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「精神保健指定医研修会」に参加する 2017年2月1日(水)

  精神科には「精神保健指定医」という資格があります。精神科には患者さん本人の同意を得れなくても治療をしないといけない場面というものがありますが、そういった強制的な処遇(強制的な入院、隔離、身体拘束)の際に必要性を判定するのが指定医の主な役割です。患者さんの人権を制限する重い役割で、法的・公的な意味あいも強い立場になります(みなし公務員)。
  資格を取得してから5年ごとに更新する義務があるのですが、僕にもその5年目がやってきました。研修会の受講が更新には必須です。東京で研修会があるので出かけました。
  研修会は活発とは言いがたかったですが、僕にとってはとても勉強になりました。精神科医の法的な側面について関心がありますので、正直言ってもっと基礎的な法律とその適応にポイントをしぼって掘り下げた講義を聞きたかったです。
  以下に僕にとって印象的だった一部の講義をまとめてみました。講義そのものとは違い僕のノートのようなものですから、文責は僕にあります。


精神保健指定医研修会(126回)

●「精神障害者の人権と法」(柑本美和)

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○「人権とは何か」
・精神障害者に関わる人権としては、大きく分けると「自由権」と「社会権」がある。
・自由権のなかには治療拒絶権があり、そこから派生してくるのがインフォームド・コンセントの権利。これは「情報提供が必要」というだけの意味ではなく、「例外を除いて原則的には患者の承諾がない医療行為を行ってはいけない」という分脈で理解する必要がある。
・社会権は適切かつ最小限の治療を受ける権利を意味する。
・精神障害の存在だけでは強制入院は正当化されない。適切な治療を受けられるからこそ正当化される。
・全ての国民の平等と差別禁止を定めた日本国憲法14条は、精神障害者への差別禁止の土台である。
・1991年、国連で「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」が議決された。これは世界各国で普遍的に妥当であるような精神保健福祉の土台を定めたものである。この国連原則にできるだけ近づくように日本も法制度を整備していくべきである。
・国連原則1では、全ての人ができるだけ最善のメンタルヘルスケアを受ける権利を持っていることや、精神疾患を持つ人が人道的な処遇を受けられるべきことが書かれている。
○精神障害者の権利
1、精神障害者の自由
・医療観察法では初めて「医療を受ける義務」が規定された(指定入院医療機関での入院・指定通院医療機関への通院)。
・これは精神保健福祉法での強制入院患者の場合も同じであると考えてよい。
・だからといってインフォームド・コンセントの権利が否定されたわけではない。
・国連原則11では例外を除いて「患者のインフォームド・コンセントなしには、いかなる治療も行われてはならない」と定められている。また患者に伝えるべきこととして、病状の評価、治療の目的や期待される効果、他に考えられる治療法、苦痛や副作用、などが挙げられている。
・医療観察法の入院処遇のケースについては、倫理会議でインフォームドコンセントなどが守られているかがチェックされる。
・今後は精神科病院に倫理委員会などを必置とし、一般の入院のケースについても患者の権利が守られているかをチェックするのはどうかという考えもある。
・治療拒絶権、一般に承認されていない治療行為の違法性、どうしてもやむを得ない場合の被告知投与の適法性などについては判例がある。
2、治療を受ける権利
・アウトリーチなどにより地域にいながらに精神科医療を受ける権利がある。

供強制入院制度
1、強制入院の正当性
・国が市民の自由を制限する権限を持つ根拠の原理には、「秩序の維持」(ポリス・パワー、患者が社会に危険を及ぼす状態の場合には自由を制限せざるを得ない)と「国親思想」(パレンス・パトリエ、自己決定ができない人には国が代わって決定してあげる必要がある)の2つがある。
・措置入院制度は秩序の維持の原理に基づくものである。一方、医療保護入院制度は国親思想の原理に基づくものである。
・強制入院の原理は1つの方向に統合されるべきである。
・国連原則16には、非自発的な入院の要件が書かれている。「自己や他者への危害の可能性が高く、緊急な対応が必要である」「入院させないと深刻な状態の悪化が起こると予想される」の2点が要点。「自己と他者の危険性」は「医療の必要性」の一部として包み込まれている。つまり国親思想が強制入院の基本原理になっており、秩序の維持はその一部となっている。
2、医療保護入院制度の改革
(1)医療保護入院の維持
・医療保護入院の保護者制度の背景には、「精神障害者の面倒は家族が見る」「精神障害者の行為は家族が責任を負う」という家族主義的な考え方がある。
・保護者(家族)の同意が得られないと退院が難しいため、地域精神医療の発展を妨げている。
・保護者制度は改革すべきだが、「判断能力が阻害された精神障害者の状態悪化を防ぐための入院」という趣旨の強制入院制度は維持が必要である。
(2)保護者制度の廃止、入院要件の改正
・保護者による同意を必要とする医療保護入院制度には以下のような問題点がある。本人の権利擁護が十分か?入院の必要性があるのに、保護者の同意が得られないから入院にできないという状況が起こりうる。保護者の同意がなければ退院にできないため、入院が長期化しやすい。本人の意思に反して保護者の判断で入院させるため、本人と保護者の間にあつれきが生まれやすい。
・制度改革の検討チームでは、保護者制度の廃止だけでなく、患者の代弁者制度も提案していた。しかし実際の改正法では保護者を「家族などのいずれかの者」に置き換えただけの中途半端な変更にとどまり、代弁者制度も創設されなかった。改正法の人権擁護装置としては、「退院後生活環境相談員」の選任があるのみである。
・家族はほんとうに権利擁護者か?という問題もある。特に保護者が虐待を行っているケースなどで問題となる。
(3)今後必要なこと
〇慊螳紊里澆糧獣任任瞭院制度創設、そして権利擁護のための仕組みの整備が必要。
・精神医療審査会の機能強化。
・代弁者制度の創設。弁護士などによる患者への援助制度。
地域精神医療のさらなる推進
・医療観察法においては通院命令制度が規定された。一般精神医療においても必要である。これがあると入院件数を減らせると考えられる。
A蔀崙院制度の改革
・措置入院については、妥当であったかどうかの事後審査がない。
・代弁者制度もない。
・退院後に医療を継続できるための仕組みが必要。

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1、人権保護の機関としての精神保健指定医
・精神衛生法の改正のときには、以下のような議論があった。「強制入院は裁判所の権限とすべき」対「司法の介入は最小限にすべき」。結果的には司法の介入を最小限にする制度になった。しかし諸外国では裁判所の判断に任せるのが一般的な在り方。
・精神保健指定医制度は、現行法におけるもっとも重要な人権擁護装置。
・指定医の不当な行為に対して処罰が厳しいことは当然である。
・現行の精神医療の規制は行政的な規制が基本である。しかし諸外国では司法による規制が一般的である。
2、指定医の資格と権限
・指定医から医療観察法の「精神保健判定医」「精神保健審判員」が選出される。これらは法曹資格のないものに裁判官と同様の権限が与えられた初めての例である。
3、指定医の制裁と処分
・資格の取り消しや停止、みなし公務員としての処罰、過料がある。

●「精神障害者の社会復帰及び精神障害者福祉」(谷野亮一郎)
・有床総合病院精神科の施設数も病床数も残念ながら減少している。
・谷野呉山病院での多職種連携の仕組みには以下のものがある。
・クリニカルパスの活用。急性期パス、アルコールパス、退院支援パス。
・患者心理教育・家族教室を開催。
・長期入院者の退院支援。「あすなろ会」(グループで退院準備のためのプログラムを受けてもらう)。高齢長期入院者退院支援委員会。地域移行支援委員会。
・重度精神障害者の地域生活支援。ACT−G。
・ACT(アクトと読む)とは、既存のサービスでは地域生活を続けることが困難な重い精神障害を抱えた人を対象とした、訪問相談を主体としたサービスモデルである。
・ACTの特徴には以下のものがある。多職種チームによるサービス提供。24時間週7日のサービス提供体制。積極的に訪問する。
・ACTによる効果には以下のものがある。入院回数の減少、入院期間の短縮、サービス脱落者の減少、自立した生活の確立、就労状態の改善、満足度の上昇。一方で精神症状の改善や社会的機能の向上はもたらさない。

●事例研修シンポジウムより
1、措置入院について
・措置入院になる割合には地域差が大きい。
・措置入院の退院後の地域ケアの仕組みを作ることが必要。
・措置入院の「自傷他害」の要件に含まれるのは自殺企図や暴力だけではない。性的問題行動、侮辱、器物破損、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、放火なども含まれる。刑罰法令に触れる程度の行為を含むので、業務妨害などさまざまなケースがありうる。
・措置診察の要請があった場合、行政は事実確認をしたうえで、原則として必ず措置診察を行うようにすべき。
・たとえ家族の同意があったとしても、行政が措置入院を医療保護入院に誘導するのは避けるべき。
・すでに措置入院以外の形式で精神科病院に入院している患者に対して措置権発動をできるかどうかは議論がある。
2、隔離や拘束などの行動制限について
・行動制限は主治医が診察の上で医学上の必要性から行うものであり、医師でないものの判断で行うことは許されない。
・入院形態については問わない。
・過去の行動に対する制裁として行動制限を行うことは絶対に許されない。
・本人の意思で閉鎖的な環境に入室する場合、隔離には当たらない。
・点滴などの医療行為の間の短時間の身体固定は拘束には当たらない。車いすの転落防止のベルトも短時間なら拘束には当たらない。
3、身体合併症を有する人の入院について
・身体面の問題だけのための強制入院はできない(たとえ放置したら致死的になる場合でも)。
・インフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定が基本となる。

 

写真1 研修会の資料。

 

写真2 会場の様子。

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「上球磨認知症初期集中支援チーム」の研修講演旅行 2017年2月22日(水)

  僕は以前水上村(みずかみむら)に住んでいたこともあり、水上村や周辺の湯前町(ゆのまえまち)、多良木町(たらぎまち)の相談支援活動に参加することが多いです。認知症の困難事例やうまく支援につながっていないケースに対して多職種で関わっていく「認知症初期集中支援チーム」にも参加させてもらっています。水上村・湯前町・多良木町の3町村合同で設置しているチームですので、「上球磨」認知症初期集中支援チームという名前です。このチームには保健師や社会福祉士、行政の方も参加しているのですが、非常に優れた尊敬できる人が多く、僕にとってやりがいと楽しさを感じる場になっています。
  認知症初期集中支援チームの活動を始めると、最初はいままでたまっていた難しいケースが上がってくると言われています。上球磨のチームでもまさにそうで、最初のころは会議で検討するだけでなく、面談をしたり、訪問をしたり、退院後の支援についても検討したり、大変でした。あまりにも困難な状況で、支援が進まなくてため息が出ることもありました。ですが最近ではある程度難しいケースの支援が進展し、僕たちも気楽に会議に臨めるようになりました。また一方では少し中だるみの状況になってきた感じもし始めました。
  そこへ思わぬチャンスが舞い込んできました。鹿児島県北部に位置する薩摩川内市(さつませんだいし)にある川薩保健所の保健師さんから、講演に来てくださいとの依頼があったのです。チームの仲間と出かければ士気が高まりますし、自分たちの活動を発表すれば勉強にもなります。僕はぜひ行くべきだと思い、会議の席で「みんなで行きましょう」と強く主張しました。幸いにも仲間たちも同意してくれました。予算面の難しい問題も仲間たちがうまくクリアしてくれました。1泊2日の講演研修旅行になりますので、僕自身も勤務日を1日休まないといけませんでしたが、その調整もなんとかできました。こうして一行10人で出かけることになったのです。
  10人乗りのハイエースでいざ出発です。普段から緊密に仕事をしている保健師さんたちや社会福祉士の山浦さんもいます。普段はあまり話す機会の少ない地域包括支援センターの仲間や、保健所の保健師さんもいます。同じ車で行けたのが幸いで、道中にいろんな問題を語り合うことができました。「うまく支援の手の届かない地域の人たちに、なんとかアプローチできないか」という問題意識を基本的にみんなが共有しているので、話がしやすいのです。「違う職種が同じ方向を向いて活動できるか?」が初期集中支援チームの成否を握ると聞いたことがありますが、上球磨ではいまのところうまくいっています。
  2時間ほどで薩摩川内市に着きました。今回の研修を依頼してくださり、事前にメールでやり取りしてきたU保健師さんたち3人が迎えてくださいました。皆さん気さくで、すぐに打ち解けました。地域をよく回って「少しでも効果的な支援システムを作れないか?」と考えておられることがわかり、話がすぐに通じました。保健所の保健師さんには大まかにいって制度的な面に強い人と実地での支援に強い人がいると思うのですが、皆さん現場肌の方たちでうれしかったです。
  お昼ご飯のお店の予約がうまく取れていなかったハプニングがありましたが、近くのお店に移動して、運よく全員入れるお座敷が空いていました。魚料理がおいしく、「かえってよかったね」とみんなで話しました。チームワークがいいと、ハプニングがあってもかえって予期せぬ成果を上げることがことができます。今回の旅行中には交通事故など他にもハプニングがあったのですが、チームの誰かが柔軟に対応してくれました。
  「川薩保健所」に移動した後、「地域支援事業充実・強化支援事業検討会 エリア別会議」という会議に参加しました。保健所の方たちに加えて、鹿児島県北部の5つの市や町(薩摩川内市、さつま町、出水市(いずみし)、阿久根市(あくねし)、長島町(ながしまちょう))の保健師・福祉課職員・地域包括支援センター職員や、精神科病院のスタッフなどが50人ほど集まっていました。高齢者支援の最前線にいる人たちです。ここで僕たち上球磨認知症初期集中支援チームの活動について報告させていただきました。
 
●「認知症初期集中支援事業について」(上球磨認知症初期集中支援チーム チーム員)
・湯前町役場の高木主幹から立ち上げの経緯について報告
3町村と地域包括支援センターの4者で協議して進めるので、時間はかかるが知恵も沸く
医師会や病院とのやり取りに細かな配慮が必要
・社会福祉士の山浦さんから活動の様子を報告
チーム員どうしになんでも言い合える信頼関係がある
自町村・他町村に関係なく、同じ地域の問題として全員が対策を検討
行政の高齢者支援担当者の出席もあり、相互理解が促進されている
対応が長期化しているケースがあることが課題
・多良木町の松下保健師から、事前にいただいていた質問に対する解答
認知機能の評価指標、支援機関、活動の線引き、訪問の費用負担など
・興野から困難事例対応や地域力向上のためのポイントの報告
  ただでさえ行き詰まっているケースが上がってくるので、まずはチーム員がひと息付けて、気持ちの余裕を持って議論できることが大切。
必要があればすぐに地域に出かけていくフットワークが必要

  次の意見交換(グループワーク)ではほかの地域の活動状況などを教えてもらえました。
・ 薩摩川内市では認知症の予防に重点をおいて取り組んでいる。70歳以上で介護保険のサービスを使っていない人たち(約16000人)の全戸訪問を行い、問題を抽出を行っている。認知症が疑われるのは3.6%の方たちだった。その結果から認知症初期集中支援チームで検討するケースを挙げている。課題としてはケースが多すぎて大変なことがある。
・鹿屋市ではサポート医が豊富で、議論もスムースに進んでいる。
・さつま町でも初期集中支援チームが活動を開始している。
・出水市・阿久根市・長島町はこれから立ち上げていく。・
  皆さん現場で苦労されている方たちですので、自然と話も弾みます。すごく楽しくて、うれしくなりました。次の食事会も含めて、今後支援チームを立ち上げていく市町村の方たちへエールを送りました。
  夜には主に医師向けの研修会「北薩地域認知症施策推進会議」に参加しました。ここでも上球磨認知症初期集中支援チームの活動について報告をしました。僕は初期集中支援チームの活動について正面切って話すのはこのときが初めてでしたし、参加者に鹿児島県北部の主だった病院の院長の方たちが多かったですので、非常に緊張しました。ですがおおむね好評を得ることができて良かったでした。上球磨の仲間たちとの議論や支援活動には、モデル的な意義があるんだと確認できました。
  翌日は研修の1日で、薩摩川内市の隣のさつま町の高齢者支援活動について学ばせていただきました。午前中は永野地区の公民館で開かれていた「介護予防教室」に参加させていただきました。介護予防教室とは地域の高齢者の心身の健康の悪化予防、特に認知症の予防を目的とした市町村の事業のことだそうです。さつま町では「住民主体の介護予防教室」に先駆的に取り組まれていて、「サポーター」と呼ばれる運営側の方たちが活動を進めています。計算や漢字のドリルをしたり、「ころばん体操」をしたりと、頭と体のトレーニングといった面が強いですが、やはり参加者どうしの絆に価値があるとおっしゃっていました。行政の担当者が取り仕切るのではなく、参加者の皆さんが自発的に動かれているのがすごいですし、自発的に参加する方が効果も上がるのではと思いました。80代の参加者の方も多かったですが、体力測定をしてもかなり維持できているそうです。
  午後は行政面の取り組みについて、さつま町の介護福祉課のN課長さんたちから研修を受けました。驚いたのですが、N課長さんは大変な着想力と実行力の持ち主で、「日本でもまだここだけでしかやっていない」ことや、「さつま町独自の活動」がいくつもあるそうです。僕は行政の活動や制度などについてほとんど知らないので内容をあまり理解できずに残念でしたが、気づいた範囲での要点には以下のものがあります。
・「介護予防・日常生活支援総合事業」を展開するためには、地域の実情をくわしく把握する必要がある。地域差が大きいために、国レヴェルで一律な対策を打つことができない。
・さつま町では「高齢者の生活実態調査」を毎年行っており、民生委員が訪問して調査した結果を分析している。その結果、生活のなかでの困難なこととして、通院が1位だった。2位は草刈り、3位は買い物だった。
・さつま町では高齢化率が38%であり、独居・老々世帯が増加している。低所得者の増加傾向もみられる。
・高齢者が安心して暮らせる地域を作っていく活動の2本の柱として、「元気な高齢者づくり」「地域の支え合いづくり」を置いている。
・地域づくりを進めていくためには地域住民の主体的な参加が必要であり、そのためには行政・住民・関係者の間での問題意識や目標の共有が必要である。
・具体的に課題を発見し支援システムを作っていく人として、「生活支援コーディネーター」を置いている。ニーズの発見、ネットワーク形成、方向性の共有、サービス提供の調整などが役割である。
・車を運転できない高齢者の移動の支援は大切である。さつま町では、以下のような移動方法がある。…名錣離織シー。▲灰潺絅縫謄ーバス(1回200円、バス停、平日、コース限定)。乗り合いタクシー(1回200円、要予約、バス停、平日、コース限定)。げ雜逎織シー(要介護1以上、要予約・ケアプラン、1回30分500円+ヘルパー料金1040円)。ゼ由契約(要支援・身体障害者など、要予約、1回30分1600円+ヘルパー料金1500円[原則不要])。
・これらの移動方法に加えて、さつま町では「総合事業D型」の移動支援を開始した。これは要支援の認定者などで、家がバス停から遠い人や、近くに運転できる家族のいない人を対象としている(協議にて対象者を決定)。行き先も通院・買い物・金融機関など生活に不可欠な場所に限定されている。1回30分510円。
・現在の介護タクシーが要介護認定を受けた人の通院などに限定されていることを考えると、画期的な制度運用である。
  専門的な話が多かったのですが、N課長たちの地域づくりへの熱い思いが伝わってきて感動しました。いっしょに参加した仲間たちは、さつま町の取り組みの先進性に圧倒されているようでした。意志のある人がいれば、新しい道が開けるんですね。
  今回の旅に行けて、優れた人と何人も出会うことができました。また保健・福祉・医療・介護などの原点にある、「高齢者が安心して住める地域を」という目標を認識することができました。個々人の取り組み方はさまざまですが、小さな実験を重ね合わせるなかで、未来の地域社会の設計図がぼんやり見えてくると思うのです。僕もその流れのなかにいたいなと思いました。

 

写真1 「地域支援事業充実・強化支援事業検討会 エリア別会議」の様子。

 

写真2 「さつま町地域包括支援センター」の入り口。

 

写真3 1日目に活動の様子を聞いた「オレンジカフェ  ほうかつ」の開催されている部屋。一般的な認知症カフェと違うのは、さつま町が独自に養成した「オレンジリーダー」の人たちが主体なことだ。

 

写真4 永野地区の介護予防事業。こちらも「サポーター」と呼ばれる住民が主体なことが特徴。

 

写真5 「ころばん体操」はハードだった。

 

写真6 さつま町役場の入り口。介護福祉課のN課長さんたちは、高齢者の住みやすい地域作りのために先駆的な実践活動をたくさんされている。

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てんかんについての本を読む 2017年2月26日(日)

  最近は診療のなかで精神疾患とまぎらわしい「てんかん」のケースに遭遇することが増えてきました。また小児期はてんかんになりやすい時期ですので、子どもの診療をしているとてんかんを持っている方に出会います。「もしかしててんかんかも?」と疑えれば検査や治療を進めていけますが、気が付かないままになってしまうこともよくあります。
  精神科の現場で必要なてんかんの基礎知識を得たくて、『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)を読んでみました。予想以上に現場で役立つ即戦力的な内容で、読み終われて非常に良かったでした。僕にとって特に参考になった第1章と第2章の内容を以下に引用・要約してみました。専門的な内容が多くなってしまいますので、興味のある部分だけさっと読んでいただければと思います。

『てんかん診療スキルアップ』
●序
・てんかんは神経疾患に位置付けられているけれども、てんかん診療は精神科から切り離せない。
・てんかんはさまざまな精神疾患を併発しやすい。

●第1章 精神科外来を初診するてんかん発作
A、てんかん発作の基礎知識
・通常はてんかん発作は患者ごとに発作症状と型がほぼ決まっている。
・発作症状からある程度てんかん症候群を推測することが可能である。
・てんかん発作そのものを起こす大脳の領域(てんかん原性領域)と、発作症状を引き起こす領域(発作症状出現域)を分けて考える。
・1981年の発作型分類では、まずは全般発作と部分発作に二分する。
・特殊なてんかんを除き、通常は全般発作を起こすケースが部分発作を起こすことはない。また部分発作のケースでは二次性全般化以外の全般発作をみとめることはない。
・てんかんは誤診しやすい疾患である。
・特に鑑別に気を付けないといけないものに、心因性非てんかん発作と失神がある。
・「前兆」は部分発作である。
・てんかん発作の一般的な特徴には以下のものがある。突然開始し、突然終了する。通常は数秒から数分で終了する(2分以下が多い)。患者ごとに発作時の症状のパターンや出現部位が決まっている(常同性)。発声することもある。舌を噛むことがある。発作時には目は開いている。声かけだけで意識レヴェルは変化しない。
・見落としがちであるが、二次性全般化する前の発作症状が重要。
・「若年欠神てんかん」では、数秒間ボーっとし、動作が停止し、速やかに回復する。過呼吸で発作が起こりやすくなるため、運動や合唱のときなどに起こりやすい。
・「若年ミオクロニーてんかん」では、朝起きて1時間以内や夕方に起こる「一瞬びくっとする」ミオクロニー発作が起きる。また強直間代けいれんも起きる。ミオクロニー発作は通常は両側の腕に起こりやすい。
・「側頭葉てんかん」では前兆のあとに、意識障害をきたして口や手の自動症を伴う複雑部分発作が起こる。前兆には吐き気や既視感、感覚性失語(人の言っていることや書いてある文字が理解できない)などがある。
・「前頭葉てんかん」には症状のパターンがいくつもある。意識消失は通常は1分以内で、もうろう状態も少ない。左右対称でない激しい両側の運動症状が起こることがある(フェンシング姿位、4の字徴候、自転車こぎのような自動症、過運動発作、大声を出すなど)。
・「後頭葉てんかん」では視野の一部が暗くなったり、キラキラしたものが見えたりといった視覚に関係する症状が起こる(複雑な幻視では側頭葉てんかんを疑う)。
 

B、夢様状態を含む“精神発作”
・「夢様状態」は側頭葉てんかんの発作症状の一種。見当識が保たれたまま周囲の認知の仕方が変容する。既視感、未知感、追想(過去の記憶がパノラマ様の幻影として思い浮かぶ)なども出現する。
・意識障害を伴わないてんかん発作のうち、言語・記憶・感情・認識の障害を引き起こしたり、錯覚や幻覚を引き起こすものを、「精神発作」と総称する。
・精神発作には、夢様状態、恐怖発作、言語障害発作、記憶障害発作、認知障害発作、感情発作、錯覚発作、構造幻覚発作などが含まれる。
・精神発作の患者は精神科外来を初診する可能性も高いが、精神疾患との区別が難しいことがある。
・「恐怖発作」は精神発作のなかでも頻度が高い。パニック発作との鑑別が求められる。
 

C、複雑部分発作
・複雑部分発作とは意識障害を伴う部分発作のこと。
・自動症を伴うことも多い。自動症とは体の一部または全身の奇妙な反復性の動作のこと。口部自動症では、くちゃくちゃ噛むように口を動かす、唾を飲みこむ、舌なめずりをする、口をぴちゃぴちゃさせるなどがみられる。手の自動症では、手探りするような動作をしたり、服をまさぐったりする。
・複雑部分発作と単純部分発作の区別のポイントには以下のものがある。意識障害があると、ボーっとした様子であり、視線が合わない。呼びかけや痛み刺激にも反応しない。複雑部分発作では発作後に、発作中の様子を思い出せない。
・自動症を伴う欠神発作と複雑部分発作は症状だけでは区別できないことも多い。脳波所見を参考にする。欠神発作では過呼吸不活によって「3Hz棘徐波」が出現することが多い。
・ 側頭葉てんかんの80%を占める内側側頭葉てんかんは海馬や偏桃体に焦点を持ち、難治例に外科的な治療が有効である。典型的な複雑部分発作の症状がみられる。二次性全般化することは比較的まれである。熱性けいれんの既往があることがよくある。
・前頭葉は側頭葉に次いでてんかん焦点を生じやすい大脳の領域。前頭葉てんかんは難治性のものも多く、発作が意識障害をきたすとも限らず、激しい情動や動きを伴うことが多いので、心因性非てんかん発作と誤診されやすい。前頭葉由来の複雑部分発作では激しい行動症状がみられやすい。発作症状は以下の3つに分けられる。焦点性運動発作(一側の身体部位に限局、間代が主徴、上肢や顔面に多い)、補足運動発作(上下肢の近位筋の収縮による強直姿勢、フェンシング姿位など)、精神運動発作(自動症や過運動発作など)。
 

D、非けいれん性てんかん重積発作
・「非けいれん性てんかん重積発作」とは、目立ったけいれん症状を生じないてんかん発作が、長時間持続したり短時間で反復したりする状態である。精神疾患に似た状態を示すことがある。
・ 精神科外来を初診するケースには以下のものがありうる。仝験侈兪曄ν泙Δ帖困惑・攻撃性・認知機能障害などの精神症状が目立つ場合。∪鎖声栖気隆擬圓傍こった非けいれん性てんかん重積発作。H鵑韻い譴鸚てんかん重積発作がてんかんの初回発作として起こったり、他の発作型が主だったところに非けいれん性てんかん重積発作が起こった場合。
・発作症状は多彩である。上記に加えて、軽度のもうろう状態、言語障害、自動症、健忘、昏睡のような状態などがみられる。特異的な臨床症状は存在しない。
・ 脳波が必須。脳波所見も多彩である。律動性波形の持続や頻発に加えて、棘徐波、律動性徐波などがみられる。単純部分発作の重積では脳波所見が出現しにくい。
・非けいれん性てんかん重積発作を疑うサインとしては以下のものがある。’沼潅罅脳腫瘍、認知症、脳外科手術の既往などのリスクファクターの存在。⊇兎討弊鎖西評。4禝絮親阿琉枉錙
・向精神薬で起こったものは原疾患の悪化と誤診されやすいので注意が必要。
・「欠神発作重積」では意識混濁や行動の変容がみられ、典型的には「反応はあるが、混乱が目立ち、単純な動作も促してやっとできる状態」になる。開始と終了は明瞭。初期治療としてはベンゾジアゼピンの静注を行い、その後はバルプロ酸を使う。中年以上の女性に好発する欠神発作重積もあるが、ベンゾジアゼピンの離脱や向精神薬の中毒が誘因になることが多い。
・「複雑部分発作重積」では前兆を伴って緩徐に発症する意識混濁がみられる。欠神発作重積よりも精神症状の頻度が高く、口部自動症や片側性のジストニア(眼球偏位や眼振など)がみられるのが特徴的。
・「単純部分発作重積」では体の一部のピクつきの持続が代表的。恐怖発作・眼振・消化器症状・精神症状の持続もみられる。脳波の異常所見が検出されないことが多い。
 

●第2章 精神科領域における発作性エピソードの鑑別診断
・問診する際に、てんかん発作の症状と、非てんかん性の症状を対比させながら症状を切り分けていくと、誤りを減らすことができる。
・てんかん発作の三大症状は、けいれん、意識障害、感覚発作または運動発作。

A、意識消失
〇失神
・失神とは、何らかの原因で脳血流が低下し、一過性の意識消失が起きて姿勢が保持できなくなること。そして自然に完全な意識の回復がみられることである。
・失神の原因の代表的なものには、ゝ立性低血圧、反射性失神、心原性失神がある。
・失神の発生率は、10〜20歳代の若年者と70歳以上の高齢者にピークがある。△麓稠者に多く、,鉢は高齢者に多い。
・病歴聴取が重要。前駆症状、意識障害の発症形式、随伴症状、外傷の有無、回復過程の様子などを確認する。
・失神による意識障害は1分以内のことが多く、てんかんでは数分間になることが多い。失神ではすみやかに意識清明になるが、てんかんでは意識回復までに10分以上かかったり、覚醒度が完全に回復せずもうろう状態が続いたり、咬舌を伴ったりする。
〇日中の眠気
・日中の眠気の訴えがあった場合、まずはほんとうに眠気を表しているのかを考える必要がある。眠気を感じていても疲労感や倦怠感の訴えだけがあることがある。特に子どもでは言葉で表現できないので、「イライラしやすい」「集中力がない」と周囲に受け取られている場合がある。
・過眠が疑われたら以下の点を確認する。平日と休日で眠気や睡眠時間の変化はあるか?アトピー性皮膚炎の痒みなど身体不調での不眠ではないか?精神疾患の影響での不眠では?内服中の薬剤の影響はないか(向精神薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬など)?
・日中の眠気のスコアリング・ツールとしては、「エプワース眠気尺度(ESS)」がある。睡眠日誌での記録も大事。
・鑑別を要する疾患には、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、解離症などがある。

B、健忘
・健忘をきたす原因には、物質によるもの(アルコール、薬物など)、身体疾患によるもの(複雑部分発作、頭部外傷、脳腫瘍、一過性全健忘、コルサコフ症候群など)、その他(電気けいれん療法など)がある。認知症やせん妄も健忘をきたしうる。
・「一過性全健忘」は突然発症し、数時間に及ぶ逆行性健忘をきたす疾患。その間、即時記憶は正常であり、意識障害もない。片頭痛に合併しやすい。予後は良好であり、積極的な治療を要しない。
・「解離性健忘」は脳の器質的な障害ではなく、精神的な外傷やストレスがきっかけとなって起こる健忘。

C、異常行動
・ 睡眠遊行症や夜驚症などは睡眠時随伴症と総称される。睡眠時随伴症は睡眠段階と密接な関係がある。
・ REM睡眠行動異常症は睡眠時随伴症の代表的なものである。特徴としては、男性に多い、40〜70歳代に多い、発症年齢は15〜80歳なことがある。症状としては、演説口調、叫び声、ののしり声、四肢を振り回す、殴る、蹴る、布団から飛び出る、攻撃される夢内容、夢内容を反映する行動をする、などがよくみられる。異常行動は睡眠の後半3分の1に起こりやすい。
・ 終夜睡眠ポリグラフ検査によって診断を確定する。夜間の前頭葉てんかんなどとの鑑別を要する。
・ 心因性非てんかん発作はよくみられるもので、てんかん専門施設の外来の1〜2割を占めると言われている。てんかん発作と合併することも少なくない。特徴としては、てんかん発作の症候に適合しない、常同的でない、断続的で長く続きやすい、心理的な要因や状況要因が強く関係している、生理的な睡眠中には起こらないことなどがある。
・ 心因性非てんかん発作に知的発達症が合併するのは1〜3割程度とされている。鑑別には発作時のビデオ・脳波同時記録が有用である。
・ パニック症の診断のためには、内側側頭葉てんかんとの鑑別が必要である。鑑別点としては、発作の持続時間(側頭葉てんかんは2〜3分)、症状の常同性、広場恐怖の合併の有無(パニック症の方が合併しやすい)、初発年齢(側頭葉てんかんは小児期から思春期、パニック症はそれ以降に起こりやすい)、などがある。

 

写真1 『てんかん診療スキルアップ』(吉野相英編集、医学書院、2014年)。非常に実践的に編集された本だ。

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2017年2月日録1

2/7(火) 上球磨認知症初期集中支援チームの会議に参加した。主に認知症の困難事例に多職種で関わるチームだ。支援するケースは深刻な状況のものが多いが、チームワークがとてもいいので、和気あいあいと話せて楽しくなる。そしてチーム員どうしの信頼が強くなることで、結果的に認知症の困難事例の支援が進んでいくから不思議だ。難しいケースほど、いろんな角度から柔軟に対策を考えるのが必要であり、そのためには「どんな意見でも気楽に話せる雰囲気」が不可欠なのだろう。すばらしいメンバーが集まっているからこそできることだと思う。 
2/13(月) 日本医師会から毎月雑誌が送られてくる。僕は精神科以外の医療の動向について知る機会がほとんどないので、雑誌の特集記事を読むのはとてもためになっている。それに加えて数か月前に『WMA 医の倫理マニュアル』(原著第3版、樋口範雄監訳、日本医師会発行、2016年)という薄い本が入っていた。全然期待せずに読み始めたのだが、非常に内容が深く、充実した読書となった。
  「医療倫理」と聞くと、医学研究の際にきちんと同意を得ることとか、出生前診断などが思い浮かぶ。だがこの本ではもっと広く医療の基礎となる問題を取り扱っている。例えば以下のような問題だ。「医師に期待される「価値あるもの」の中核とは?」。「医の倫理は時代や国によって変わるのか?」。「判断が難しい問題へのアプローチにはどのような種類があるか?」。「どのような状況で、どのような根拠のもとで、診療を拒否できるのか?」。「患者本人に判断能力がない場合の意思決定プロセスとは?」。「守秘義務を破ることが肯定される状況とは?」。「あまりたくさん使えない医療資源をどのように分配するか?例えばICUの残り1つのベッド、移植用の臓器、非常に高額な薬など」。「同僚の非倫理的な行為にどう対応するか?」。「医療チーム内で他職種とのトラブルが発生した場合にどうするか?」。
  こういった問題は一律の答えは見つからないし、この本も答えを提示するための本ではない。あくまでも過去の思索の積み重ねのなかから一般的に推奨される方向性を示してくれているだけだ。だがそれが非常に役に立った。というか医療の土台にある問題群を提示してくれていること自体が非常にありがたい。問題を意識するだけで、深みにはまらないことが多々あるからだ。価値ある本とは、価値ある問題を取り出してくれている本だと思う。
2/14(火) 子ども支援の会議に参加した。従来は支援機関の不足が話題になることが多かったが、最近では支援機関が増え、それぞれの役割分担を明確にする議論が必要になっている。また支援のすき間の部分にどう対応していくかという話題も出た。発達症の問題は子どもの時期だけではなく、大人になってからも支援が必要なので、生涯にわたる支援システムをどう作るかという話題もあった。課題は尽きないが、改善に向けて多くの人が動いているのがわかり、支援システムの構築が前進している手応えを得た。球磨地方には優れた支援者がたくさんいるので、連携を良くしていけば、より効果的に子どもや保護者を応援できるのではと思う。
2/18(土) 若い友人のK君が遊びに来てくれた。深く掘り下げて考えるのが得意なK君は、一方で考え過ぎて身動きが取れなくなってしまいやすい面もある。僕の役割はK君の話し相手になりながら、K君の潜在力を「周りの人たちとのつながりを作る力」に応用していくお手伝いをすることだ。
  逆にK君が僕を育ててくれる面もある。話しながら僕が大切に感じていた本や体験を、いくつも思い出した。最近は生活が慌ただしくて、すっかり忘れてしまっていた。
  それだけでなく、自分よりも優秀なK君に「自分がこうだったら良かったのにな」という夢を託している面もある。それは「同級生に対してはたらきかける」ということだ。僕は学校の外に自分の先生や仲間を求めることはしたが、学校のなかにはあまり強いつながりを作れなかった。K君のように自分の考えをもとに集会や研修会を企画できることはすばらしいことだと思う。
  若い人と話すのはうれしいことだ。それは自分の経験や知識が活用してもらえる喜びなのだと思う。変な言い方だが、僕たちのなかには「自分の一部を若い人たちの血肉にしてもらいたい」という本能のようなものがあるのではないか。教師の人たちが過重労働に耐えられるのは、この本能のおかげだと思う。

 

写真1 あさぎり町にある美容室「レッドヘア」にて。髪を切る間、響はおとなしく座っていた。

 

写真2 うっすらと積もった雪を見てごきげんの響。人吉市では今年は雪が少なかった。


写真3〜4 「人吉クラフトパーク石野公園」の「チビッコ広場」にて。明るくて遊具も多いので他の家族連れとよく会う。

 

写真5 人吉市にある電車の駅「大畑駅(おこばえき)」。かなり山を登ったところにある。

 

写真6 プラットフォームは明るい。

 

写真7 大畑駅の手前にある「人吉梅園」。山の斜面が一面梅だ。

 

写真8 同じく人吉市の大畑地区にある「レストラン赤い屋根」。

 

写真9 店内では時間が止まったような雰囲気にひたってゆっくりすることができる。

 

写真10 保育園のマラソン大会で走るやすみ。結果は最下位だったが、がんばって完走できたそうだ。僕は応援に行けなくて残念だった。

 

写真11 家のそばの散歩コースで犬のチビを散歩させる。14歳くらいになり、ずいぶん痩せてしまった。

 

写真12〜13は人吉市の街中に出かけた際の写真です。「人吉球磨は、ひなまつり」と銘打って、あちこちでひな人形が展示されています。

写真12 ホテル「人吉温泉  鍋屋本館」でおひなランチを食べる。

写真13 「人吉温泉女将の会  さくら会」がこの季節に開く「お休処おひな庵」。手作りの小物もたくさん売られている。

 

写真14 『WMA 医の倫理マニュアル』(原著第3版、樋口範雄監訳、日本医師会発行、2016年)。わかりやすくて、かつ深くて広い本だ。医療の基礎にある問題群を提示してくれている。

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2017年2月日録2

2/21(火) 水上村の「特別支援教育講話」に招いていただいた。発達症などで支援が必要な子どものケースでは、家族・学校や保育園・支援者・行政・医療機関などがうまく連携しないと、結局は子どもの状況が改善しないことが多い。参加メンバーがまさに家族・学校・保育園・行政の全てをカバーしていたので、やりがいがあった。僕の話は代わりばえのしない発達症の支援についてのものだが、知り合いの方もおられて話しやすかった。質問もグレーゾーン・不登校・ネット依存・合併精神疾患・多職種ネットワークなど重要な問題についてのものが出て良かった。
2/25(土) 発達症の子を持つ親の支援システムの1つに、「ペアレントメンター」がある。発達症の子育てをしてきて、かつ継続的に研修を受けている親がペアレントメンターになる。そして子どもが診断を受けたばかりで戸惑っている親に対して、傾聴や情報提供を行うという支援法だ。僕は以前から関心を持っており、ぜひ活用させていただきたいと思っている。ペアレントメンターに関わる人たちと話したり会合に出席してみてわかったことは、以下のことだ。.撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾鰺用したいと思ったときに、どこに相談するかという窓口が一本化されていない。そのために十分に活用されていない面がある。完全に無償のヴォランティアだが、活動内容は大変で高度なことを含む。交通費などの必要経費もかかるが、どうするか? ペアレントメンターと相談者の組み合わせを段取りしたりするのがコーディネーターで、ペアレントメンターはコーディネーターとペアで動くのが望ましい。ぐ緡典ヾ悗膿巴任鮗けるわけだから、医療機関にもコーディネーターがいた方がいいのでは?
2/28(火) 鹿児島市にある鹿児島国際大学の教職員向けの研修会で、発達症の支援について話させていただいた。大学に行く機会はなかなかないので知らなかったが、大学の現場でもやはり発達症があったり疑われたりする学生への対応で苦労されているそうだ。また留学生が調子を崩した際の対応も難しい。難しい課題が多くなっているわけだが、非常に丁寧な対応をされたケースのことも聞き、希望を持つことができた。
  僕が見聞きした範囲内では、鹿児島国際大学の強みは、以下の点になる。ー匆駟〇祿慍覆あり、支援を専門とする教員が多い。広々した学生相談室があり、カウンセラーがほぼ常駐している。6軌の方々も欠席を繰り返したり、集団に入れなかったりする生徒に対して、個別に熱心に対応されている。こ愼眩澗里乏惱支援をしてあげたいという機運がある。
  今回鹿児島国際大学に行けたのは、吉田病院に指導に来てくださっている准教授の岡田洋一さんのおかげだ。岡田さんは精神保健福祉士として働いていたキャリアも長く、学者でありながら現場肌の支援者でもある人だ。心配な学生さんの対応にも尽力されていると聞いてうれしかった。若い支援者のモデルとして今後もご指導していただきたいと思った。

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医療の背景にある諸分野の問題について 2017年1月1日(日)

   精神科の仕事をしていると、判断に迷う場面がよくあります。それが病気の診断や投薬といった医学的な問題なら、解決はできなくても問題のありかは見えやすいです。でもそうでない場合も多く、狭い意味の医療とは違う問題が背景にあることがあります。例えば法律的な問題であったり、社会制度であったり、経済的な問題だったりします。精神科の現場にどんな問題が絡んでくるのか、思い付く範囲で書いてみます。

^絣悄Π緡電な問題
   症状を漏らさずに把握できているか?
   疑われる病気を漏らさずに検討できているか?
   処方は適切か?
   心理的な側面に配慮できているか?
   家族関係・人間関係・経済面・仕事の面などに配慮できているか?
   本人の希望や意向を聞き取れているか?
   本人(や家族)に治療についての情報を伝えられているか?

医療制度的な問題
   「医師法」・「医療法」が基盤。
   カルテの記載は適切か?
   専門職の配置は適切か?

K‥な問題
   「精神保健福祉法」が精神科医療の土台。
   非自発的な入院や隔離など、個人の人権の侵害を含む場合がある。
   法的に定められた手続きにのっとって診療を行えているか?
   非自発的な入院制度については、制度そのものの整理と改善が必要。

げ搬牡愀犬量簑
   家族関係に問題はないか?
   意思決定のための適切なキーパーソンが決まっているか?
   家族間の意向は一致しているか?
   面会が多すぎたり少なすぎたりしないか?
   家族が精神科医療に抵抗を持っていないか?

ヂ仗祐愀犬量簑
   対人交流はあるか?
   集団活動の苦手さはないか?
   ストレス源になるような人間関係はないか?   

Ψ从冖未量簑
   浪費や借金の問題はないか?
    医療費は負担になっていないか?
   金銭管理が難しい状況の場合、外部からの金銭管理システムの利用を検討しているか?(社協、後見制度)
   ギャンブル障害などの依存症や発達症、躁状態などでは浪費の問題につながりやすい。
   不払いの問題につながりそうなケースでは、場合によっては行政などを含めてのケース会議が必要。

Ы∀の問題
   就労はできているか?
   職場環境の問題はないか?
   職場の対人関係はどうか?
   一般就労が難しい場合、就労継続支援事業への参加を検討しているか?
   本人の疲労は大きくないか?
   状態の悪化時には、休職して復職支援プログラムを使ってもらうこともある。

┛緡泥好織奪佞量簑
   スタッフ間の情報共有や方向性の統一はできているか?
   研修の機会は十分にあるか?   
   スタッフのメンタルヘルスへの配慮はできているか?
   過剰な残業はないか? 

経営の問題
   病院の経営は健全か?
   過剰な利益追求の状態になっていないか?
   広報はうまくいっているか?

地域貢献の問題
   「もうからないが地域のために必要」という活動はたくさんある。
   組織として以下のような活動に積極的に人員を派遣できているか?
   市町村の「こころの相談」事業。
   精神保健関係の会議。
   教育支援委員会。
   認知症の初期集中支援チーム。
   啓発のための研修や講演会への参加。

地域連携の問題
    地域の支援機関との連絡は取れているか?
   ケース会議などに参加してバックアップできているか?
   文化祭など地域の人たちに来てもらえる行事はあるか?

倫理的な問題
   平等性が医療の大原則。
   暴力や不払いや問題行動が頻発するケースでは場合によっては診療拒否とせざるを得ないが、その基準は?
   個人情報の保護と、支援職間での情報共有のジレンマ。

   このように精神科医療の背景にはいろいろな問題郡がありますね。医療という分野では極端に走るのを求められるわけではなく、バランスを取りながら落としどころを探っていくのが大事なのです。でも僕は偏りやすいので気を付ける必要があります。「自分には関係ない」と思ってきた分野に問題解決の鍵があったりするのです。

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小児精神医療研修会に参加する 2017年1月9日(月)

   発達症の子どもを診療することが増えましたので、子どもの精神科医療に関する研修会にいろいろ参加するようにしています。1月には福岡市の九州大学で日本精神神経学会の「小児精神医療研修会」がありましたので出かけてみました。これはシリーズで開催されている研修会で、今回は7回目だそうです。日常の診療に応用できる点が多くおもしろかったです。過去の研修会では子どもの診療の土台になる精神発達のプロセスなどがテーマだったそうですから、参加してみたかったと思いました。
   以下は僕の印象に残った点をまとめたものです。演題と講演者を出していますが、あくまでも僕が聞き取ったことですので、間違っている可能性もあります(文責は僕にあります)。専門的な内容も多いですが、サーッと目をとおして興味のある部分を読んでいただければと思います。

 

●「虐待・トラウマ関連疾患への治療」(小平雅基)
・トラウマによって生じる症状はPTSDの症状だけにとどまらない。行動面では解離、性化行動、物質依存、自傷などを含む。認知面では、非合理的な信念(自分が悪いなど)や他者への不信感がある。感情面では恐怖、うつ、怒り、不安、調節障害などが起こりうる。
・とりわけ認知面の症状が治療上も重要である。「こんな目にあったのは私が悪いことをしたからだ」といった自分に原因を求める考え方(同化)や、「世の中は危険だらけだ。いいことをしたらいい結果になるわけではない」といった世界の公正さを過度に否定する考え方(過剰調整)になりやすい。
・慢性反復性のトラウマの方が、単回性のトラウマよりも複雑な症状を引き起こす。
・小児期の逆境体験には、以下のようなものがある。ネグレクト、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、医療虐待、DVの暴露、親の物質乱用、親の精神疾患、親を亡くすこと、経済的な困窮、災害。
・小児期に経験した逆境体験の種類や数が多いほど、将来的にうつ病、自殺企図、学習や行動上の問題、身体慢性疾患などになりやすくなるというデータがある。
・幼少期にトラウマを受けている子は、適切なケアを受けないと、心理面や社会性の発達がなかなか進みにくい。「エリクソンの心理社会的発達課題」の図式で言えば、一番土台になる「基本的信頼感の形成」がうまくいかないので、その上に積み重なる「自律性の獲得」「自発性の発展」「勤勉性の発揮」「同一性の形成」なども進みにくい。
・児童精神医学における「愛着(アタッチメント)」とは愛情のことではない。大まかに言えば、危機の際に親密な対象に近づいて、いっしょにいることでストレスを減らそうとする対処法のこと。子どもが母親にくっついていることだけでなく、広く見れば大人が思い出の曲を聞いてストレスを減らしたり、ふるさとに帰ってホッとすることなども含む。
・  愛着関係は心理学的・生物学的機能を調整している。物事の習熟、学習、人間関係、認知機能、対処能力、自己評価、感情調節、睡眠の質、痛みの強度など。
・子どもは「安全の基地(両親のもとなど)」で安心が充足すると、外に出ていき遊んだりチャレンジしたりする。疲れたりストレスがたまったりすると、再び安全の基地に戻ってくる。このプロセス(安全感の輪)を何度も何度も繰り返しながら子どもは成長していく。
・安全感の輪のサイクルが安定することが、トラウマや愛着の問題に介入するためにも重要。治療の土台作りが大事だし、治療プログラムのあとにも支援は続いていく。
・アメリカの小児科医Krugmanは虐待防止対策が進んでいく経過についての図式を発表している。ー匆颪狼埖圓梁減澆鯡技襦⊆匆颪虐待の存在に気づく。親から精力的に分離。た討悗了抉腓始まる。ダ的虐待への対応を模索。Φ埖圓糧生予防活動が盛んに。
・トラウマを受けた子どもに対する立証された治療法には以下のものがある。.肇薀Ε涵播晴叔知行動療法(TF−CBT)。家族のための代替案:認知行動療法(AF−CBT)。親子相互交流療法(PCIT)。
・PCITでは親子が遊んでいる様子をミラールームで治療者が観察し、トランシーバーを使って親に声かけをしていく。ほめることが中心。いい点は、親子の様子を直接見て介入できること。欠点は人手や設備の問題で、できる施設が限られていること。
・TF−CBTはいろんな治療技法の要素がバランスよく取り入れられている。明らかなトラウマ症状がある子どもが対象。手順通りに進めることが大切。
・技法以前の基本として、安全・安心の確保がなによりも大切。そのうえで正しい知識を伝えたり、自分の体験を少しだけ離れた視点から観察してもらったりしていく。

 

●「発達障害への治療」(高橋秀俊)
◎自閉スペクトラム症の治療の概要
・自閉スペクトラム症の特性を持つ子どもは軽い子から重い子まで連続的に分布している。診断に至る子どもよりも、「診断に至らないけれど特性がある子ども」の数の方が多い。
・自閉スペクトラム症の有病率は1〜2%。70%以上に医学的・発達的併存症がある。知的発達症〜45%、ADHD28〜44%、チック14〜38%。不安42〜56%、抑うつ12〜70%、強迫症7〜24%、精神病性障害12〜17%、反抗挑発症16〜28%、睡眠障害50〜80%。てんかん8〜30、消化器疾患9〜70%、免疫疾患〜38%。
・ 発達症に対する精神医療の役割には以下のようなものがある。“達的視点に立った的確な診断(治療の方向付け、診断書や意見書、合併精神疾患の有無)。合併症状への治療。精神科的な見守り。ご超調整や地域連携のマネージメント。
・自閉症症状そのものへの治療に有効な薬物は現状ではなく、併存症状の軽減を目的とする。
・就労支援につなげるうえでは、生活リズムの確立と、不安や衝動性のコントロールが大切である。
・地域の専門病院からかかりつけ医へ典型的な軽症例を回していくことで、地域の医療ネットワークを広げていくことができる。
◎医療と教育の連携 過疎地域での取り組みの紹介
・教育や福祉は担当者が変わっていくため、1人が変わっても大丈夫なようにネットワークで支援に当たっていく必要がある。
・行政とのかかわりが大事である。まずは市町村の担当者のところに行き、どんな支援があるのかを聞いてみる。
・担任だけでなく、複数の教員と交流することが大切である。
・東京都大島町(人口約8200人)での取り組み。‖臈膂緡泥札鵐拭爾任糧達外来の開設(月1回、9:30〜13:00、14枠)。医療ー教育連携。年4回の学校訪問(ケース相談・研修会)。年3回の保育園訪問。6軌薜儖会の巡回相談事業。年2回の学校訪問(個別相談)。づ豕都教育庁の専門医派遣事業。高校へ年2回(個別相談・講話)。ジ生貭鯵仍里砲茲觚生貳達相談。
・細々とでもいいので、精神科からの継続的な関わりが大事。
・過疎地域における医療ー教育連携には以下の点が大事である。|楼萋胆を把握し、地域のニーズに応じて、スモール・ステップで継続していく。地域で勤務する職員との継続した連携・情報伝達。H鷯鏘个寮賁膺Δ粒判次
◎初回面接時の対応
・初めての面接では伝えることのポイントを絞る。
・一気にたくさん話すと混乱する人もいる。必要最小限にとどめる。
・相手のニーズを知ることが特に大切。でも畳みかけないことが必要。
・受診を決意した子どもと親をねぎらうことが大切。保護者の対応をいきなり否定しない。
・子どもの精神科初回面接の目標。ー診動機を知る。¬簑蠅どのように起こってきたかを知る。子どもの発達過程を知る。せ劼匹發伐搬欧梁莪谿象をとらえる。ゲ搬牡愀犬陵融劼鬚弔む。子どもの問題とその発生要因についての仮説を組み立てる。Г修慮立てにもとづいて治療・支援を始める。
◎感覚特性について
・自閉スペクトラム症の子どもには感覚の問題があると考えて治療に臨む。
・自閉スペクトラム症児の聴覚性瞬目反射のおける特徴。.圈璽までの時間である潜時が延長。⊆紊げ擦悗糧娠が増大。これらは自閉症特性や情緒・行動の問題と関連している。
・65dBは一般生活でのありうる音のレヴェルだが、自閉スペクトラム症の子どもが反応することがありうる。
・現代は高速道路のすぐそばにも住宅が建つなど、音環境への配慮が少ない。
・オープンプランの保育園では一日中音のレヴェルが高い。

 

●「不安・強迫関連疾患への治療」(松本秀夫)
・「病態水準」は古い概念であるが、現代でも有効である。横断的な精神医学的な症状から診るだけでなくて、人格がどのような状態なのかを明らかにしようとするものである。
◎分離不安症
・分離不安症は保育園児に多く、母親との分離に強い抵抗を示す。
・愛着が健康に形成されている子どもにでもみられることがあるので、その子の精神面がどれだけ育っているのかの評価が大事。
・母親自身も分離に不安を持っていることが多いので、母親に安心感を持ってもらうことが大事である。
・治療は健康度が高ければ母親からの分離が基本である。愛着対象を徐々に保育士や養護教諭へ移行していく。薬物療法を行うことはまれである。
◎選択制緘黙
・ほぼ正常な言語理解能力、十分な表出性言語能力、ほぼ正常な会話能力などがあることが前提。
・発症は幼児期である。
・選択制緘黙は「家ではしゃべれるが、学校や病院ではしゃべれない」といった状態。全緘黙もまれにだが存在する。
・言語発達の遅れや自閉スペクトラム症の併存が多い。
・長期的な予後はさまざまである。粘り強い支持的な関わりと環境調整が大事である。
◎10歳の壁
・10歳は子どもの精神科医療にとって大事な年齢である。
・言語化能力の高まりとともに、死の概念が意識されるようになる。あわせて宇宙、永遠、自分の存在といったことも意識され始める。
・10歳を越えると、子どもの精神疾患が大人のタイプに近づく。おそらく脳の発達と関係していると考えられる。
◎全般不安症
・ここ半年間は出来事や活動への過剰な心配や不安が起こる日の方が起こらない日よりも多い。
・その心配を抑えることが難しい。
・落ち着きのなさ、疲れやすさ、集中困難、イライラ、筋肉の緊張、睡眠障害などを伴う。
・10歳前後から認められ、不登校などの背景になる。
・気づきにくい疾患であり、常に念頭に置くべき。
・子どもでは成人と比べてさらに不安が漠然とするため、言語化が難しい面もある。
・薬物療法はSSRIが基本。
◎限局性不安症
・特定のものへの顕著な恐怖と不安。
・日常生活に支障をきたす程度であるなら、薬物療法や認知行動療法の対象となる。
・自閉スペクトラム症の感覚過敏との区別に注意。特に自閉スペクトラム症の聴覚過敏には成長とともに悪化していくようなケースもあるため注意が必要。
◎社交不安症
・社交場面に対する著しい恐怖や不安。本人は行動や不安症状で否定的な評価を受けるのではと恐れている。
・10歳前後から認められる。
・他者視線恐怖や自己視線恐怖の形式をとることもある。
・自我同一性獲得など青年期の心性と深く関連する疾患であり、不登校や引きこもりなどの背景として認められることが多い。
・薬物療法だけでなく精神療法が不可欠。
◎パニック症
・児童期では診断基準をみたすほどの状態はまれである。
・しかし確かに存在し、10歳頃から認められる。過呼吸症候群との関連が注目される。
◎強迫症
・小児の場合は強迫観念にとどまることはまれであり、行為におよぶことがほとんど。
・母親などの家族を巻き込むことが多い。
・小児では症状が自我親和的であることが多い。内省や病識に乏しいことも多い。
・自閉スペクトラム症、トゥレット症、ADHDなどに伴う場合が多いため、鑑別や併存に注意する必要がある。
・治療は心理教育を含む認知行動療法と薬物療法が重要である。


●症例検討
・強迫症の子どもの診療では、必ず自閉スペクトラム症のチェックが必要。
・自閉スペクトラム症に強迫行為を伴っているケースでは、ー閉スペクトラム症の強迫行動とみなす、⊆閉スペクトラム症に強迫症が合併しているとみなす、のいずれとみるかによって治療の方向性が異なる。
・,任枠辛行動を変えようとはせずに、情緒面の安定をはかることを治療目標とする。薬物療法では抗精神病薬が有効。
・△任鰐棲里紛迫観念がみとめられることが多く、認知行動療法でアプローチする。薬物療法ではSSRIが有効。


写真1 研修会場である九州大学の百年講堂

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2017年1月日録1

1/3(火) 天気が良かったので、僕の母といっしょに子どもたちを公園に連れていった。行った先は熊本県八代市の日奈久(ひなぐ)にある公園「日奈久ドリームランド  シー・湯・遊(しーゆーゆー)」(〒8695138熊本県八代市日奈久平成町、電話0965382039)だ。とても広いグラウンドといっしょに大きな遊具があり、幅広い年齢の子どもたちが遊べる。すぐ目の前に海が広がっており、解放感がある。
   公園で他の女の子がやすみと遊んでくれた。自然とその子のおばあちゃんともお話した。その人たちも温泉に行くとのことで、いっしょに「日奈久温泉センター  ばんぺい湯」(「ばんぺいゆ」は地域特産の果物の名前、〒8695135熊本県八代市日奈久中町316、電話0965380617、ウェブページ)に出かけた。実際に温泉の湯船に果物のばんぺいゆが浮かんでいた。その人の息子さんは熊本県芦北町の海水浴場でペンションをしているそうだ。次の夏にでも行ってみたい。
1/5(木) 吉田病院の子ども支援チームの月例会で、「ペアレントメンター」をされている東理絵さんが話してくださった。ペアレントメンターとは、発達症の子どもを持つ保護者で、研修を受けたうえで後輩の保護者の相談を受けている人のことだ。同じ立場の保護者として共感的に関わり、本人が少しでも安心して子育てをしていけるように支援する。
   実際にお話を聞いてみると、いくつか僕の思い違いがあることがわかった。.撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾老兮嚇に関わる存在ではなく、主に初期対応をする立場と位置付けられている。いろんな問題に振り回されて保護者は混乱していることがよくあり、ペアレントメンターは問題の「交通整理」を手伝う。▲撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾相談依頼を直接受けるのではなく、コーディネーターの人が窓口になる。相談の内容に応じてコーディネーターが最適なペアレントメンターを選ぶ。相談の際にもコーディネーターが立ち会う。コーディネーターは市町村の保健師や療育関係者がなることが多い。コーディネーターになるための研修を受ける。この日はコーディネーターの椎葉浩太郎さんも話してくださった。ぅ撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾牢靄榲にはアドヴァイスはせずに傾聴に徹する。あくまでも本人が答えを見つけていけるように関わる。ここが難しい。ゥ撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾牢袷瓦淵凜ランティアである。Ε撻▲譽鵐肇瓮鵐拭爾砲箸辰童虚な気持ちを持ち続けることが一番大事である。なのでペアレントメンターの研修では厳しい指摘を受けることもある。
1/8(日) 翌日の福岡市での研修会に参加するために家族で福岡県に出かけた。道中にあった「イオンモール筑紫野」で子どもたちを遊ばせることにした。3階にある子どもの遊び場「イオンファンタジーキッズーナ Supported by ボーネルンド筑紫野店」は規模が大きく、かつデザイン的に優れた遊具が多い。5時間の入場券を買ったのだが、子どもたちは疲れないようだった。見守る僕の方はなにもしていないのに、「脳が溶けそうに」なってヘトヘトになった。   
   やすみはお医者さんごっこが好きで、2時間近く「キッズ病院」のスペースで遊んでいた。やすみはお医者さん役で、僕は患者役だ。3分おきぐらいに「次の患者さん、どうぞ」「どこが痛いですか?」と言われるので、「頭が痛いです」とか「腰が痛いです」とか考えないといけない。しばらくすると症状を思い付かなくなってしまった。普段は「医療の世界は広いなぁ」と感じているのだが、やすみと遊んでいると「医療ってこんなに限られたことしかいていないんだなぁ」と感じた。

 

写真1 「日奈久ドリームランド  シー・湯・遊(しーゆーゆー)」にて。海辺にある公園で遊具が豊富だ。

 

写真2 母とお好み焼きパーティーをした。やすみも手伝う。

 

写真3〜4は福岡県筑紫野市にある子どもの遊び場「イオンファンタジーキッズーナ Supported by ボーネルンド筑紫野店」で撮った写真です。


写真3 壁のデザインが色鮮やかだ。

 

写真4 やすみはお店屋さんごっこを知らない子どもたちとしていた。

 

写真5 響は犬のチビのそばで遊ぶのを好む。

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2017年1月日録2

1/11(水) 人吉市の「認知症初期集中支援チーム」の活動が始まった。これは在宅の認知症が疑われる方を対象とする支援チームで、介護や医療にうまくつながっていない場合や、つながっていても問題が起きている場合に、状況を整理して適切な支援につなげることを目標として関わる。中核のメンバーは社会福祉士・保健師・医師だが、他にも多職種が参加して、いろんな角度から状況をアセスメントする。
初回だったので皆さん緊張されていたが、和やかな雰囲気の中で議論が進んで良かった。参加者全員から自由な発言が出てくることが理想で、くつろいで話せる雰囲気を作っていきたい。支援者が個人で難しいケースを抱えてしまうと、「どうしようもない」という絶望的な気持ちになってしまう。大勢で背負えばそこまで切羽詰まった気持ちになることはないし、意外な角度から支援が進んでいく。認知症初期集中支援チームに参加する支援者がリラックスできることがなによりも大切なことではないかと思う。 
保育園に娘のやすみのお迎えに行くと、同じクラスの子どもたちがサッと寄ってきて抱き着いてきてくれる。
子どもたちは抱っこされたがるので、順番に数人を抱っこすることもある。とてもうれしく癒される瞬間だ。僕は比較的最近まで「小さい子どもにはどう接していいかわからない」「小さい子どもは苦手だ」と思ってきた。それが子育てをするなかで苦手意識が消えていき、いまでは発達症の子ども支援までしている。「人生の先のことはわからない」とつくづくと感じる。
1/12(木)  後見制度の勉強会に参加した。後見制度とは、認知症や精神疾患、発達症などがあって金銭管理や手続きができない人のために、後見人が代行する制度のことだ。近年、社会的な必要性が高まっている分野だ。
 勉強会に参加しているのは医療関係者ではなく、弁護士や司法書士など法律関係の人たちだ。僕が普段全然接することのない人たちなので、お話を聞いているだけでとてもためになる。詳しい議論の内容はわからないが、状況をどのように法的に整理してとらえるかが大事で、「適切な見立て」の威力がすごいことはわかる。見立ての力が必要なのは医療でも法律問題でも同じなのだと感じた。
1/16(月) 病院での治療に苦労しているケースで、地域の支援職のおかげで前進できたということが増えてきている。保健師、社会福祉士、計画相談支援員、福祉課、社会福祉協議会といった立場の人たちと知り合うことが増えるにつれ、助けてもらえることも多くなっている。「地域での多職種連携」と言葉で言うのは簡単だが、実現するには長年にわたる地道な「顔の見える関係作り」が求められる。僕は球磨地方に来てからもうすぐ14年になるが、いっしょに支援に当たった地域の方たちが、助けてくださっていると感じる。そして地域連携は精神科領域では特に大きな力を持つ。地域の支援職の皆さんと協力して、オーケストラのような感じで、大きな支援の流れを作っていけたらと思う。
1/17(火) 数日前から美紗さんの体調が悪かったのだが、昨夜とうとう発熱して吐いてしまった。検査を受けるとインフルエンザA型だった。同僚に勧めてもらって僕も検査を受けたのだが、マイナスだったので、予防投与を受けた。子どもたちも熱が出たり機嫌が悪くなってきていて、インフルエンザが移っているみたいだ・・・。
   子どもを持ってみてわかったのだが、感染症の流行の時期は大変だ。子どもはかかりやすいし、保育園や学校などたくさん人がいる場所にいるので、集団発生しやすい。「自分が最初になって病気を持ち込むんじゃないか」という心配のストレスもある。周囲にも白い目で見られる。家族みんなでかかって、家中で寝込むという状態にもなりうる。感染症の破壊力はすごいと思った。

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2017年1月日録3

1/19(木) 湯前中学校と小学校の「健康教育講演会」でストレス対処について話させていただいた。小学5年生から中学3年生まで160人ぐらいが集まってくださった。子どもたちを前に話すのは展開が読めずに緊張するが、やりがいがある。特に子どもたちの質問に答える時間が僕は好きだ。「ドラえもんは好きですか?」といったユニークな質問があるとうれしくなるし、そういった一見精神科と関係のないような質問からの方が本質的な話につながることが多い。多様な背景を持つ子どもたちが楽しんで過ごせるような学校になっていってほしいと思う。
  最近球磨地方の施設や病院に行くと、「人手不足で運営規模を縮小しています」という話をよく聞く。ニーズはあって利用希望者はいるのに、スタッフの確保ができないから、受入数を減らさざるをえないということだ。「少子高齢化で若い人が足らなくなる」と頭ではわかっているつもりだったが、実際にそうなっているんだと驚いた。人吉市よりも周辺町村の方が早く進んでいる印象がある。今後は吉田病院でも同じようになる可能性がほぼ確実だ。地方の市町村ほど早く人口が減っているので、全ての活動の規模を縮小せざるをえないだろう。この変化はいずれは大都市にも及んでいく。
1/21(土) 第1回の「県高合同学習交流会」で話させていただいた。これは球磨地方の教員の方たちの勉強会で、小学校・中学校・高校の先生方が一緒に集まって学ぶところに意義がある。普段はなかなかないそのような貴重な場を提供していただいてありがたかった。
僕は「発達症の支援」について話した。すでにあちこちで話してきているテーマだが、現役の教員の方たちに直接お話しする機会はなかなかない。なのでどんな質問を出してくださるかが楽しみだった。受診につなぐ難しさについての質問が多かったのが印象的だった。
   僕の話の後に、小学校や高校での発達症支援の取り組みの発表があった。僕は普段は高校の先生たちと接する機会がほとんどないので知らなかったが、高校でも「特別支援教育コーディネーター」の先生を中心に手厚い支援をされているとのことだった。これからは高校の先生方ともっと交流して、現場での実践やご苦労について教えていただきたいと思った。 
1/24(火) 相談を受けるために人吉市の「おこば保育園」に出かけた。僕は保育園に行く機会が少ないので、見学もさせていただきたかった。おこば保育園の永田園長とは以前会議でいっしょになり、子どもの発達支援に熱心な方だと知っていたので、永田園長のお話を聞くのも楽しみだった。
   予想通り永田園長も保育士さんたちも個々の子どもの特性に配慮したうえで保育を展開されていた。保護者とも密なやり取りをして、保護者支援もされている。予想外だったのは、20年以上前から肢体不自由や発達症の子どもたちを受け入れてこられた歴史だった。現在ほどには発達症の支援体制が整っていなかったはずで、そのときから地域のニーズを汲み取って保育をされていたのはすばらしい。またいつか吉田病院でもお話していただきたいと思った。
   人吉市立第一中学校の「家庭教育学級」で保護者の方たちを対象に発達症の話をさせていただいた。僕の話の内容はいつもとほぼ同じだが、支援者向けではなくて保護者の方たち向けに話すのは緊張する。60〜80人ぐらい集まってくださったが、皆さん真剣に聞いてくださった。質問を受けれなくて残念だったが、保護者の方たちと直接話し合う機会を作っていきたいと思った。
1/25(水) 球磨地方の教育事務所や学校で、ケース会議4つに参加した。最近は子どもの支援者や学校の先生方とお話する機会が多い。皆さん非常に協力的で、子どもの状態を把握したうえで、いっしょに支援体制を作ってくださる。僕は普段は書面で情報提供しているが、こみ入ったケースではやはり顔を会わせての会議が有効だ。僕のような精神科スタッフは教育がうまく進むように応援する立場だ。どんどん活用していただければと思う。

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