視されている。「事実の確認が第一の目的であり、継続的な関係を作るのが目的ではない」「信頼関係や暖かみは必要だけど、基本的には適切な距離感を保って淡々と進める」「たとえ相手に負担をかける可能性があっても、どうしても必要な場合には事実の確認をする」「具体的な日時・場所・出来事を特定できるような情報を集める」「人間の記憶は確実ではないので、面接の結果だけでなくて補助証拠をたくさん集める」。
・精神科医療の面接で重視されている点は、僕の理解では以下の通りだ。「病気の特定や治療方針の決定に役立つ情報を集めるのが一番基本的な目的」「起こったことや感じていることを率直に話してもらえないと診療が進まないので、率直に話してもらえるような信頼関係作りが重要である」「治療が思うように進まず長期間に及ぶこともよくあるので、協力関係を継続的に保つことが求められる」「相手との会話の内容だけでなくて、相手の会話の進め方や話しぶりにも注目する必要がある」「事実の確認は主要な目的ではない」「面接そのものが治療の手段でもあり、症状の軽減に役立つことを目指している」。
・精神科的な面接の質を高めるためにも、司法的な面接の練習は大切である。自分の専門とは異なる種類の面接を学ぶなかで、普段の仕事を見直すことができる。面接技法の幅の広さを知るためにも、いろいろな面接法を学ぶことが大切である。
・今後も司法関係者とのネットワーク作りに努力していきたい。

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2017年3月日録1

3/1(水) やすみと響は鹿児島市内の動物園に行きたがっていたが、天気が雨だった。それで屋内で遊べる「鹿児島市立科学館」(〒8900063鹿児島県鹿児島市鴨池2丁目31-18、電話0992508511、ウェブページhttp://k-kb.or.jp/kagaku/)に行ってみることにした。僕も以前から行きたかった場所だ。
   内容がやすみたちには難しいかと思っていたが、幼児が遊べるような体験型の展示が中心だった。ジャングルジムのような遊具もあるし、地震体験や強風体験もある。複雑な振り子もあるし、真空や磁力の実験もある。「遊びながら科学に興味を持ってもらおう」という意図がよく伝わる内容だった。普段はあまり意識しないが、この世界には不思議な現象がたくさんあるんだなぁと感じた。
3/2(木) 人吉市の一般市民向けにうつ病の支援の話をさせていただいた。一般の方も来られていたが、僕の知っている支援者の方もいた。就労支援に取り組んでいる人もいたし、子育てサークルをしている人もいた。多様な聞き手を相手に話せるのがありがたかった。
  内容としてはどちらかというとうつ病支援の難しさをお話した。自殺の危険があることと、他の精神疾患と合併してあらわれることが多いことを強調した。うつ病の治療には決定打というほどのものはない。なので薬もカウンセリングも環境調整も運動も、いろいろ組み合わせて立ち向かっていかないと手強い相手だということを伝えたかった。
  専門職でない一般の方たちに話すのには、専門用語が使えない難しさがある。でも一方で自分が取り組んでいることを日常語で確認しなおすきっかけにもなる。精神科医療には物理学などのようなはっきりした原理がないので、どうしても論理的には説明しにくい部分がある。でもそのはっきりしないところが精神科の魅力でもあって、あらゆる学問知識や体験的直感などを総動員して、総体的に考えていくおもしろさがある。医療のなかでも、もっとも人文科学的な知識が役立つ分野ではないかと思う。
3/4(土) 吉田病院の家族会で「地域の支援ネットワークの大切さ」というタイトルで話させていただいた。話しながら気付いたのだが、僕はずっと支援ネットワーク作りを目指して模索してきた気がする。ネットワーク作りは短期間で成果が出るものではなく、形が見えてくるのに少なくとも10年間ぐらいはかかる。いろんなところで知り合った支援仲間どうしがつながりあって、大きな織り物のようなつながりの集合体ができつつあるのを最近は感じる。今後どう展開していくのかが楽しみだ。 一般市民に近い人から専門性の高い人までが参加して、多段階での支援を行っていければ、困難なケースでも状況を改善していけると思う。

 

写真1〜3は鹿児島県鹿児島市にある「いおワールドかごしま水族館」で撮った写真です。やすみは鹿児島市に行く度に行きたがります。


写真1 ジンベエザメはゆ〜らりと泳ぐ。

 

写真2 響は魚つり遊びをしたがった。磁石で釣り上げる。

 

写真3 水族館の前の広場でボール遊びをした。

 

写真4〜6は鹿児島県鹿児島市にある「鹿児島市立科学館」で撮った写真です。


写真4 外観。市立図書館と一体になっている。

 

写真5 入り口を入ると、「鳥の目で世界を眺めるような画像」が床に映っていた。地表近くに視点が来たり、宇宙にまで上ったりする。

 

写真6 工作体験のコーナーもあった。やすみは「プラ板」、響(の代わりに僕)は「割れないシャボン玉」を作った。

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2017年3月日録2

3/5(日) 毎月届く『精神神経学雑誌』の2017年2月号が届いた。このなかにあった講演録「医療プロフェッショナリズム――精神医学の導きの糸として――」(宮田靖志)が非常におもしろかった。「プロフェッショナリズム」とは聞き慣れない言葉だが、意味はそれほど難しくなく、「真に優れた専門職の特性」といったことだ。なので「医療プロフェッショナリズム」とは、医師としてのあるべき姿や理想像を指していることになる。
  この講演録では医師の持つべき資質が掘り下げて考察されている。僕にとって興味深かったのは、以下の点が強調されていることだ。
倫理的・法的な側面から医療を考察できること。
社会のニーズに応えること。
混乱してごちゃごちゃした状況のなかを、小さな考察を積み重ねながら切り開いていくことができること(省察的実践家であること)。
自己変容をもたらすような学びの場があること。 
  言われてみれば「たしかにそうだ!」と思うが、いままでは思い至らなかったことばかりだ。特にスッキリしたわかりやすい仕事でなく、迷ったり揺れたりしながら考えていくことが重視されていることに感銘を受けた。日本語の「医師」という言葉の語感にとらわれずに、支援職としての医師について考え直してみる必要がありそうだ。
3/7(火) 相良村にある相良南小でストレス対処の授業をさせていただいた。いままでは基本的には中学校までしか授業をしてこなかったので、小学校でうまくいくのか心配だった。やってみた感じから言うと、小学6年生の子どもたちの理解力はかなり高いが、理屈っぽい話には食い付きが悪いと思った。要点をさらに整理して日常語でまとめることと、実例を多くすることが必要だと思った。子どもたちに語りかけるには、メッセージを絞りこまないとダメなのだろう。
3/8(水) 響を公園に連れていくついでに、美紗さんとお昼ごはんを食べに出かけた。1軒行ったがお休みで、久しぶりにカフェレストラン「Farmer's Cafe Sakuri 咲莉(さくり)」(〒8680302熊本県球磨郡錦町一武4018、電話0966380390)に行ってみることにした。初めて来た2年前にはずいぶん迷ったが、携帯のマップを使うと比較的スムースに着けた。里山の農家の離れがレストランになっているような感じのお店だ。
  店内にはレンガで組み上げた大きなビザ釜がある。素材の野菜も多くは自家製とのことで、それぞれに味わいがある。料理というのはある意味では誰にでもできることなので、そのなかで個性を打ち出すことは大変だと思う。店主の方の生き方と一体になっているからこそ、深みを感じるのだと思った。
3/12(日) 「高齢者てんかんについて――認知症との鑑別および合併」(松浦雅人)という講演の録画画像を見ることができた。てんかんの専門医である松浦さんが豊富な症例を提示しながら高齢者てんかんの診療ポイントを解説してくださっており、大変役立った。要点は以下の通りだ。
,討鵑んの発症率は小児期と老年期で高い。
高齢者のてんかんはほとんどが複雑部分発作とそれに続く二次性全般化である。
F鷦\全般化のケースは治療につながりやすいが、複雑部分発作のみのケースではてんかんと気づかれるまでに数年を要することも多い。
で知症とてんかんの合併も多い。
ス海討鵑ん薬は転倒につながりやすいので注意が必要。
高齢者は他にも病気があることが多く、多数の薬剤を飲んでいることも多い。薬剤相互作用の少ない抗てんかん薬を使うのが望ましい。

 

写真7 『精神神経学雑誌』の2017年2月号。このなかにあった講演録「医療プロフェッショナリズム――精神医学の導きの糸として――」(宮田靖志)はインスピレーションに満ちている。

 

写真8〜9は錦町にあるカフェレストラン「Farmer's Cafe Sakuri 咲莉(さくり)」で撮った写真です。


写真8 まわりは一面の田畑といった場所にある。

 

写真9 写真には写っていないが、レンガ造りの大きなピザ窯が店内にある。ピザの生地にモチモチ感がある。

 

写真10 御船町にある「イオンモール熊本」のキッズスペースにて。震災のダメージがかなり大きくて、やっと近々リニューアルオープンできるという状態だった。建物の損壊のためと思うが、通路にもお店が出ていた。それがかえって昔の市場のような感じで賑やかでよかった。

 

写真11 友人のジミーくん宅にて。薪ストーブは大量の薪を必要とするので、薪割りが大変そうだ。

 

写真12 多良木町にある公園「ファミリーパーク宇宙ランド」にて。天気がよかったので、50人ほどの子どもと大人で満員状態だった。

 

写真13 人吉市の村山公園でピクニックをした。

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2017年3月日録3


3/19(日) 熊本県八代市で「発達障害かかりつけ医対応力向上研修」が開かれた。僕は主催者の一員として参加した。講義だけでなくグループワーク中心の内容で、集まった小児科や内科のかかりつけ医の方たちも喜ばれていた。発達症の問題で困っている子どもや保護者は多く、医療機関の数が足りていない状況だ。少しでも多くの医療者に関わっていただき、支援システムが整備されていけばいいと思う。
  八代市に行ったので、家族で八代市の「日奈久(ひなぐ)」に滞在した。温泉地として古来名高いところだ。泊まったのは「日奈久温泉  金波楼(きんぱろう)」(〒8695134熊本県八代市日奈久上西町336-3、電話0965380611、ウェブページ)という老舗の旅館で、木造の建物がそのまま文化財になっている。別の時代にタイムスリップした感じだ。「大人はおもしろいけど、子どもたちはどうだろう?」と思っていたが、非日常の世界にやすみは大はしゃぎだった。たまたまこの日の夜には近くの公園で花火が上がり、それを見てまたやすみが歓声を上げていた。 
3/20(月) 祝日だったので、子どもたちを「熊本市子ども文化会館」 (〒8600004熊本県熊本市中央区新町1丁目3-11、電話0963230505、ウェブページ)に連れて行った。初めていく場所だったが、まず利用者が非常に多いことに驚いた。特殊な機械があるわけではなくて一般的な遊具がある施設なのだが、とても親切にできている。食事をとれる場所もあるし、売店もあるし、プラ板や工作なども自由にできる。そしてデザインにも工夫がこらされている。子どものための施設はたくさんあると思うが、結局は「温かみのある場所」が利用者の評価を受けるのだと思う。子どもたちがなかなか帰りたがらないので、困っている保護者の方も多かったが…(笑)。
3/22(水) 「人吉市ボランティア連絡協議会 全体研修交流会」で話させていただいた。ヴォランティア活動をしている人たちにお話しするのが、僕にとっては一番楽しい講演だ。いままでの経験上、「話す前から会場が盛り上がっている」「『自分に何かできないか?』という視点で話を聞いてくださる」「気さくで親しみやすい人が多い」ことが多かったが、この日もそうでうれしかった。医療機関とヴォランティアの連携は僕自身も取り組んでいるが、なかなか進んでいない。でも社会福祉協議会などの公的機関がバックアップしてくださる形でなら、可能なのではないかと思う。
息子の響が車のなかで寝てしまったので、ドライブがてら鹿児島県の伊佐市に出かけた。県はまたぐが人吉市の隣なため、1時間ほどで行ける。ネットで検索して出てきたカフェ「珈琲Gallery 馬舎(ましゃ)」(8952524鹿児島県伊佐市大口堂崎146-5、電話0995225988)に行ってみた。驚いたのは、水上村のお休みどころとほとんど同じ作りの建物だったことだ。さらに家具や調度品までがお休みどころに近かった。故・上島聖好さんに近いセンスを持った人もいるのだと不思議だった。「ゴミは宝」が上島さんのコンセプトの1つだったが、馬舎を運営する女性の方も、物を大事にされる方に見えた。
   吉田病院の発達症勉強会で、中学校教員の村上さんに話していただいた。タイトルは「学校現場における不登校支援」だったので、具体的な不登校支援の話が中心かと思っていた。ところが村上さんが強調されたのは、主に問題の背景にある問題群だった。
ヾ靄榲な問題意識 : いろいろな対策を行っているのに、不登校児の数は増えている。特に中学生で増えている。それはなぜか?
∨‥な側面 : 教育の根拠となる法とは?学校に関連する訴訟の状況。就学義務を法制度的にどうとらえるか?就学義務を厳格化する形での不登校問題へのアプローチ。就学義務をよりゆるやかにとらえる形での不登校問題へのアプローチ。
心理学的な側面 : 教員の仕事が分業化されておらず担任がほとんどのことをする形なので、生徒の逃げ場がなく、不登校に至りやすい構造がある。心理テストを学級経営に応用するアプローチ(心理テスト「Q−U」など)。心理検査や知能検査を不登校支援に応用する。
っ楼茲了抉腑優奪肇錙璽 : 「特別支援教育連携協議会」の場などを活用して、保育園から高校までの支援の連続性を作る。地域にどんな支援機関があり、どこに相談すればいいのかのコンサルテーション・マップを作る。
コ惱環境の工夫 : 担任だけで抱えずに、各学年の担当者などで支援の進捗状況を共有し、対策を検討する。タブレットを個別学習に応用する。
今後の課題 : 不登校をめぐっての訴訟の増加(単位認定など)。不登校児の学力の問題。他職種が支援に入りやすい学校作り。自殺の予防。支援や連携に特化した教員の配置。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの常勤化。教員のアセスメント能力の向上。弁護士と連携しての法的側面の整備。
村上さんが不登校の問題を多角的に分析し、いろいろなツールを使いながら支援に当たっておられることに驚いた。また不登校の問題は奥が深く、学校や支援者だけが関わる問題ではなくて、社会全体で議論していかないといけない課題なのだと感じた。医療機関は不登校支援の一翼を担えるに過ぎないが、学校との協力関係を強め、いっしょに学んでいけるようでありたいと思った。

 

写真14〜16は八代市にある「日奈久(ひなぐ)温泉  金波楼(きんぱろう)」 で撮った写真です。

写真14 廊下も別の時代のものだ。

 

写真15 ヘルシーな和食が出る。

 

写真16 ギャラリーでは「さおり織り」の作品展が行われていた。八代市にある社会福祉施設「氷川学園」の利用者の方の作品なのだそうだ。

 

写真17〜21は「熊本市子ども文化会館」で撮った写真です。

写真17 入り口の様子。熊本城のすぐそばにある。

 

写真18 ボールプールではやすみと響以外にもたくさんの子どもたちが遊んでいた。

 

写真19 細かいところに趣向が凝らしてある。ロッカーもシャレている。

 

写真20 作ったプラ板をうれしそうに持ち歩く響。

 


写真21 粘土コーナーもある。

 

写真22〜24は鹿児島県伊佐市にある「珈琲Gallery 馬舎(ましゃ)」で撮った写真です。

写真22 野趣ある庭園を通ってお店に入る。

 

写真23 店内は独特のセンスで物が配置されている。写真は中二階。

 

写真24 ケーキセットを食べた。洗練された空間もあわせて味わう感じだ。

 

写真25〜26は鹿児島県伊佐市にある「湯之尾滝ガラッパ公園」で撮った写真です。

写真25 シンボルである「ガラッパ(カッパの方言)」をモチーフにした遊具がある。

 

写真26 走り回って喜ぶ響。広々していて気持ちも開ける公園だ。

 

写真27 吉田病院の発達症勉強会の様子。講師の村山さんはたくさんの参考資料を持ってこられていた。講演もまた膨大な知識を織り込んだものだった。

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2017年3月日録4

3/26(日) 「協力難病指定医」の講習を受けに熊本県庁に行ったので、あわせて家族で「熊本市動植物園」(〒8620911 熊本県熊本市東区健軍5-14-2 [動物ゾーン電話] 0963684416 、 [植物ゾーン電話]0963685615、ウェブページ)に行った。植物園と動物園と遊園地が切り離されることなく一体になっているのがユニークで、ピクニックをしながら景色を楽しむ人もいれば、子どもを遊具で遊ばせている人がいる。非常に平和な雰囲気で、「もし天国というものがあるのなら、こういう感じなのかな」と思った。ちょうど息子の響の2歳の誕生日だったので、遊ばせてあげれて良かった。
  でも熊本地震のダメージは大きく、動物園もゾウとキリンのところ以外はまだ入れない状態だ。それでもお客さんは非常に多かった。被災した部分を斬新にリフォームして、ますます多様な人たちが楽しめる場所にしていってほしい。
3/28(火) フリースクール「学びの杜学園」(連絡先〒8992201鹿児島県日置市東市来町湯田4477-2 皆田地区公民館2階、携帯09082990436、ウェブページメール)を運営している江口直美さんとお話する機会があった。もう立ち上げてから5年目になるそうだ。中学生を中心に学校に行きづらくなった子どもたちにそれぞれのペースでの学習の場を提供しておられる(在籍校での登校扱いになる)。また寮もあり、遠方の子どもや生活面での課題がある子どもたちにも対応しておられる。
  特にすばらしいのは学園をサポートする人たちの層が厚いことで、教育者や不登校の支援者はもちろん、臨床心理士やかかりつけ医もいる。ヴォランティア的に関わる人たちも多い。江口さんのやろうとしていることの重要性と人間的な魅力に呼応して、たくさんの人が応援しているのが印象的だ。
  フリースクールはまだ制度化されておらず助成金なども少ない現場なので大変だと思う。でも江口さんはやりがいと手応えを感じておられる様子だ。僕も最近は学びの杜学園に行くことが少なくなっていたが、また機会を作りたいと思った。子どもたちがそれぞれの道を見つけて社会参加している話を聞くと、勇気が沸いてくる。

 

写真28〜31は熊本市動植物園にて撮った写真です。


写真28 震災のダメージが大きく、出入り口も閉鎖されていた。臨時の入り口から入った。

 

写真29 植物ゾーンでは平和な雰囲気を味わえる。   

 

写真30 モノレールで立って前を見る響とやすみ。

 

写真31 やすみはイルカの小舟に乗るアトラクションが好きで、4回も乗った。職員さんが「4回目だね!」と驚いている。最後は一人で順番を待って乗ることができた。

 

写真32 人吉市の体育館「スポーツパレス」でボールを追いかける響。

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「精神保健指定医研修会」に参加する 2017年2月1日(水)

  精神科には「精神保健指定医」という資格があります。精神科には患者さん本人の同意を得れなくても治療をしないといけない場面というものがありますが、そういった強制的な処遇(強制的な入院、隔離、身体拘束)の際に必要性を判定するのが指定医の主な役割です。患者さんの人権を制限する重い役割で、法的・公的な意味あいも強い立場になります(みなし公務員)。
  資格を取得してから5年ごとに更新する義務があるのですが、僕にもその5年目がやってきました。研修会の受講が更新には必須です。東京で研修会があるので出かけました。
  研修会は活発とは言いがたかったですが、僕にとってはとても勉強になりました。精神科医の法的な側面について関心がありますので、正直言ってもっと基礎的な法律とその適応にポイントをしぼって掘り下げた講義を聞きたかったです。
  以下に僕にとって印象的だった一部の講義をまとめてみました。講義そのものとは違い僕のノートのようなものですから、文責は僕にあります。


精神保健指定医研修会(126回)

●「精神障害者の人権と法」(柑本美和)

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○「人権とは何か」
・精神障害者に関わる人権としては、大きく分けると「自由権」と「社会権」がある。
・自由権のなかには治療拒絶権があり、そこから派生してくるのがインフォームド・コンセントの権利。これは「情報提供が必要」というだけの意味ではなく、「例外を除いて原則的には患者の承諾がない医療行為を行ってはいけない」という分脈で理解する必要がある。
・社会権は適切かつ最小限の治療を受ける権利を意味する。
・精神障害の存在だけでは強制入院は正当化されない。適切な治療を受けられるからこそ正当化される。
・全ての国民の平等と差別禁止を定めた日本国憲法14条は、精神障害者への差別禁止の土台である。
・1991年、国連で「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」が議決された。これは世界各国で普遍的に妥当であるような精神保健福祉の土台を定めたものである。この国連原則にできるだけ近づくように日本も法制度を整備していくべきである。
・国連原則1では、全ての人ができるだけ最善のメンタルヘルスケアを受ける権利を持っていることや、精神疾患を持つ人が人道的な処遇を受けられるべきことが書かれている。
○精神障害者の権利
1、精神障害者の自由
・医療観察法では初めて「医療を受ける義務」が規定された(指定入院医療機関での入院・指定通院医療機関への通院)。
・これは精神保健福祉法での強制入院患者の場合も同じであると考えてよい。
・だからといってインフォームド・コンセントの権利が否定されたわけではない。
・国連原則11では例外を除いて「患者のインフォームド・コンセントなしには、いかなる治療も行われてはならない」と定められている。また患者に伝えるべきこととして、病状の評価、治療の目的や期待される効果、他に考えられる治療法、苦痛や副作用、などが挙げられている。
・医療観察法の入院処遇のケースについては、倫理会議でインフォームドコンセントなどが守られているかがチェックされる。
・今後は精神科病院に倫理委員会などを必置とし、一般の入院のケースについても患者の権利が守られているかをチェックするのはどうかという考えもある。
・治療拒絶権、一般に承認されていない治療行為の違法性、どうしてもやむを得ない場合の被告知投与の適法性などについては判例がある。
2、治療を受ける権利
・アウトリーチなどにより地域にいながらに精神科医療を受ける権利がある。

供強制入院制度
1、強制入院の正当性
・国が市民の自由を制限する権限を持つ根拠の原理には、「秩序の維持」(ポリス・パワー、患者が社会に危険を及ぼす状態の場合には自由を制限せざるを得ない)と「国親思想」(パレンス・パトリエ、自己決定ができない人には国が代わって決定してあげる必要がある)の2つがある。
・措置入院制度は秩序の維持の原理に基づくものである。一方、医療保護入院制度は国親思想の原理に基づくものである。
・強制入院の原理は1つの方向に統合されるべきである。
・国連原則16には、非自発的な入院の要件が書かれている。「自己や他者への危害の可能性が高く、緊急な対応が必要である」「入院させないと深刻な状態の悪化が起こると予想される」の2点が要点。「自己と他者の危険性」は「医療の必要性」の一部として包み込まれている。つまり国親思想が強制入院の基本原理になっており、秩序の維持はその一部となっている。
2、医療保護入院制度の改革
(1)医療保護入院の維持
・医療保護入院の保護者制度の背景には、「精神障害者の面倒は家族が見る」「精神障害者の行為は家族が責任を負う」という家族主義的な考え方がある。
・保護者(家族)の同意が得られないと退院が難しいため、地域精神医療の発展を妨げている。
・保護者制度は改革すべきだが、「判断能力が阻害された精神障害者の状態悪化を防ぐための入院」という趣旨の強制入院制度は維持が必要である。
(2)保護者制度の廃止、入院要件の改正
・保護者による同意を必要とする医療保護入院制度には以下のような問題点がある。本人の権利擁護が十分か?入院の必要性があるのに、保護者の同意が得られないから入院にできないという状況が起こりうる。保護者の同意がなければ退院にできないため、入院が長期化しやすい。本人の意思に反して保護者の判断で入院させるため、本人と保護者の間にあつれきが生まれやすい。
・制度改革の検討チームでは、保護者制度の廃止だけでなく、患者の代弁者制度も提案していた。しかし実際の改正法では保護者を「家族などのいずれかの者」に置き換えただけの中途半端な変更にとどまり、代弁者制度も創設されなかった。改正法の人権擁護装置としては、「退院後生活環境相談員」の選任があるのみである。
・家族はほんとうに権利擁護者か?という問題もある。特に保護者が虐待を行っているケースなどで問題となる。
(3)今後必要なこと
〇慊螳紊里澆糧獣任任瞭院制度創設、そして権利擁護のための仕組みの整備が必要。
・精神医療審査会の機能強化。
・代弁者制度の創設。弁護士などによる患者への援助制度。
地域精神医療のさらなる推進
・医療観察法においては通院命令制度が規定された。一般精神医療においても必要である。これがあると入院件数を減らせると考えられる。
A蔀崙院制度の改革
・措置入院については、妥当であったかどうかの事後審査がない。
・代弁者制度もない。
・退院後に医療を継続できるための仕組みが必要。

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1、人権保護の機関としての精神保健指定医
・精神衛生法の改正のときには、以下のような議論があった。「強制入院は裁判所の権限とすべき」対「司法の介入は最小限にすべき」。結果的には司法の介入を最小限にする制度になった。しかし諸外国では裁判所の判断に任せるのが一般的な在り方。
・精神保健指定医制度は、現行法におけるもっとも重要な人権擁護装置。
・指定医の不当な行為に対して処罰が厳しいことは当然である。
・現行の精神医療の規制は行政的な規制が基本である。しかし諸外国では司法による規制が一般的である。
2、指定医の資格と権限
・指定医から医療観察法の「精神保健判定医」「精神保健審判員」が選出される。これらは法曹資格のないものに裁判官と同様の権限が与えられた初めての例である。
3、指定医の制裁と処分
・資格の取り消しや停止、みなし公務員としての処罰、過料がある。

●「精神障害者の社会復帰及び精神障害者福祉」(谷野亮一郎)
・有床総合病院精神科の施設数も病床数も残念ながら減少している。
・谷野呉山病院での多職種連携の仕組みには以下のものがある。
・クリニカルパスの活用。急性期パス、アルコールパス、退院支援パス。
・患者心理教育・家族教室を開催。
・長期入院者の退院支援。「あすなろ会」(グループで退院準備のためのプログラムを受けてもらう)。高齢長期入院者退院支援委員会。地域移行支援委員会。
・重度精神障害者の地域生活支援。ACT−G。
・ACT(アクトと読む)とは、既存のサービスでは地域生活を続けることが困難な重い精神障害を抱えた人を対象とした、訪問相談を主体としたサービスモデルである。
・ACTの特徴には以下のものがある。多職種チームによるサービス提供。24時間週7日のサービス提供体制。積極的に訪問する。
・ACTによる効果には以下のものがある。入院回数の減少、入院期間の短縮、サービス脱落者の減少、自立した生活の確立、就労状態の改善、満足度の上昇。一方で精神症状の改善や社会的機能の向上はもたらさない。

●事例研修シンポジウムより
1、措置入院について
・措置入院になる割合には地域差が大きい。
・措置入院の退院後の地域ケアの仕組みを作ることが必要。
・措置入院の「自傷他害」の要件に含まれるのは自殺企図や暴力だけではない。性的問題行動、侮辱、器物破損、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、放火なども含まれる。刑罰法令に触れる程度の行為を含むので、業務妨害などさまざまなケースがありうる。
・措置診察の要請があった場合、行政は事実確認をしたうえで、原則として必ず措置診察を行うようにすべき。
・たとえ家族の同意があったとしても、行政が措置入院を医療保護入院に誘導するのは避けるべき。
・すでに措置入院以外の形式で精神科病院に入院している患者に対して措置権発動をできるかどうかは議論がある。
2、隔離や拘束などの行動制限について
・行動制限は主治医が診察の上で医学上の必要性から行うものであり、医師でないものの判断で行うことは許されない。
・入院形態については問わない。
・過去の行動に対する制裁として行動制限を行うことは絶対に許されない。
・本人の意思で閉鎖的な環境に入室する場合、隔離には当たらない。
・点滴などの医療行為の間の短時間の身体固定は拘束には当たらない。車いすの転落防止のベルトも短時間なら拘束には当たらない。
3、身体合併症を有する人の入院について
・身体面の問題だけのための強制入院はできない(たとえ放置したら致死的になる場合でも)。
・インフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定が基本となる。

 

写真1 研修会の資料。

 

写真2 会場の様子。

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「上球磨認知症初期集中支援チーム」の研修講演旅行 2017年2月22日(水)

  僕は以前水上村(みずかみむら)に住んでいたこともあり、水上村や周辺の湯前町(ゆのまえまち)、多良木町(たらぎまち)の相談支援活動に参加することが多いです。認知症の困難事例やうまく支援につながっていないケースに対して多職種で関わっていく「認知症初期集中支援チーム」にも参加させてもらっています。水上村・湯前町・多良木町の3町村合同で設置しているチームですので、「上球磨」認知症初期集中支援チームという名前です。このチームには保健師や社会福祉士、行政の方も参加しているのですが、非常に優れた尊敬できる人が多く、僕にとってやりがいと楽しさを感じる場になっています。
  認知症初期集中支援チームの活動を始めると、最初はいままでたまっていた難しいケースが上がってくると言われています。上球磨のチームでもまさにそうで、最初のころは会議で検討するだけでなく、面談をしたり、訪問をしたり、退院後の支援についても検討したり、大変でした。あまりにも困難な状況で、支援が進まなくてため息が出ることもありました。ですが最近ではある程度難しいケースの支援が進展し、僕たちも気楽に会議に臨めるようになりました。また一方では少し中だるみの状況になってきた感じもし始めました。
  そこへ思わぬチャンスが舞い込んできました。鹿児島県北部に位置する薩摩川内市(さつませんだいし)にある川薩保健所の保健師さんから、講演に来てくださいとの依頼があったのです。チームの仲間と出かければ士気が高まりますし、自分たちの活動を発表すれば勉強にもなります。僕はぜひ行くべきだと思い、会議の席で「みんなで行きましょう」と強く主張しました。幸いにも仲間たちも同意してくれました。予算面の難しい問題も仲間たちがうまくクリアしてくれました。1泊2日の講演研修旅行になりますので、僕自身も勤務日を1日休まないといけませんでしたが、その調整もなんとかできました。こうして一行10人で出かけることになったのです。
  10人乗りのハイエースでいざ出発です。普段から緊密に仕事をしている保健師さんたちや社会福祉士の山浦さんもいます。普段はあまり話す機会の少ない地域包括支援センターの仲間や、保健所の保健師さんもいます。同じ車で行けたのが幸いで、道中にいろんな問題を語り合うことができました。「うまく支援の手の届かない地域の人たちに、なんとかアプローチできないか」という問題意識を基本的にみんなが共有しているので、話がしやすいのです。「違う職種が同じ方向を向いて活動できるか?」が初期集中支援チームの成否を握ると聞いたことがありますが、上球磨ではいまのところうまくいっています。
  2時間ほどで薩摩川内市に着きました。今回の研修を依頼してくださり、事前にメールでやり取りしてきたU保健師さんたち3人が迎えてくださいました。皆さん気さくで、すぐに打ち解けました。地域をよく回って「少しでも効果的な支援システムを作れないか?」と考えておられることがわかり、話がすぐに通じました。保健所の保健師さんには大まかにいって制度的な面に強い人と実地での支援に強い人がいると思うのですが、皆さん現場肌の方たちでうれしかったです。
  お昼ご飯のお店の予約がうまく取れていなかったハプニングがありましたが、近くのお店に移動して、運よく全員入れるお座敷が空いていました。魚料理がおいしく、「かえってよかったね」とみんなで話しました。チームワークがいいと、ハプニングがあってもかえって予期せぬ成果を上げることがことができます。今回の旅行中には交通事故など他にもハプニングがあったのですが、チームの誰かが柔軟に対応してくれました。
  「川薩保健所」に移動した後、「地域支援事業充実・強化支援事業検討会 エリア別会議」という会議に参加しました。保健所の方たちに加えて、鹿児島県北部の5つの市や町(薩摩川内市、さつま町、出水市(いずみし)、阿久根市(あくねし)、長島町(ながしまちょう))の保健師・福祉課職員・地域包括支援センター職員や、精神科病院のスタッフなどが50人ほど集まっていました。高齢者支援の最前線にいる人たちです。ここで僕たち上球磨認知症初期集中支援チームの活動について報告させていただきました。
 
●「認知症初期集中支援事業について」(上球磨認知症初期集中支援チーム チーム員)
・湯前町役場の高木主幹から立ち上げの経緯について報告
3町村と地域包括支援センターの4者で協議して進めるので、時間はかかるが知恵も沸く
医師会や病院とのやり取りに細かな配慮が必要
・社会福祉士の山浦さんから活動の様子を報告
チーム員どうしになんでも言い合える信頼関係がある
自町村・他町村に関係なく、同じ地域の問題として全員が対策を検討
行政の高齢者支援担当者の出席もあり、相互理解が促進されている
対応が長期化しているケースがあることが課題
・多良木町の松下保健師から、事前にいただいていた質問に対する解答
認知機能の評価指標、支援機関、活動の線引き、訪問の費用負担など
・興野から困難事例対応や地域力向上のためのポイントの報告
  ただでさえ行き詰まっているケースが上がってくるので、まずはチーム員がひと息付けて、気持ちの余裕を持って議論できることが大切。
必要があればすぐに地域に出かけていくフットワークが必要

  次の意見交換(グループワーク)ではほかの地域の活動状況などを教えてもらえました。
・ 薩摩川内市では認知症の予防に重点をおいて取り組んでいる。70歳以上で介護保険のサービスを使っていない人たち(約16000人)の全戸訪問を行い、問題を抽出を行っている。認知症が疑われるのは3.6%の方たちだった。その結果から認知症初期集中支援チームで検討するケースを挙げている。課題としてはケースが多すぎて大変なことがある。
・鹿屋市ではサポート医が豊富で、議論もスムースに進んでいる。
・さつま町でも初期集中支援チームが活動を開始している。
・出水市・阿久根市・長島町はこれから立ち上げていく。・
  皆さん現場で苦労されている方たちですので、自然と話も弾みます。すごく楽しくて、うれしくなりました。次の食事会も含めて、今後支援チームを立ち上げていく市町村の方たちへエールを送りました。
  夜には主に医師向けの研修会「北薩地域認知症施策推進会議」に参加しました。ここでも上球磨認知症初期集中支援チームの活動について報告をしました。僕は初期集中支援チームの活動について正面切って話すのはこのときが初めてでしたし、参加者に鹿児島県北部の主だった病院の院長の方たちが多かったですので、非常に緊張しました。ですがおおむね好評を得ることができて良かったでした。上球磨の仲間たちとの議論や支援活動には、モデル的な意義があるんだと確認できました。
  翌日は研修の1日で、薩摩川内市の隣のさつま町の高齢者支援活動について学ばせていただきました。午前中は永野地区の公民館で開かれていた「介護予防教室」に参加させていただきました。介護予防教室とは地域の高齢者の心身の健康の悪化予防、特に認知症の予防を目的とした市町村の事業のことだそうです。さつま町では「住民主体の介護予防教室」に先駆的に取り組まれていて、「サポーター」と呼ばれる運営側の方たちが活動を進めています。計算や漢字のドリルをしたり、「ころばん体操」をしたりと、頭と体のトレーニングといった面が強いですが、やはり参加者どうしの絆に価値があるとおっしゃっていました。行政の担当者が取り仕切るのではなく、参加者の皆さんが自発的に動かれているのがすごいですし、自発的に参加する方が効果も上がるのではと思いました。80代の参加者の方も多かったですが、体力測定をしてもかなり維持できているそうです。
  午後は行政面の取り組みについて、さつま町の介護福祉課のN課長さんたちから研修を受けました。驚いたのですが、N課長さんは大変な着想力と実行力の持ち主で、「日本でもまだここだけでしかやっていない」ことや、「さつま町独自の活動」がいくつもあるそうです。僕は行政の活動や制度などについてほとんど知らないので内容をあまり理解できずに残念でしたが、気づいた範囲での要点には以下のものがあります。
・「介護予防・日常生活支援総合事業」を展開するためには、地域の実情をくわしく把握する必要がある。地域差が大きいために、国レヴェルで一律な対策を打つことができない。
・さつま町では「高齢者の生活実態調査」を毎年行っており、民生委員が訪問して調査した結果を分析している。その結果、生活のなかでの困難なこととして、通院が1位だった。2位は草刈り、3位は買い物だった。
・さつま町では高齢化率が38%であり、独居・老々世帯が増加している。低所得者の増加傾向もみられる。
・高齢者が安心して暮らせる地域を作っていく活動の2本の柱として、「元気な高齢者づくり」「地域の支え合いづくり」を置いている。
・地域づくりを進めていくためには地域住民の主体的な参加が必要であり、そのためには行政・住民・関係者の間での問題意識や目標の共有が必要である。
・具体的に課題を発見し支援システムを作っていく人として、「生活支援コーディネーター」を置いている。ニーズの発見、ネットワーク形成、方向性の共有、サービス提供の調整などが役割である。
・車を運転できない高齢者の移動の支援は大切である。さつま町では、以下のような移動方法がある。…名錣離織シー。▲灰潺絅縫謄ーバス(1回200円、バス停、平日、コース限定)。乗り合いタクシー(1回200円、要予約、バス停、平日、コース限定)。げ雜逎織シー(要介護1以上、要予約・ケアプラン、1回30分500円+ヘルパー料金1040円)。ゼ由契約(要支援・身体障害者など、要予約、1回30分1600円+ヘルパー料金1500円[原則不要])。
・これらの移動方法に加えて、さつま町では「総合事業D型」の移動支援を開始した。これは要支援の認定者などで、家がバス停から遠い人や、近くに運転できる家族のいない人を対象としている(協議にて対象者を決定)。行き先も通院・買い物・金融機関など生活に不可欠な場所に限定されている。1回30分510円。
・現在の介護タクシーが要介護認定を受けた人の通院などに限定されていることを考えると、画期的な制度運用である。
  専門的な話が多かったのですが、N課長たちの地域づくりへの熱い思いが伝わってきて感動しました。いっしょに参加した仲間たちは、さつま町の取り組みの先進性に圧倒されているようでした。意志のある人がいれば、新しい道が開けるんですね。
  今回の旅に行けて、優れた人と何人も出会うことができました。また保健・福祉・医療・介護などの原点にある、「高齢者が安心して住める地域を」という目標を認識することができました。個々人の取り組み方はさまざまですが、小さな実験を重ね合わせるなかで、未来の地域社会の設計図がぼんやり見えてくると思うのです。僕もその流れのなかにいたいなと思いました。

 

写真1 「地域支援事業充実・強化支援事業検討会 エリア別会議」の様子。

 

写真2 「さつま町地域包括支援センター」の入り口。

 

写真3 1日目に活動の様子を聞いた「オレンジカフェ  ほうかつ」の開催されている部屋。一般的な認知症カフェと違うのは、さつま町が独自に養成した「オレンジリーダー」の人たちが主体なことだ。

 

写真4 永野地区の介護予防事業。こちらも「サポーター」と呼ばれる住民が主体なことが特徴。

 

写真5 「ころばん体操」はハードだった。

 

写真6 さつま町役場の入り口。介護福祉課のN課長さんたちは、高齢者の住みやすい地域作りのために先駆的な実践活動をたくさんされている。

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てんかんについての本を読む 2017年2月26日(日)

  最近は診療のなかで精神疾患とまぎらわしい「てんかん」のケースに遭遇することが増えてきました。また小児期はてんかんになりやすい時期ですので、子どもの診療をしているとてんかんを持っている方に出会います。「もしかしててんかんかも?」と疑えれば検査や治療を進めていけますが、気が付かないままになってしまうこともよくあります。
  精神科の現場で必要なてんかんの基礎知識を得たくて、『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)を読んでみました。予想以上に現場で役立つ即戦力的な内容で、読み終われて非常に良かったでした。僕にとって特に参考になった第1章と第2章の内容を以下に引用・要約してみました。専門的な内容が多くなってしまいますので、興味のある部分だけさっと読んでいただければと思います。

『てんかん診療スキルアップ』
●序
・てんかんは神経疾患に位置付けられているけれども、てんかん診療は精神科から切り離せない。
・てんかんはさまざまな精神疾患を併発しやすい。

●第1章 精神科外来を初診するてんかん発作
A、てんかん発作の基礎知識
・通常はてんかん発作は患者ごとに発作症状と型がほぼ決まっている。
・発作症状からある程度てんかん症候群を推測することが可能である。
・てんかん発作そのものを起こす大脳の領域(てんかん原性領域)と、発作症状を引き起こす領域(発作症状出現域)を分けて考える。
・1981年の発作型分類では、まずは全般発作と部分発作に二分する。
・特殊なてんかんを除き、通常は全般発作を起こすケースが部分発作を起こすことはない。また部分発作のケースでは二次性全般化以外の全般発作をみとめることはない。
・てんかんは誤診しやすい疾患である。
・特に鑑別に気を付けないといけないものに、心因性非てんかん発作と失神がある。
・「前兆」は部分発作である。
・てんかん発作の一般的な特徴には以下のものがある。突然開始し、突然終了する。通常は数秒から数分で終了する(2分以下が多い)。患者ごとに発作時の症状のパターンや出現部位が決まっている(常同性)。発声することもある。舌を噛むことがある。発作時には目は開いている。声かけだけで意識レヴェルは変化しない。
・見落としがちであるが、二次性全般化する前の発作症状が重要。
・「若年欠神てんかん」では、数秒間ボーっとし、動作が停止し、速やかに回復する。過呼吸で発作が起こりやすくなるため、運動や合唱のときなどに起こりやすい。
・「若年ミオクロニーてんかん」では、朝起きて1時間以内や夕方に起こる「一瞬びくっとする」ミオクロニー発作が起きる。また強直間代けいれんも起きる。ミオクロニー発作は通常は両側の腕に起こりやすい。
・「側頭葉てんかん」では前兆のあとに、意識障害をきたして口や手の自動症を伴う複雑部分発作が起こる。前兆には吐き気や既視感、感覚性失語(人の言っていることや書いてある文字が理解できない)などがある。
・「前頭葉てんかん」には症状のパターンがいくつもある。意識消失は通常は1分以内で、もうろう状態も少ない。左右対称でない激しい両側の運動症状が起こることがある(フェンシング姿位、4の字徴候、自転車こぎのような自動症、過運動発作、大声を出すなど)。
・「後頭葉てんかん」では視野の一部が暗くなったり、キラキラしたものが見えたりといった視覚に関係する症状が起こる(複雑な幻視では側頭葉てんかんを疑う)。
 

B、夢様状態を含む“精神発作”
・「夢様状態」は側頭葉てんかんの発作症状の一種。見当識が保たれたまま周囲の認知の仕方が変容する。既視感、未知感、追想(過去の記憶がパノラマ様の幻影として思い浮かぶ)なども出現する。
・意識障害を伴わないてんかん発作のうち、言語・記憶・感情・認識の障害を引き起こしたり、錯覚や幻覚を引き起こすものを、「精神発作」と総称する。
・精神発作には、夢様状態、恐怖発作、言語障害発作、記憶障害発作、認知障害発作、感情発作、錯覚発作、構造幻覚発作などが含まれる。
・精神発作の患者は精神科外来を初診する可能性も高いが、精神疾患との区別が難しいことがある。
・「恐怖発作」は精神発作のなかでも頻度が高い。パニック発作との鑑別が求められる。
 

C、複雑部分発作
・複雑部分発作とは意識障害を伴う部分発作のこと。
・自動症を伴うことも多い。自動症とは体の一部または全身の奇妙な反復性の動作のこと。口部自動症では、くちゃくちゃ噛むように口を動かす、唾を飲みこむ、舌なめずりをする、口をぴちゃぴちゃさせるなどがみられる。手の自動症では、手探りするような動作をしたり、服をまさぐったりする。
・複雑部分発作と単純部分発作の区別のポイントには以下のものがある。意識障害があると、ボーっとした様子であり、視線が合わない。呼びかけや痛み刺激にも反応しない。複雑部分発作では発作後に、発作中の様子を思い出せない。
・自動症を伴う欠神発作と複雑部分発作は症状だけでは区別できないことも多い。脳波所見を参考にする。欠神発作では過呼吸不活によって「3Hz棘徐波」が出現することが多い。
・ 側頭葉てんかんの80%を占める内側側頭葉てんかんは海馬や偏桃体に焦点を持ち、難治例に外科的な治療が有効である。典型的な複雑部分発作の症状がみられる。二次性全般化することは比較的まれである。熱性けいれんの既往があることがよくある。
・前頭葉は側頭葉に次いでてんかん焦点を生じやすい大脳の領域。前頭葉てんかんは難治性のものも多く、発作が意識障害をきたすとも限らず、激しい情動や動きを伴うことが多いので、心因性非てんかん発作と誤診されやすい。前頭葉由来の複雑部分発作では激しい行動症状がみられやすい。発作症状は以下の3つに分けられる。焦点性運動発作(一側の身体部位に限局、間代が主徴、上肢や顔面に多い)、補足運動発作(上下肢の近位筋の収縮による強直姿勢、フェンシング姿位など)、精神運動発作(自動症や過運動発作など)。
 

D、非けいれん性てんかん重積発作
・「非けいれん性てんかん重積発作」とは、目立ったけいれん症状を生じないてんかん発作が、長時間持続したり短時間で反復したりする状態である。精神疾患に似た状態を示すことがある。
・ 精神科外来を初診するケースには以下のものがありうる。仝験侈兪曄ν泙Δ帖困惑・攻撃性・認知機能障害などの精神症状が目立つ場合。∪鎖声栖気隆擬圓傍こった非けいれん性てんかん重積発作。H鵑韻い譴鸚てんかん重積発作がてんかんの初回発作として起こったり、他の発作型が主だったところに非けいれん性てんかん重積発作が起こった場合。
・発作症状は多彩である。上記に加えて、軽度のもうろう状態、言語障害、自動症、健忘、昏睡のような状態などがみられる。特異的な臨床症状は存在しない。
・ 脳波が必須。脳波所見も多彩である。律動性波形の持続や頻発に加えて、棘徐波、律動性徐波などがみられる。単純部分発作の重積では脳波所見が出現しにくい。
・非けいれん性てんかん重積発作を疑うサインとしては以下のものがある。’沼潅罅脳腫瘍、認知症、脳外科手術の既往などのリスクファクターの存在。⊇兎討弊鎖西評。4禝絮親阿琉枉錙
・向精神薬で起こったものは原疾患の悪化と誤診されやすいので注意が必要。
・「欠神発作重積」では意識混濁や行動の変容がみられ、典型的には「反応はあるが、混乱が目立ち、単純な動作も促してやっとできる状態」になる。開始と終了は明瞭。初期治療としてはベンゾジアゼピンの静注を行い、その後はバルプロ酸を使う。中年以上の女性に好発する欠神発作重積もあるが、ベンゾジアゼピンの離脱や向精神薬の中毒が誘因になることが多い。
・「複雑部分発作重積」では前兆を伴って緩徐に発症する意識混濁がみられる。欠神発作重積よりも精神症状の頻度が高く、口部自動症や片側性のジストニア(眼球偏位や眼振など)がみられるのが特徴的。
・「単純部分発作重積」では体の一部のピクつきの持続が代表的。恐怖発作・眼振・消化器症状・精神症状の持続もみられる。脳波の異常所見が検出されないことが多い。
 

●第2章 精神科領域における発作性エピソードの鑑別診断
・問診する際に、てんかん発作の症状と、非てんかん性の症状を対比させながら症状を切り分けていくと、誤りを減らすことができる。
・てんかん発作の三大症状は、けいれん、意識障害、感覚発作または運動発作。

A、意識消失
〇失神
・失神とは、何らかの原因で脳血流が低下し、一過性の意識消失が起きて姿勢が保持できなくなること。そして自然に完全な意識の回復がみられることである。
・失神の原因の代表的なものには、ゝ立性低血圧、反射性失神、心原性失神がある。
・失神の発生率は、10〜20歳代の若年者と70歳以上の高齢者にピークがある。△麓稠者に多く、,鉢は高齢者に多い。
・病歴聴取が重要。前駆症状、意識障害の発症形式、随伴症状、外傷の有無、回復過程の様子などを確認する。
・失神による意識障害は1分以内のことが多く、てんかんでは数分間になることが多い。失神ではすみやかに意識清明になるが、てんかんでは意識回復までに10分以上かかったり、覚醒度が完全に回復せずもうろう状態が続いたり、咬舌を伴ったりする。
〇日中の眠気
・日中の眠気の訴えがあった場合、まずはほんとうに眠気を表しているのかを考える必要がある。眠気を感じていても疲労感や倦怠感の訴えだけがあることがある。特に子どもでは言葉で表現できないので、「イライラしやすい」「集中力がない」と周囲に受け取られている場合がある。
・過眠が疑われたら以下の点を確認する。平日と休日で眠気や睡眠時間の変化はあるか?アトピー性皮膚炎の痒みなど身体不調での不眠ではないか?精神疾患の影響での不眠では?内服中の薬剤の影響はないか(向精神薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬など)?
・日中の眠気のスコアリング・ツールとしては、「エプワース眠気尺度(ESS)」がある。睡眠日誌での記録も大事。
・鑑別を要する疾患には、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、解離症などがある。

B、健忘
・健忘をきたす原因には、物質によるもの(アルコール、薬物など)、身体疾患によるもの(複雑部分発作、頭部外傷、脳腫瘍、一過性全健忘、コルサコフ症候群など)、その他(電気けいれん療法など)がある。認知症やせん妄も健忘をきたしうる。
・「一過性全健忘」は突然発症し、数時間に及ぶ逆行性健忘をきたす疾患。その間、即時記憶は正常であり、意識障害もない。片頭痛に合併しやすい。予後は良好であり、積極的な治療を要しない。
・「解離性健忘」は脳の器質的な障害ではなく、精神的な外傷やストレスがきっかけとなって起こる健忘。

C、異常行動
・ 睡眠遊行症や夜驚症などは睡眠時随伴症と総称される。睡眠時随伴症は睡眠段階と密接な関係がある。
・ REM睡眠行動異常症は睡眠時随伴症の代表的なものである。特徴としては、男性に多い、40〜70歳代に多い、発症年齢は15〜80歳なことがある。症状としては、演説口調、叫び声、ののしり声、四肢を振り回す、殴る、蹴る、布団から飛び出る、攻撃される夢内容、夢内容を反映する行動をする、などがよくみられる。異常行動は睡眠の後半3分の1に起こりやすい。
・ 終夜睡眠ポリグラフ検査によって診断を確定する。夜間の前頭葉てんかんなどとの鑑別を要する。
・ 心因性非てんかん発作はよくみられるもので、てんかん専門施設の外来の1〜2割を占めると言われている。てんかん発作と合併することも少なくない。特徴としては、てんかん発作の症候に適合しない、常同的でない、断続的で長く続きやすい、心理的な要因や状況要因が強く関係している、生理的な睡眠中には起こらないことなどがある。
・ 心因性非てんかん発作に知的発達症が合併するのは1〜3割程度とされている。鑑別には発作時のビデオ・脳波同時記録が有用である。
・ パニック症の診断のためには、内側側頭葉てんかんとの鑑別が必要である。鑑別点としては、発作の持続時間(側頭葉てんかんは2〜3分)、症状の常同性、広場恐怖の合併の有無(パニック症の方が合併しやすい)、初発年齢(側頭葉てんかんは小児期から思春期、パニック症はそれ以降に起こりやすい)、などがある。

 

写真1 『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)。非常に実践的に編集された本だ。

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2017年2月日録1

2/7(火) 上球磨認知症初期集中支援チームの会議に参加した。主に認知症の困難事例に多職種で関わるチームだ。支援するケースは深刻な状況のものが多いが、チームワークがとてもいいので、和気あいあいと話せて楽しくなる。そしてチーム員どうしの信頼が強くなることで、結果的に認知症の困難事例の支援が進んでいくから不思議だ。難しいケースほど、いろんな角度から柔軟に対策を考えるのが必要であり、そのためには「どんな意見でも気楽に話せる雰囲気」が不可欠なのだろう。すばらしいメンバーが集まっているからこそできることだと思う。 
2/13(月) 日本医師会から毎月雑誌が送られてくる。僕は精神科以外の医療の動向について知る機会がほとんどないので、雑誌の特集記事を読むのはとてもためになっている。それに加えて数か月前に『WMA 医の倫理マニュアル』(原著第3版、樋口範雄監訳、日本医師会発行、2016年)という薄い本が入っていた。全然期待せずに読み始めたのだが、非常に内容が深く、充実した読書となった。
  「医療倫理」と聞くと、医学研究の際にきちんと同意を得ることとか、出生前診断などが思い浮かぶ。だがこの本ではもっと広く医療の基礎となる問題を取り扱っている。例えば以下のような問題だ。「医師に期待される「価値あるもの」の中核とは?」。「医の倫理は時代や国によって変わるのか?」。「判断が難しい問題へのアプローチにはどのような種類があるか?」。「どのような状況で、どのような根拠のもとで、診療を拒否できるのか?」。「患者本人に判断能力がない場合の意思決定プロセスとは?」。「守秘義務を破ることが肯定される状況とは?」。「あまりたくさん使えない医療資源をどのように分配するか?例えばICUの残り1つのベッド、移植用の臓器、非常に高額な薬など」。「同僚の非倫理的な行為にどう対応するか?」。「医療チーム内で他職種とのトラブルが発生した場合にどうするか?」。
  こういった問題は一律の答えは見つからないし、この本も答えを提示するための本ではない。あくまでも過去の思索の積み重ねのなかから一般的に推奨される方向性を示してくれているだけだ。だがそれが非常に役に立った。というか医療の土台にある問題群を提示してくれていること自体が非常にありがたい。問題を意識するだけで、深みにはまらないことが多々あるからだ。価値ある本とは、価値ある問題を取り出してくれている本だと思う。
2/14(火) 子ども支援の会議に参加した。従来は支援機関の不足が話題になることが多かったが、最近では支援機関が増え、それぞれの役割分担を明確にする議論が必要になっている。また支援のすき間の部分にどう対応していくかという話題も出た。発達症の問題は子どもの時期だけではなく、大人になってからも支援が必要なので、生涯にわたる支援システムをどう作るかという話題もあった。課題は尽きないが、改善に向けて多くの人が動いているのがわかり、支援システムの構築が前進している手応えを得た。球磨地方には優れた支援者がたくさんいるので、連携を良くしていけば、より効果的に子どもや保護者を応援できるのではと思う。
2/18(土) 若い友人のK君が遊びに来てくれた。深く掘り下げて考えるのが得意なK君は、一方で考え過ぎて身動きが取れなくなってしまいやすい面もある。僕の役割はK君の話し相手になりながら、K君の潜在力を「周りの人たちとのつながりを作る力」に応用していくお手伝いをすることだ。
  逆にK君が僕を育ててくれる面もある。話しながら僕が大切に感じていた本や体験を、いくつも思い出した。最近は生活が慌ただしくて、すっかり忘れてしまっていた。
  それだけでなく、自分よりも優秀なK君に「自分がこうだったら良かったのにな」という夢を託している面もある。それは「同級生に対してはたらきかける」ということだ。僕は学校の外に自分の先生や仲間を求めることはしたが、学校のなかにはあまり強いつながりを作れなかった。K君のように自分の考えをもとに集会や研修会を企画できることはすばらしいことだと思う。
  若い人と話すのはうれしいことだ。それは自分の経験や知識が活用してもらえる喜びなのだと思う。変な言い方だが、僕たちのなかには「自分の一部を若い人たちの血肉にしてもらいたい」という本能のようなものがあるのではないか。教師の人たちが過重労働に耐えられるのは、この本能のおかげだと思う。

 

写真1 あさぎり町にある美容室「レッドヘア」にて。髪を切る間、響はおとなしく座っていた。

 

写真2 うっすらと積もった雪を見てごきげんの響。人吉市では今年は雪が少なかった。


写真3〜4 「人吉クラフトパーク石野公園」の「チビッコ広場」にて。明るくて遊具も多いので他の家族連れとよく会う。

 

写真5 人吉市にある電車の駅「大畑駅(おこばえき)」。かなり山を登ったところにある。

 

写真6 プラットフォームは明るい。

 

写真7 大畑駅の手前にある「人吉梅園」。山の斜面が一面梅だ。

 

写真8 同じく人吉市の大畑地区にある「レストラン赤い屋根」。

 

写真9 店内では時間が止まったような雰囲気にひたってゆっくりすることができる。

 

写真10 保育園のマラソン大会で走るやすみ。結果は最下位だったが、がんばって完走できたそうだ。僕は応援に行けなくて残念だった。

 

写真11 家のそばの散歩コースで犬のチビを散歩させる。14歳くらいになり、ずいぶん痩せてしまった。

 

写真12〜13は人吉市の街中に出かけた際の写真です。「人吉球磨は、ひなまつり」と銘打って、あちこちでひな人形が展示されています。

写真12 ホテル「人吉温泉  鍋屋本館」でおひなランチを食べる。

写真13 「人吉温泉女将の会  さくら会」がこの季節に開く「お休処おひな庵」。手作りの小物もたくさん売られている。

 

写真14 『WMA 医の倫理マニュアル』(原著第3版、樋口範雄監訳、日本医師会発行、2016年)。わかりやすくて、かつ深くて広い本だ。医療の基礎にある問題群を提示してくれている。

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