お休みどころ

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父について 2018年1月3日(水)

  12月31日から2018年1月1日の朝が僕の病院勤務でした。そのあと3日まで休めたので、滋賀県の両親宅に家族と帰りました。両親は共に今年70歳になるのですが、元気で生き生きしていて安心しました。
  美紗さんと結婚するまでは僕も父への苦手意識が強く、めったに実家には帰らなかったです。ところが最近は反対で、美紗さんと子どもたちを両親のもとに連れていくと喜んでもらえるので、僕も帰る度に実家に行きやすくなっています。もともと子ども好きな母はもちろん子どもたちとよく遊んでくれますが、子ども好きとは言えない父も、やすみとすごろくをしたり、しずくを抱っこしたりしてくれます。それを見ると、父とのギクシャクしたカンケイが昇華される気がして、僕もうれしくなるのでした。
  さて実家に帰って毎回驚かされるのが、父の該博な知識です。自然科学のことが多いのですが、科学を応用した技術の話題も多いです。量も多いし内容も深いので、ある意味ではこちらの頭が破裂しそうになります。ですが刺激的で考えさせられる内容なので、とてもおもしろいのでした。
  父の世界は大きすぎてなかなか全体像がつかめなかったのですが、今回の滞在中に「やはり父の原点は工学なんだなぁ」と感じました。工作機械の設計者として人生のほとんどを父は生きてきたのですから、当たり前と言えば当たり前の結論ですが、僕にとっては工学というものが「自分にあまり縁のないもの」だったので、つかみにくかったのでしょう。
  「工学とは」という言葉でインターネットを検索したら、すばらしい記事が見つかりました(http://www.ailab.t.u-tokyo.ac.jp/horiKNC/representation_units/9)。「工学と理学の違い」というのが記事のタイトルですが、内容はとても広いです。僕にとって印象的だったのは、工学がよりよい社会を作り出すためのものとして捉えられているところです。「工学は自然科学の応用である(応用に過ぎない)」といったイメージを僕も持っていたのですが、ずっと人間に近いというか、人間くさい学問なんだなぁと感じました。この記事にもありますが、法学や倫理学といった分野との接点があるんですね。
  工学というものを真ん中に置いて父を見てみると、父の話は工学についての知識と実践を土台として、そこに豊富な人生経験を織りまぜたものだとわかります。父は非常に理論的に話す一方で人間観察に優れたところもあって、その関連がわからなかったのですが、これは工学という分野そのものの持つ二面性なのかもしれません。科学技術という面では自然科学の法則に従うのですが、商売として成り立たないといけないという意味では社会情勢や人々のニーズに従います。お金の動きにも敏感でないといけないんですね。
  「優れた文学者には全方位的な知識と関心がある」といった文章を以前読んだことがありますが、父にも特定の分野に縛られない見識の広がりがあると思います。それと同じことかもしれませんが、「どんなに複雑で抽象的な内容でも、子どもが話すような日常語で説明しようとする努力」が父にはあります。細かく話そうとするだけではこれはできず、自分なりの世界観のなかに対象を置いて考える習慣がないとできないことです。こういった父のすばらしさは、「身近にいるうちに、知らず知らずに自分に染み込んでいる」ようであってほしいです。
  僕の場合は精神科医療を自分の持ち場にしています。工学よりもずっと人間や社会寄りの分野になりますが、自然科学の普遍的な法則性も背景にはあるのです。精神科分野に関連した自然科学をもっと勉強して、父と語り合ってみたいなと思いました。

 

写真1 しずくを抱く父。恥ずかしそうだが、孫にも優しい。

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「発達障害支援医学研修」に参加する 2018年1月23日(火)

  東京都にある「国立精神・神経医療研究センター」で開かれる「発達障害支援医学研修」には去年も参加しました。これは都道府県の発達症支援の拠点医療機関の医師などを対象にしたもので、地域のかかりつけ医に伝達研修をして発達症支援の質を高めることを目的としています。僕は県の拠点となる医療者などではありませんが、県庁の方が推薦してくださり、幸いにも参加できました。去年の内容も日々の診療に直結して役立っており、受講できてありがたかったです。
  去年のものが前半なら、今年のものが後半といった感じです。今回の研修は特に発達症の人の就労支援、発達症に伴う不器用さの評価、チックの治療といった現場でよく関わる問題が取り上げてあるので、特に楽しみです。
  ところがいよいよ明日東京への飛行機に乗るという日になって、大雪の情報が入ってきました。東京も含めてあちこちで大雪になっているというのです。人吉市は幸いにして雪にはなりませんでしたが、東京は大混乱しているようでした。無事に飛行機が動くのかが心配になりました。
  熊本県南部の芦北・水俣の学校保健会研修会で話させていただいたあと、鹿児島空港に家族で向かいました。飛行機はやはり出発が30分遅れです(ただそのおかげで家族で空港で夕食を取れましたが)。飛行機は飛んだものの、羽田空港のそばに来てからも、グルグル回るばかりでいっこうに着陸しません。空港も混乱しているようです。そのあとに移動に使った電車も、やはりダイヤの乱れがありました。ホテルの最寄りの久米川駅に着いてみると、積もった雪が凍っています。夜の23時を過ぎて、やっとホテルに着きました。
   なにはともあれ受講できるのですから、ありがたく思わないといけないですね。明日とあさっては朝から晩まで勉強に没頭しましょう(笑)。そして発達症の生涯にわたる支援の流れを作っていけたらと思います。

 

写真1 久米川駅に着くと、雪が凍っていた。

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「発達障害支援医学研修」に参加する2 2018年1月24日(水)

  以下は各講義のなかで印象に残った点のメモです。内容そのものではなく、あくまでも僕がおもしろいと思ったことの抜粋になります。場合によっては僕の誤解や間違いもありえますが、文責は僕にあります。
 
●「厚生労働省の発達障害支援施策」(日詰正文)
・ 法制度の整備の始まりは1980年にさかのぼる。それまでは発達障害のために問題行動や自傷行為などが起こっても、家族や一部の施設や一部の病院で背負うしかなかった。
・ もっと身近な多分野の機関で引き受けていけるように、というのが法制度整備の流れ。
・ 発達障害支援の法制度のいちばんベースになるのが「発達障害者支援法」(2004年に成立)。
・ 〕解の促進、∪験菫竿未了抉臑タ福↓O携促進、の3点が発達障害者支援法の趣旨だが、連携促進が行政だけでは難しい。
・ 発達障害と知的障害の両面がある場合には、両方の支援を使える。例えば精神保健福祉手帳と療育手帳のどちらでも取得できる。両方の差はなくなってきている。
・ 位置付けとしては発達障害者支援法は精神保健福祉法の一部分を強調したような形になっている。知的障害、発達障害、精神障害の支援は1つにまとまっていく流れにある。
・ 発達障害の支援に関連する法律はたくさんある。障害者基本法、障害者自立支援法、障害者総合支援法、児童福祉法、障害者虐待防止法、障害者優先調達推進法、障害者雇用促進法、障害者差別解消法、など。これらへの発達障害の位置付けはできてきている。
・ 発達障害者支援法は 2016年に法改正された。目指す支援体制として、「ライフステージを通じた切れ目のない支援」「家族なども含めた、きめ細かな支援」「地域の身近な場所で受けられる支援」を挙げている。
・ 具体的には教育支援、権利擁護、就労支援、地域生活支援などが強化された。警察、裁判所、刑務所などの司法関係機関にも理解促進を要請している。
・ 発達障害による受診者や障害福祉サービスの利用者は増えている。
・ 各都道府県や指定都市に設置されている発達障害者支援センターの相談件数も増えている。特に成人期の相談が増えている。
・ ハローワークを通しての就職件数も増えている。
・ 強度行動障害に対する支援は入所施設だけでなく、在宅や通所でも受けられるようになっている。
・ 精神保健福祉センターに自ら来所した思春期・青年期の引きこもりケースの実態調査では、約8割のケースで背景にある精神障害が診断された。そのうち発達障害を中心とするものは約3分の1であった。
・ 発達障害者支援地域協議会が各都道府県で行われている。
・ 発達障害の早期発見のために、1歳6ヶ月健診で使えるM-CHATや、3歳以降で使えるPARS-TRなどが活用されている。
・ 専門家が保育園などを巡回して支援を行う巡回支援専門員整備事業も行われている。
・ 子育てに難しさを感じる保護者のためのペアレント・プログラムも行われている。
・ 専門医がいる地域の拠点病院とかかりつけ医の役割分担や連携を強めるために、かかりつけ医等発達障害対応力向上研修も行われている。
・ 災害時の発達障害者支援のために、デジタル耳栓の普及などにも取り組んでいる。
・ 4月2日は世界自閉症啓発デーである。
 
●チック症・Tourette syndromeの診断と治療(金生由紀子)
・ チックの定義は「突発的、急速、反復性、非律動性の運動あるいは発声」。
・ 症状は以下の4タイプに分けられる。単純運動チック(まばたき、首ふりなど)、単純音声チック(咳払い、鼻ならしなど)、複雑運動チック(顔の表情を変える、跳ねるなど)、複雑音声チック(状況にあわない言葉など)。
・ チックは基本的には意識でコントロールできない(不随意)が、一時的・部分的に抑えられる面もあり(随意)、不随意でも随意でもない「半随意」というべき特殊な状態である。
・  チックには、「しないではいられない」といった前駆衝動が伴うことがある。
・  チックをすることで「まさにちょうどピッタリな『これだ』といった感覚を味わわないと気がおさまらない」という経験をしている人が約半数。
・  チックは変化しやすい。部位、種類、頻度が変化したり、軽快と増悪を繰り返したりする。
・ 心理的な緊張や疲労、睡眠、月経などによっても変化しやすい。
・ チックは4〜6歳で発症することが多い。
・  慢性化した場合でも、10〜15歳ごろに最悪になったのち、3分の2以上が成人期はじめまでに軽減する。
・   少数だが成人期まで重症なチックが続いたり、成人期に再発するケースもある。
・ チック自体は珍しくなく、子どもの5〜10人に1人が体験するとされている。ほとんどは持続が1年以内の暫定的チック症である。
・ 複数の運動チックと1つ以上の音声チックがあり、持続が1年以上であるものをトゥレット症と呼ぶ。1000人のうちの3〜8人の子どもにみられるとされる。
・ トゥレット症の8〜9割が併発症を持つ。特に強迫症やADHDが多い。
・ チックを持つ強迫症の特徴として、以下のことがある。若くての発症、男性に多い、感覚現象があることが多い、不潔恐怖などはないことが多い、対称性に関する強迫症状がみられやすい、ADHDの併発が多い、家族性がみられることが多い、抗精神病薬が有効なことが多い。
・ チックの症状と強迫症の症状は重なりあう部分があり、区別が難しいこともある。例えば熱い物に触ってしまう、壊れやすいと思うとよけいに壊してしまう、自分を叩く、自分の舌を噛んでしまう、など。区別にこだわりすぎず、強迫性と衝動性をあわせ持つことを踏まえて、本人の大変さを受けとめ、そのうえで対応を工夫する必要がある。
・ 習癖とチックには共通性が多い。爪かみ、唇を噛むこと、抜毛、皮膚をむしることなど。
・ 強迫症に関連する状態には、不安症、ためこみ症、ギャンブル障害、抜毛症、トゥレット症などがある。
・ 自閉スペクトラム症の常同行動とチックも区別が難しいことがある。チックの症状はまばたきや顔面の動きなど頭部に多く、動きが速い。自閉スペクトラム症の常同行動は手や指を揺すったり跳び跳ねたりが多く、動きがよりなめらかである。
・ 強迫症、自閉スペクトラム症、トゥレット症、衝動制御障害の4つは、同じグループだと見ることもできる。 強迫性と衝動性の比率の違いで区別されているが、連続的につながりあっている。
・ トゥレット症があると、ふだんはおとなしい性格の人にも、「怒り発作」がみられることもある。怒りのスイッチが入って止められないが、あとでは反省したり、ケロッとしていたりする。
・ チックは発達障害であるが、本人や家族にとっては受け入れがたいことがある。その場合はあせらずに、時間をかけて伝えていく。
・  トゥレット症と併発症の経過には、以下の2つがよくみられる。.船奪の改善と共に併発症が目立ってくる。基盤にある発達特性が明確になる。▲船奪の改善と共に併発症も目立たなくなる。自信が回復し、発達特性はあっても対人関係で大きくは困らなくなる。
・ 治療のための評価には、以下の視点が大切である。.船奪そのものの重症度。▲船奪による悪影響の度合い。J使症の重症度。ぅ船奪症に対する認識。セ劼匹癲Σ板蹇Τ惺擦梁仆菁塾呂笋罎箸蝓
・ 学校よりも家庭で症状が目立つことが比較的多く、逆は比較的少ない。
・ チック症の治療の土台は家族ガイダンス、心理教育、環境調整。必要に応じて薬物療法、認知行動療法、支持的精神療法、家族療法をつけ加える。
・ 併発症が重症の場合には、チックと併発症を総合した問題点を整理して、治療の優先順位をつけてから治療にのぞむことが大切。
・ 以下が本人や家族への説明のポイント。’承’修瞭胆やなりやすさが基盤にあって起こるもので、親の育て方や本人の性格の問題ではない。▲船奪は変動しやすいので、些細な変化で一喜一憂しない。チックを悪化させる要因があれば対策を検討する。ぅ船奪を本人の特徴として受容する。ゥ船奪だけにとらわれすぎずに長所も含めた全体を見る。λ椰佑できそうな目標を立て、それに向かって進むことを勧める。
・ チックについて同級生に説明して、本人・家族・学校の認識を一致させるのが理想。
・ 薬物療法としては、アリピプラゾール(子どもなら10mgまで)やリスペリドン(子どもなら3mgまで)が用いられる。
・ 認知行動療法としては、機能分析やハビット・リバーサルがよく行われる。
・ ハビット・リバーサルの要点は以下の3点である。ゝい鼎の促進。早く気づいて早めに対応する。拮抗反応訓練。チックといっしょにはできないことで、より目立たないことをする。ソーシャル・サポート。叱らずにコントロールしようとしていることをほめる。
・ 暴露反応妨害法も応用できるが、無理をさせ過ぎてはいけない。
・ 認知行動療法を導入する前提として、チックの受けとめができていることが求められる。
 
●児童・思春期精神疾患(発達障害を含む)の薬物治療ガイドラインの紹介(中村和彦)
・ 現時点では、自閉スペクトラム症の中核症状に対する薬物療法は確立されていない。
・ 薬物療法は補助的なもので、心理社会的治療や環境調整が優先する。
・ 自閉スペクトラム症の薬物療法の主な標的症状は「挑戦的行動」である。具体的にはかんしゃく、攻撃性、パニック、自傷行為、興奮、破壊的行動などを指す。
・ 他にも睡眠障害、ADHDの合併、強迫症の合併なども薬物療法の標的となる。
・ 家庭や学校の環境の問題や身体面の問題なども挑戦的行動を悪化させることがあるので注意する。
・ 睡眠障害に対する薬物療法を開始する前には、睡眠を阻害する要因がないかをていねいに調べる。睡眠パターン、就床時刻、睡眠環境、精神科的な併存症、日中活動、身体面の状態、内服薬、対人関係などに注目する。
・ 薬物療法の開始にあたっては、患者や家族のニーズや理解力を踏まえたうえで話し合い、必要な情報を共有したうえで決定する(共有意思決定)。
・ エビデンスに基づく治療を押し付けるだけではいけない。
・ 「米国児童青年精神医学会」は保護者向けの薬物治療ガイドを作った。養育者との考えのズレが減るので望ましいことである。
・ イギリスのガイドラインでは、治療開始後3〜4週で効果を判定し、6週後にも効果がなければ中止することを勧めている。
・ 専門医からかかりつけ医に治療を引き継ぐ際には、薬物療法に関する以下の点も伝達することが望ましい。”古症状は何か。∪犬犬晋果と副作用。今後減量できる見込みがあるか。ぬ物を続ける期間の見通し。ッ羯澆離廛薀鵑猟鷦─
・ ADHDの頻度は子どもの約5%、成人の約2.5%。小学生のころに診断されることが多く、不注意症状がより顕著。成長につれて多動は目立たなくなるが、落ち着きのなさ、不注意、計画性のなさ、衝動性に伴う困難は持続することが多い(6〜7割)。
・ 薬物療法はADHDの約7割に有効。原則的には心理社会的な治療が優先され、効果が不十分な場合に薬物療法が検討される。
・ 薬物療法を開始する前に脈拍、血圧、身長、体重、心電図、血液検査、心疾患などの既往や家族歴などを確認するのが望ましい。
・ 第一選択薬はメチルフェニデート徐放製剤かアトモキセチン。即効性や日中の効果を主に期待する場合はメチルフェニデート徐放製剤を選ぶ。24時間の効果を期待する場合、液剤を使いたいとき、不安症やチックの合併、薬物乱用歴があるときなどはアトモキセチンを選ぶ。
・ メチルフェニデート徐放製剤とアトモキセチンの併用のエビデンスは蓄積がない。置換が原則。
・ 海外のデータを見ると、第三選択薬の候補はクロニジン、グアンファシン、モダフィニルなど。
・ 自閉スペクトラム症とADHDの合併例にも薬物療法の効果はみられるが、有効性は低く副作用が出やすい面がある。
 
●非日常における発達障害児支援の考え方:熊本地震の経験を元に(木村重美)
・ 熊本市子ども発達支援センターでは「1ヶ所集中型」ではなく「地域ネットワーク型」の療法システムを目指している。多数の機関と連携して支援に当たる。
・ 電話相談、来所相談、訪問相談の件数を合わせると年に11000件を越える。
・ 保育園などにそれぞれ1人のコーディネーターを養成する活動をしており、ほぼ全ての園にコーディネーターがいるようになった。
・ 熊本地震のあと、建物の被災のために20日ほどはセンター業務を休止せざるをえなかった。その間に以下のことに取り組んだ。避難所での合理的配慮の支援やパンフレットの作成。視覚支援。発達支援者や家族への食料やおむつの配給。一時預り。恐くて自宅に戻れない子どもが多かったので、不安の軽減のための絵本の製作。
・ アンケートの結果から以下のものがあるとより子どもに症状が出やすくなるとわかった。IQが高い。車中泊。保護者の不調。保護者が子どもへの対応に悩んでいる。保護者が怒ること。
地震後3ヶ月経っても改善しにくい症状には以下のものがある。暗がりを怖がる。大きな音を怖がる。トイレにひとりで行けない。甘える。閉ざされた場所を嫌がる。乱暴な行動が増える。指しゃぶり。
・ 支援学校など子どもが慣れ親しんでいる場所が避難所になるのが望ましい。
 
●発達障害児のQOL向上のための支援策(古荘純一)
・ 子どものQOLは成人のQOLとは質的に異なるとされており、別の尺度が必要である。
・ 子どものQOL尺度は子どもが内容を理解でき、長時間かかりすぎないものであることが求められる。KINDL Questionneireはそのような尺度の1つである。
・ KINDL Questionneireは以下の6項目で構成されている。/搬療健康、∪鎖静健康、自尊感情、げ搬欧箸隆愀検↓ネГ世舛箸隆愀検↓Τ惺酸験茵
・ 発達障害児の主観的QOLは対照群の子どもに比べて高いことが多い。
・ 薬物治療、併存症、本人の意思に合わない提案などによってQOLが下がることがある。
・ 発達障害支援には、以下の3つの軸が大事である。/搬両評や併存症の評価。愛着の問題や家庭環境を評価。I堙応の状態の評価。
・ 発達障害支援を受ける対象の人たちも以下の3段階で考えると有用。仝沈の範囲にとどまる人たち、周囲の理解と配慮は必要。⊃巴粘霆爐鯔たし、何らかの支援を必要とする人。0緡纏抉隋β真種連携支援の必要な人。

 

写真1 積もった雪が凍っていた。

 

写真2 研修の会場。

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「発達障害支援医学研修」に参加する3 2018年1月25日(木)

●地域における発達障害支援:埼玉県発達障害総合支援センターの目指すもの(渡辺千津子)
・ 埼玉県は人口が約730万人と多く、支援を要する発達障害児も多い。そのためにまずは対応できる人材を増やすことに力を注いだ。
・ 専門性の高い支援は外部機関に委託し、県庁では仕組み・体制つくりを行った。
・ 5年間で10549人の養成を行った。保育園などでは1園3人、小学校では1校6人の支援体制を目安とした。
・ 医師・看護師・保健師・作業療法士といった専門職向けの研修も継続的に行っている。
・ 保育所などや通所支援事業所への巡回相談も行っている。
・ 親支援のための「子育て応援講座」、ペアレントトレーニング、ペアレントプログラムなども行っている。
・ 「中核発達支援センター」としての医療機関を3か所指定している。
・ 地域療育センターの支援は診断のない子どもも受けられる。75%は診断のない子ども。
・ 「発達障害者就労支援センター(ジョブセンター)」を4か所開設した。平均9カ月の利用期間で就労につながっている。診断を受けていない人も利用できるため、引きこもっていた人などが利用しやすい。
・ 発達障害の子どもが不登校になった際、社会的な経験をできなくなってしまうことが大きな問題。勉強よりも社会的な経験の価値は大きいとも言いうる。実際に企業も技能よりも社会性(あいさつ、協働、報告、毎日の出勤、責任感、質問できる、自分の障害を説明できる)を求めているというアンケート結果がある。
・ 就職するためには以下の3点が大事。)椰佑陵解:SOSの出し方、人に頼れるようになること。企業の理解:決まったことならきちんとできる人が多いことを知ってもらう。2搬欧陵解:家族の受け入れがあると支援が進みやすい。
・ 医療には障害福祉サービスを受けるための窓口としての意義もある。
・ 成人の発達障害の診断と支援が求められている。
 
●自閉症スペクトラム青年のこころの問題:その理解と支援(桑原斉)
・ 脳の灰白質の体積のピークは小児期にあるのに対し、白質のピークは成人期にある。脳の構造の発達は一律ではない。
・ 青年期は複雑な時期で、理解のしかたもさまざまである。
・ 現代日本ではモラトリアムの時期が伸びている印象がある。
・ 損なわれた健康生活の年月を算出する「障害調整生命年」という指標がある。これでみると、10〜24歳の時期に悪影響を及ぼす疾患には精神疾患が多い。
・ 自傷行為は15歳以降は減っていき、17歳以降は低い水準のまま29歳まで推移するというデータがある。
・ イギリスのNICEという団体が、診療の均てん化のために、あらゆる疾患の診療ガイドラインを出している。無料でアクセスでき、診療の参考になる。
・ 自閉スペクトラム症の診断においては、社会機能に重大な障害を引き起こしているかの判断が大事である。ただ青年期には一般的にいろいろな問題が起きやすいので、重大な障害かどうかの判断が難しい場合がある。
・ 自閉スペクトラム症を診断する際には、「診断することで本人がどんなメリットを受けれるか」をよく考えるべきである。
 
●不器用児のみかた(斉藤まなぶ)
・ 発達性協調運動症とは協調運動の技能がうまく獲得されない状態。協調に関する脳機能の発達に問題がある。
・ 協調運動や活動には以下のようなものがある。乳児ならおすわり・ハイハイ・立ち上がり・構音。幼児なら食事・着衣・描画・書字。学童ならスポーツ・楽器演奏・自転車。成人なら整容・調理・自動車運転など。
・ 発達性協調運動症は学齢児童の5〜6%。男性が女性より多い。併存障害にはADHD(50%)、学習症・自閉スペクトラム症・言葉の遅れ(70%)などがある。
・ 運動機能のアセスメント・ツールには、DCDQ、MABC-2、JMAP、感覚プロファイル、WISC-犬覆匹ある。
・ 弘前市の5歳児健診で得たデータも、過去の報告とほぼ同じ。発達性協調運動症の有病率5.4%、男女比2:1、発達性協調運動症単独42.9%、自閉スペクトラム症併存36.7%、ADHD併存34.0%、知的発達症併存29.9%。学習症にも注意が必要。
・ 発達性協調運動症は70%が成人期にも残存するとのデータあり。
 
●発達障害支援の考え方(齊藤万比古)
・ 精神科領域では疾患概念に流動性がある。
・ 自閉スペクトラム症の子どもは、思春期になると友人がいなくて苦しむことがよくある。
・ 自閉スペクトラム症の子どもでは「心の理論」機能の成立が遅れるとされる(定型4〜5歳、自閉スペクトラム症8〜9歳)。
・ メンタライジング機能が十分に機能しないため、自己を相対化しにくい面がある。
・ 自閉スペクトラム症の子どもは不登校やひきこもりになりやすい。不登校も引きこもりもそれぞれの少なくとも4分の1は自閉スペクトラム症と考えられている。またいったん不登校や引きこもりになると社会への再参加の気持ちが出てきにくい。
・ 思春期になると自己の形成という問題が出てくる。ミラーリング的な働きかけを続けることが大事。
・ 遅くとも思春期までには障害告知を行う。自己を知ってもらう一つの文脈になりうる。
・ 成人後どのような社会生活が可能になるのか?という問題意識を常に持って支援に当たる。

 

写真1 外来にカフェがあり、うらやましかった。

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2018年1月日録1

1/1(月)  年末に子どもたちと友人の渡邉典子さん宅を久しぶりに訪ねた。典子さんは数年前に球磨地方に移住してこられたが、友人関係が広く、独自のネットワークを持っておられる。子ども食堂ができていることなど僕の知らないことをたくさん知っておられて驚いた。同じ球磨地方に住んでいても、「自分の付き合いの範囲」によって、得られる情報や見えてくる世界は違ってくる。現代は情報があふれているように言われるが、豊かなネットワークを持っていないと「生きた情報」は逆に得にくいのではないかと思った。
1/3(水)  実家に里帰りした際に、両親が僕たち家族を「箱館山スキー場」に連れていってくれた。僕は関西で育ったが、滋賀県にスキー場がいくつもあるなんて知らなかった。平地ではうっすら積もるか積もらないかの雪なのに、ロープウェイで高く登ると雪で真っ白だ。積雪は標高に深く関係する。
  平地では風が強かったのだが、高地では吹雪だった。つむじ風のような感じで、雪風が吹き付けてくる。すごく寒い。雪山は怖いと言うが、たしかに吹雪に取り囲まれたらつらいだろう。先も見えなくなるし、体力が奪われる。
  美紗さんの持っていたプラスチックのソリが吹雪に吹き上げられて、やすみの顔面に当たった。やすみは鼻血が出てしまった。美紗さんは真っ青になって心配していた。両親の提案でいったんロッジで休んだ。そのあとは吹雪がおさまり、子どもたちも遊ぶことができた。休む場所がなかったら、もっと気持ちがギスギスしていただろう。吹雪は恐ろしい。 
1/7(日)  久しぶりに窓拭きをした。家の1階の外回りの続きと内拭きをした。そのなかで気づいたのは、窓が汚れたままになっているところは、スペースとしてあまり活用できていないということだ。おそらく僕たちよりも前に住んでいた人たちのときからあまり掃除をされていなかったのだろう。結果的に僕たちもなんとなくそこに行かなくなり、スペースとして死んでしまう。家を広く使うためには、まずは掃除をしないといけないんだと感じた。

 

写真1    水上村の公園「ほいほい広場」にて。体を使う遊びが多い。

 

写真2〜5は滋賀県にある「箱館山スキー場」で撮った写真です。


写真2   ロープウェイで高く登る。

 

写真3   上は一面の雪だ。

 

写真4   ひと休みしたあとは、吹雪がおさまった。やすみは雪の上に寝転んでいる。

 

 

写真5   かまくらを作ろうとしたが、時間が足りなかった。

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2018年1月日録2

1/8(月)  実家の母が美紗さんと子どもたちといっしょに人吉市に来てくれた。そこで長崎県にあるテーマパーク「ハウステンボス」に出かけた。ハウステンボスはオランダの風物がテーマの柱になっている。母はオランダに3年住んでいたので、懐かしいのではと期待していた。天気は雨風が強くて良くなかったが、チーズフォンデュ、蘭の展覧会、イルミネーションなどがあり、母も楽しんでくれた。子どもたちは子どもたちで、トリックアート、ロボット館、ふわふわランドなどではしゃいでいた。遊園地の要素と文化施設の要素の両面があるので、子どもから年配の人までが味わいを見つけられるのが、ハウステンボスのすごさだと思った。
1/9(火)  熊本県阿蘇市にある黒川温泉の「いこい旅館」に出かけた。山奥にある秘境といった場所で、温泉が非常に豊富に沸き出している。建物も温泉も古い時代をイメージして作られてあり、タイムスリップして江戸時代に迷いこんだような異国感がある。それでいて現代の快適さも提供されているので、小さなテーマパークとも言える。雪が降るなか、こんなに不便なところに、たくさんの人たちが泊まりに来ているのは不思議だったが、別世界を味わえるからこそ人が集まるのだろう。海外の人も多かった。
1/10(水) 「人吉市くらし安心ネットワーク推進員養成講座」で話させていただいた。聞き手は民生委員などの公的なボランティアをしている人たちで、地域を良くしていこうという熱意があった。「精神障がいを持つ人たちとの接し方」がテーマだったが、楽しくてあちこち脱線した。質問もたくさん出た。ボランティアの方たちは基本的に熱心で、こちらも話しやすい。何らかの公的な活動に参加することは時間とエネルギーを要するが、得られるものも大きいのではと感じた。
1/11(木)  特別支援教育の「中高連携会議」に吉田病院スタッフといっしょに参加した。これは球磨地方の中学校や高校の特別支援教育を担当する先生方が集まり、現在の課題について協議する場だ。主催者の先生が非常に熱心で、従来は教育分野の方だけで進めていた会議に、僕たち医療者が関わることを企画してくださった。何度も話し合うなかで、今回は僕たちが架空の事例を提示して、支援策についてグループワークをしていただく形で進めることになった。また司会は同僚の看護師さんにお願いした。初めてのことづくしだったが、とても成功した。
  テーマは「多問題家族への支援」で、発達症を含む精神疾患や貧困、養育困難、社会的孤立といった複合的な問題を抱えるケースを提示した。どんな課題があるかの見たて、支援方法、連携機関の3点について議論してもらった。どのグループも穏当な意見に達していたが、風変わりな意見やおもしろい支援案は少なかった。看護師さんが議論の前にウォームアップを導入してくれたが、もっと気楽な雰囲気のなかで議論する文化を育てていく必要があるとも感じた。
  僕が大事と思う支援のポイントは以下のとおりだ。|影箸竜ヾ悗世韻妊▲廛蹇璽舛靴覆ぁ∀携しながら、支援者どうしが励ましあって関わる。成果を急いで求めない。い箸には支援者どうしでのガス抜きも必要。100%の力で関わらず、70%ぐらいの力で。ε模感を感じる自分を許す。Ц朕佑療慘鷲埖だけでなく、制度的な限界で支援が進まないこともある。┿抉腓靴覆ら、理想的な制度を夢見る。困難事例は「未来の支援のあり方」をかいま見せてくれる窓である。

 

写真6〜10は長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」で撮った写真です。

写真6 オランダの昔の町並みをイメージしてある。傘のアートがあった。

 

 

写真7 トリックアート館。壁に描かれた絵なのに飛び出して見える。

 

写真8 氷のカフェもあった。

 

写真9 ハウステンボスというオランダの宮殿が再現してある。

 

写真10 夜にはイルミネーションがある。

 

写真11〜12は熊本県阿蘇市にある黒川温泉の「いこい旅館」で撮った写真です。


写真11 急坂を下ったところに宿がある。

 

写真12 古民家の作りであり、非常に落ち着く。この写真で見るほど暗くはない。

 

写真13 朝起きると雪だった。

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2018年1月日録3

1/14(日)  5日程前から結膜炎になり、3日程前から右耳の耳鳴りがあり、昨夜から左耳が痛くなった。僕は病院嫌いなので受診をしぶっていたが、美紗さんの勧めで人吉市にある「豊永耳鼻咽喉科医院」を受診した。子どもたちが中耳炎で日常的にお世話になっている病院だ。結局、耳垢取りをしすぎての外耳炎とのことだった。外耳炎と聞くと簡単そうだが、夜も眠れないくらい痛みがあって参った。体の不調が起こるとすごく不安になる。友永院長が休日でも親切に診療してくださりありがたかった。困ったときに頼りになる病院は、安心して過ごせる地域作りにおいて必須だと思う。
1/16(火)  娘のしずくを連れて7・8ヶ月の幼児の健診に行った。しずくと同じ年代の子どもたちがいるのを普段は見ないので、新鮮に感じた。同じ8カ月でもハイハイをしている子もいれば、つかまり立ちをしている子もいる。髪の毛がふさふさの子もいれば、しずくのようにあまり生えていない子もいる。歯も生えていたり、いなかったりだ。子どもの発達は多様性が大きくて驚く。
  保健師さんによる生活・発達状況の聞き取り、身長・体重・頭位・胸囲などの測定、小児科医の診察、栄養士などによる指導、と健診は進んでいった。盛りだくさんなので、半日がかりだ。待ち時間も多く、ぼんやりしていた。他の子たちはけっこう泣いていたが、しずくは全然泣かなかった。以前からそうだが、しずくの特徴は穏やかさだと思う。
「球磨郡青年団」の皆さんに講演に招いていただいた。僕は青年団という組織があるのを知らなかったが、20代の若い人を中心にする集まりで、ヴォランティア活動などに取り組んでいるそうだ。吉田病院の文化祭でも、飲みものの販売をしていただいたことがある。僕の理解では、若者の成長と地域貢献のためのグループのようだ。
  講演の内容については、担当の方と話したうえで、成人の発達症の支援にし、特に職場のメンタルヘルス問題を中心に取り上げることにした。青年団の皆さんの関心が職場のことや上司との関係のようなので、その参考になればというのが意図だった。担当の方とグループワークも取り入れましょうと話したのだが、僕が忘れていて、当日にあわてて設問を作ることになった。
  皆さん熱心に聞いてくださったが、グループワークでは福祉に関心のある人とない人の温度差を感じた。関心のある人は支援策をあれこれ思い付くが、ない人は「これでは仕事は無理でしょう」というだけで終わってしまう。職場のメンタルヘルス問題の難しさもここにあって、無関心な人たちほど不満を強く持ってしまいやすい。このギャップを少しでも埋めるのが大切で、僕の話し方にももっと工夫が必要だ。
  そんなことを考えながらインターネット上の資料を調べていたら、「地域福祉」という言葉に出会った。「地域における「新たな支え合い」を求めてー住民と行政の協働による新しい福祉ー(概要)」という資料に書かれてあることは、僕がやろうとしてきたことに近くて驚いた。福祉という分野について系統立てて学んだことはないのだが、これからは調べていかないといけないと思った。
1/17(水)  小学校の先生たちと発達症の事例検討型の勉強会をした。発達症の特性については学校現場の先生方はよくご存じだが、実際に悩まれているのは発達症だけでなく家族背景に複合的な問題があるような事案だ。多職種連携の仕組みがまだできていないので、現場の先生が単独で抱えてしまって苦しまれていることが多いと思う。外部機関との連携の強化は学校の急務だと思う。
1/18(木)  小・中学校の養護の先生たちと事例検討型の勉強会をした。前日と同じ事例を使ったが、養護の先生は一般の先生たちよりもずっと医療者に近いと感じた。個別支援の経験が豊富にあられるので、支援策のアイディアがどんどん出てくる。僕も勉強になったし、発想が広がってうれしかった。養護の先生は学校と病院をつなぐ窓の役割を果たせる立場なのだと思った。

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2018年1月日録4

1/23(火) 熊本県の芦北(あしきた)や水俣(みなまた)といった地域は、地理的には僕が住んでいる人吉・球磨地域の隣になる。とはいえ人吉球磨が山奥の盆地であるのに対し、芦北水俣は海の地域で、地域特性はおそらく全然違う。土地勘がないこともあって、いままではあまり行く機会がなかった。
  ところがうれしいことに、学校の先生たちの勉強会に呼んでいただけた(学校保健会研修会)。以前人吉球磨で子ども支援をいっしょにした教頭・校長先生たちが異動され、主催してくださったのだった。最近になり芦北・水俣方面からの子どもの受診者も出てきているので、地域の方とのつながりを持ちたかった。
  比較的小さな会かと思ったら、80人ほどの人が参加しておられ、会場には熱気があった。僕が間違った資料をパソコンに出してしまったり、質問用紙の用意を主催者の方たちにお伝えしていなかったりで、いくつかハプニングがあった。でも主催者の皆さんがおおらかに対応してくださって、とてもありがたかった。
  今回の内容は発達症の支援の基礎編だったが、ほんとうに大切なのは事例検討型の勉強会だと思う。具体的な事例への対策をいっしょに考えるなかから、教育と医療の協力関係や役割分担が形作られる。学校の先生たちやスクールソーシャルワーカーなどの支援職の方たちといっしょに勉強しながら、つながりを作っていけたらと思った。そうするうちに子ども支援の新たな課題が見えてくるのではと予感する。
1/28(日)  妻の美紗さんが金魚が好きだ。いまではわが家に5匹の金魚がいる。ただ美紗さんが以前から買いたがっていたのは「らんちゅう」という種類の金魚だった。歴史の古い金魚だが、愛好家が多く、品評会も盛んだと聞いている。まるで赤ちゃんのような体形で、よちよち歩きのように泳ぐので、とてもかわいい。娘のしずくはいま8か月だが、ちょうどらんちゅうのような顔つきや体形だ。
  熊本県の北部にある長洲町(ながすまち)は金魚の大生産地で、以前からいつか行きたいと美紗さんと話していた。2月1日が美紗さんの誕生日であるので、誕生日に金魚を飼ったあげられたらとのことで長洲町行を計画した。ところが朝起きてみたら家の周りは雪だった。高速道路が止まらないかどうかが賭けだったが、幸いにして雪は早く溶け、支障はなかった。
  町の公園の一角に「金魚の館」がある。たくさんの水槽が並び、華麗な金魚たちを見れることがいちばんの楽しみなのだが、それ以外にも子どもの遊びスペースが充実していた。おそらく近所の子どもたちが一日中遊びに来ていて、やすみたちも交じって遊んだ。それがあまりにも楽しかったので、「帰りたくない」とやすみが激しく泣いた。
  長洲町には金魚の生産者がたくさんおられるが、僕たちは「らんちゅうの島崎」に行くことにした。島崎さんが自宅の裏を金魚生産用に改装され、らんちゅうを中心にいろいろな種類の金魚を育てておられる。新しい品種の開発も手がけられたそうだ。島崎さんは丁寧に説明してくださったうえに、らんちゅうを選んでくださり、育てるうえでのアドヴァイスやサービスをたくさんしてくださった。まるで娘を嫁に出すようなお話しぶりに、金魚に対して強い愛着を持って日々養育されていることがわかった。手間暇かけて丹精することは、まるでわが子を育てるようなことなのだと感じた。

 

 

写真14〜17は熊本県長洲町にある「金魚の館」で撮った写真です。


写真14 町の公園の一角にある。

 

写真15 さまざまな金魚が展示されている。

 

写真16 しずくは「らんちゅう」とよく似ている。

 

 

写真17 館内でお弁当を買って食べることができる。子どもの遊び場も充実している。

 

写真18〜19は熊本県長洲町の金魚の養魚場「らんちゅうの島崎」で撮った写真です。


写真18 自宅の裏を養魚場にされている。

 

写真19 島崎さんは非常に親切にしてくださった。やすみや響もかわいがってもらった。

 

写真20 らんちゅうが4匹来た。

 

写真21 もうすぐしずくはハイハイしそうだ。

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子ども支援チームの事例検討会 2017年12月7日(木)

  ここ数年僕は球磨地方の子どもの支援や診療に力を注いでいます。僕が務める吉田病院でも職員の有志といっしょに「子ども支援チーム」を作り、毎月例会を開いて勉強しています。内容は研修会の報告や資料を読んでの報告が多いですが、外部の支援職の人に話してもらうこともあります。いくら僕が子どもの外来・入院診療をしたいと思っても、仲間の皆さんに助けてもらわないとできません。チームで向上していくことこそがもっとも大事なことなのです。
  この子ども支援チームでは年に2〜3回地域の人たちにも参加してもらう大きな勉強会を開いています。いままでは外部講師をお招きして講演していただく形式でした。ですがもう少し参加型で実践的な研修会もしたいと思ってきました。
  子ども支援チームの運営の取りまとめをしてくれている同僚の植竹さん(精神科ソーシャルワーカー)と相談し、今度は事例検討型の勉強会をしてみようと決めました。そこからは植竹さんが1人で準備を進めてくれたのですが、僕は任せきりで特に関わることはありませんでした。僕がしたことと言えば、事例検討会のチラシができた時に、つながりのある支援職や友人たちに送ったぐらいでした。
  僕自身はいままで数多くの事例検討会に参加してきました。参加メンバーや検討の進め方はさまざまですが、「自分が頭のなかに持っている知識を血肉化する」「従来とは違った角度からケースを見直してみる」「他の職種の人の考え方や支援手法を知る」という意味で、事例検討は絶大な効力を持ちます。ある分野についていくら書物や研修や実践で学んでも、多角的に事例検討することを重ねないと、成長には限界がある、というのが僕の感想です。ですので事例検討型の勉強会には僕はできるだけ参加するようにしています。
  今回の事例検討会にも参加申し込みがきっと多数あるのではと思っていました。ですので参加者の数の心配はしていなかったのですが、会の10日ほど前に植竹さんとやり取りした際には、意外なことにまだ申し込みが少ないとのことでした。それからは当日に参加者が十分にあるかが心配になりました。
  ですが結果的には当日参加の方が多く、十分に参加者がありました。吉田病院のスタッフも含めて、各テーブル6〜7人で、6テーブルになりました。参加された方の立場も様々です。例えば僕のテーブルにはスタッフ以外に、役場福祉課の社会福祉士(ソーシャルワーカー)、小学校の教諭、ハローワークの職員、高齢者施設の作業療法士がおられました。教員・福祉関係者・医療関係者・行政などを中心に、多彩な参加者があり、僕の知らない方も大勢おられました。また子どもに関わる方だけではなく、成人や高齢者の支援に当たっている人も来られていました。
  会は社会福祉士が中心になって進んでいきました。架空の事例の提供も社会福祉士でしたし、各テーブルの進行役(ファシリテイター)も社会福祉士でした。これには植竹さんのひそかな自負心があったのではと考えています。それは「社会福祉士が子ども支援のコーディネーターだ」ということです。実際にその通りで、子どもだけでなく全年齢にわたる地域の困難事例の支援に関して、社会福祉士が一番重要な司令塔の役割をしていると思います。病院のスタッフは地域支援においては後衛に位置していて、社会福祉士をはじめとする地域の支援職がつないでくれて、はじめて支援に参加できる立場なのです。支援の最前線にいて初期対応に関われるという意味では、社会福祉士の人たちをちょっとうらやましく感じます。
  さて会は以下のように進んでいきました。架空の事例の概要が提示された後、各自が「もっと質問したい事柄」を書き出して、それを質問して事例の全体像をあぶりだしていきます。これは事例の分析の着眼点を見つける作業で、事例の見立てに関わるトレーニングです。また植竹さんの意図としては、同じテーブルの他の人の意見を見て、「こんな違ったところに注目するんだなぁ」と相互の違いを感じてほしいと思っていたそうです。僕の感想は、「みんな自分の仕事に関連するところからケースを探っていくんだ」でした。例えばハローワークの方は就労状況から、作業療法士の方は作業能力から、教員は学習状況や家庭背景から、社会福祉士はどのような支援が入っているかといった視点から、分析を進めていっていると思いました。
  ちょっと脱線しますが、僕の友人の島倉さんの言っていたことが思い出されます。島倉さんは飲料会社にいて自動販売機の営業の仕事をしたあと、空調の営業の仕事に移りました。「以前は地面を見て自販機を置けそうなスペースを探すのが癖でしたが、いまでは天井を見てエアコンを置けるスペースがないかを探すのが癖になりました」というのが島倉さんの言葉でした。人間はやはり習慣の生き物で、日々やっていることをもとにして新しい状況にも対処しようとするのだと思います。習慣は強力ですが、いっぽうで視野を狭めてしまう面もあると思います。自分と違った視点があることを学ぶことが大切なのですが、これがとても難しいです。事例検討会はそういう機会になるんですね。
  事例の全体像をあぶりだしてからは、参加者それぞれが自分の立場からどんな支援をしていけるかを話し合いました。ポイントは以下のことです。各自には専門性があり、できる支援には限りがあります。ですが他機関と協力することで、支援の難しいケースにも関わっていけないだろうか?あるいはほんの少しその限界の向こうまで支援の手を伸ばせないだろうか?そう考えてみることが大事であり、支援職の懐を深くする作業なのです。もちろんこれには危うさもあり、「出しゃばり」や「かき回すだけ」になってしまう危険があります。だからといって「決まった仕事だけをする」という態度では、困難事例は地域に置き去りにされ、支援職のネットワークも広がりません。「慎重に協議しながら、大胆にチャレンジする」という姿勢が必要なのだと思います。
  討論の結果を2つのテーブルから発表してもらい、検討は終わりました。最後に植竹さんが会の目標が達成できたかを参加者に確認しました。‖召凌種の強みや立ち位置を知る、∋例の見立てについての新しいアイディアを得る、C楼茲了抉膺Δ力携を高める、という3つです。どれも見事に達成できたのではないかと思いました。
  僕も挨拶をしました。ぼんやりと覚えている限りでは、触れたのは以下のことです。困難事例に関わっていると、事例が困難というよりも、「問題が多分野にわたっていて、支援職どうしがつながりあうのが困難」と感じることがよくある。支援職の間にはさまざまな「隔てる壁」があるが、それを乗り越えて協力することを繰り返すなかで、地域の支援文化が高まるのだと思う。そして結果的にはより生き生きした地域を作ることに貢献しうる。球磨地方は過疎化に悩む小さな地域だが、小さいがゆえに支援者同士が顔見知りになって緊密な連携体制を作ることもできる。困難事例に丁寧に関わるなかで、先進的な試みをしていけると思う。そのためにも事例検討を続けていきたい。
  会が終わった後にも興奮が冷めやらず、皆さんあちこちで話していました。会をやってよかったなぁとうれしく思いました。自分の分野の外にいる人との生きた出会いなくして、専門性も深まっていかないのでしょう。このような「人と人とつなぐ場」を今後も作っていけたらと願いました。

 

写真1 事例検討会のチラシ。

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院内広報誌の原稿1 2017年12月24日(日)

以下は僕が務める吉田病院の院内広報誌に書いた文章です。発達症の1つであるADHDの支援がテーマです。
 
ADHDの支援について
  ADHD(エイ・ディー・エイチ・ディー)という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。英語の略語であり、日本語では「注意欠如多動症」と訳されています。ですが日本語が長いこともあって、僕たちはADHDという言葉をそのまま使っています。
  このADHDは子どもに多い「神経発達症」という疾患グループのなかの代表的な病気です。男の子に多く、保育園・幼稚園や小学校の頃に気づかれることが多いです。じっとしているのが苦手で走り回ってしまったり(専門用語で「多動」と呼ばれます)、忘れ物が非常に多く整理整頓ができなかったり(不注意)、カッとなりやすくケンカで人をケガさせてしまったり(衝動性)といったことがよくみられます。
  ADHDの子どもたちとご家族は、さまざまな問題に直面します。たとえば以下のようなことがよく起こります。ー業中の集中が難しく、成績が落ちてしまう。⊆業中にウロウロしたり、学校から飛び出してしまう。5泙剖淑海靴燭蠹椶蠅世靴董∨集世鬚呂い燭衒に当たってしまう。ぜ犬蕕譴襪海箸多くなり、自尊心が低下して、ますます自暴自棄になってしまう。タ討注意しても子どもが聞かず、危険な行動がエスカレートしてしまうため、親がたたいたりしてしまう。
  ADHDは主として脳の微細な発達の問題で起こると考えられており、「子どもの性格が悪い」とか「親の育て方が悪い」とかいうことではありません。基本的には神経回路の問題なのです。ですが周りからみている人たちは、つい「子どものせい」とか「親のせい」と考えてしまいがちです。そのために子ども自身やご家族の不安や苦しみはとても大きくなることが多いです。
  ですがADHDの子どもとご家族を支援する機関や専門職は実はたくさんあります。まずは保育園・幼稚園や学校、教育委員会の先生方。市町村の保健センターの保健師さん。療育機関の方たち(療育とは子どもの成長や生活、対人交流、学習などを支援する分野です)。医療機関(熊本県こども総合療育センター、小児科、精神科など)。球磨教育事務所の「サポートチーム」。役場の福祉課。児童相談所。などです。それぞれ役割が違いややこしいですが、たいていの場合、どこか1か所につながれば、他にもつながっていきやすくなります。
  では医療機関の役割とはどんなことでしょうか。/濃 Ω〆此診断・治療を行う。病状と今後予想されることの見立てを伝える。K椰佑箸寛搬欧何に困っているのかを聞き取り、対策を考える。す臺擦靴討い訐鎖声栖気あれば、その治療も行う。タ巴能颪覆匹鮑鄒し、社会的な支援が導入されるようにする。Υ慙△垢觧抉腟ヾ悗望霾鹹鷆,鮃圓ぁ統一した支援ができるようにする。Шて饂例に関しては、他の支援者といっしょにケース会議に参加し、多角的な支援策を考える。などです。支援の入り口になることも医療機関の大きな役割なのです。
  吉田病院でも保育園・幼稚園の子どもたちから大人まで、ADHDの診療を行っています。ご心配があれば、お気軽にご連絡ください。

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