お休みどころ

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児童青年精神医学会に参加する1 2018年10月11日(木)

   僕が子ども支援の知識や技術を学べる場に「日本児童青年精神医学会」があります。2年前に岡山で開かれたときに初めて行きましたが、普段聞けないような異分野の研究者のお話などが非常におもしろかったでした。今年は東京で開かれましたので、僕も3日間参加してきました。
   印象的だったのは、赤ちゃんが生まれてからの最初の1年の発達が非常に大事だということが繰り返しいろんな発表に出てきたことです。脳の神経細胞がものすごい勢いで増えていく時期で、養育者との愛着の土台が形成されます。最初の時期にしっかりした養育を受けると、あとあとさまざまな能力が伸びていきますが、最初の時期に虐待などの不適切な養育を受けてしまうと、成長発達のプロセスがうまく進んでいきません。何事もそうですが、最初が大事なんだと思いました。僕の子どもたちはもういちばん下のしずくも1歳半ですから最初の1年は過ぎてしまいましたが、もっともっとかわいがれたら良かったのにと思います。
   異分野のお話がおもしろいというのは今回も感じました。少年法のお話、人類行動進化学のお話、NICUでの親支援のお話など、直接精神科の領域ではなくても、周辺から精神科の役割を照らし出してくれる内容でした。僕が求めているのは、コアな治療技法の部分よりも、他分野連携のヒントなのでしょう。
   学会に行っていろんな話を聞いたからすぐに技術が向上するわけではありませんが、より広い視点から普段の仕事を見渡すことができます。僕の感じるところでは、人吉球磨地域の場合、病院の子ども支援体制はある程度できてきたのだと思います。まだまだ不足しているのは地域の医療以外の支援機関の層の厚さで、そこを充実させていくのが今後の仕事になるのでしょう。自分のしていることを俯瞰的に見るために、学問はとても役立つものだと思いました。

 


写真1 会場であった東京大学の本郷キャンパス。

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児童青年精神医学会に参加する2 2018年10月11日(木)

   以下は僕が学会発表を聞きながら取ったノートです。内容には間違いがある可能性があり、文責は僕にあります。また発表をした人の話のごく一部しかメモを取れていません。記録は僕が興味を感じた部分に集中しています。

 

●シンポジウム  「逆境体験が子どもに与える影響」
◎ACEs studyについて(工藤紗弓)
・ACEとは「子ども時代の逆境的な体験」を指す言葉であり、虐待・ネグレクト・家族の機能不全などを子どもがどれだけ経験したかを指す。
・1998年のFelittiらの研究が古典となっている。このなかで、以下の4つが示された。ACEを経験することは珍しくない。1つ以上を経験した人は64%であった。ACEは複数経験することも多い。1つ以上を経験した人のうちの60%に2つ以上があった。ACEは精神疾患になりやすくするだけでなく、身体疾患(糖尿病やがんなど)や行動面の問題(薬物乱用など)も引き起こしやすくする。い修譴蕕離螢好はACEが多ければ多いほど高まる。
・以後のさまざまな研究でも、,らい六抻されてきた。
・ACEは精神疾患と関連が強い。うつ病、不安症、自殺企図、精神病症状など。
・現在ではACEと神経発達の関係やACEがDNAに及ぼす影響、ACEが次世代に及ぼす影響などが研究されている。
・ACEの悪影響に対する予防因子としては社会的なサポートがある。虐待的な体験をしてきた人を孤立させないことが大切。
・今後社会的に行うことが望ましいことには、ー匆馘サポートの充実、∋抉膽圓悗慮修、親への子育てトレーニング、などがある。
・また\賁膕醗奮阿凌佑砲ACEについて知ってもらう。∋塞愎猷覆箴児科と連携しての早期発見・早期介入。ファミリーサポートなども大切である。

◎小児期に逆境的体験を受けた子どもの多彩な病態に関する考察(笠原麻里)
・逆境的な体験を受けた子どもは多彩な症状をあらわし、病名がたくさん付いてしまう。成長のなかで病名が変わっていくことも多い。
・結果的に病態が見えにくくなってしまう。トラウマが見過ごされやすい。
・「発達性トラウマ障害」はとても有用な概念である。

◎児童虐待現場の子どもと親たち(古田洋子)
・児童相談所に勤務する精神科医の業務は多岐に渡る。子どもや親の診察・治療、児童福祉スタッフとの協議、診断書などの作成、裁判への出廷などが主な仕事である。
・家系図が複雑なケースが多い。いくつもの虐待を受けてきているケースも多い(母から身体的虐待を受け、母の内縁の夫から性的虐待を受けるなど)。
・養育する親自身も虐待を受けてきていることがある。
・虐待の後遺症としてADHD様の症状が出ることがある。
・専門的なトラウマ治療のプログラムに乗れないほど状態が不安定な人には、心理教育のプログラムを行っている。親に対して行うことも有効である。

◎逆境的環境で育った子どもへの治療的関わり(亀岡智美)
・トラウマの影響には以下のようなものがある。/佑鮨頼することを学んでいない。感情に気づきにくく、自由に感じられない。感情や行動のコントロールが苦手。L斉を想像できない。過去のことで頭がいっぱい。げ坦下圓簇鏗下圓量魍笋魴り返し演じてしまう。ゼ分は悪であると信じこんでいる。あきらめきっており、誰も理解してくれないと思いこんでいる。
・トラウマの影響に鈍感な支援現場では、再トラウマ化が起こってしまいやすい。よかれと思ってしていることでよけいに子どもを傷つけてしまう。
・「トラウマインフォームドケア」とは、子どもがどんなトラウマを経験してきたのかを知り、トラウマ症状を把握し、トラウマがどんな影響を与えているかを調べたうえでケアをすることを指す。これはアメリカの薬物乱用支援の文脈から生まれてきた理念。
・子どもに理論を伝え、子どもが自分で自分の人生をなんとかしていけるようになるのが目標。
・子どもにいままで生きてきた逆境とは違った状況があるんだと知ってもらうことが大切。またその子の歴史を尊重するのが大事。

 

●児童青年期の神経・精神発達疫学
◎乳幼児発達の意味するもの(久保田雅也)
・生後1年に発達するものには、/臾桶仞奪螢坤燹↓▲蹈灰癲璽轡腑鵝↓視覚的共同注意、などがある。
・睡眠覚醒リズムについては、最初はバラバラだった睡眠が、徐々に夜に集まり、昼間には起きていられるようになってくる。昼寝した赤ちゃんグループの方がトンネル課題をうまくできるようになっていたとの研究があり、睡眠を通して手続き記憶が固定されている可能性がある。
・ロコモーションについては、ずりばい→手の交互性→足背を床につけてのハイハイ、といった流れでハイハイが発達することが多い。ハイハイの発達の意義は大きく、無意識の能動性・自発性の基礎になることや、移動範囲の拡大、視点の多様化、遠隔の物への興味の高まり、などがある。
・共同注意は他者の心の理解の原初的な形態である。意味への自発的な接近の基礎になる。

◎General populationを対象とする出生コホート(HBCstudy)(土屋賢治)
・浜松の発達支援広場事業に関わっている。多様な心配がある子どもが集まっており、子どもたちの状態の評価をしている。
・自閉スペクトラム症の早期徴候としては、視線が合わないことや言葉の発達が遅れること、社会的微笑がないこと、常同行動があること、などがあげられている。しかし感度100%の早期徴候はない。1歳半から2歳で自閉スペクトラム症に気づけるという意見もあれば、難しいという意見もある。
・二語文の出現は2歳では半分強だった。2歳半でほぼ100%になった。
・言葉の発達は統計学的には5つのクラスに分けるのが妥当となった。発達が高め(12%)、標準(49%)、低め(21%)、遅延(14%)、強い遅延(4%)となった。女の子は高めに入りやすく、男の子は低めに入りやすかった。低め、遅延、強い遅延は自閉スペクトラム症と関連があった。
・他にも早産、父の年齢の高さ、胎盤と体重の比率が小さいこと、母の教育歴の低さ、などがリスクファクターであった。

◎子どもの自己肯定感を決めるものは何か(藤原武男)
・世界的に見ても日本の子どもの自己肯定感は低い。
・要因ははっきりしないが、毎日朝食を取る子の方が自己肯定感が高い。   
・要因ははっきりしないが、身体的・心理的虐待を受けている子どもの自己肯定感は下がっていなかった。ネグレクトでは下がっていた。
・家庭的な要因、学校の環境、などに加えて、ロールモデルになる大人がいるかどうかや、逃げ場となるサードプレイスがあるかどうかが自己肯定感に関係していた。
・学校でいちばん学ぶべきものは自発性・能動性なのではないか。

 

写真1 会場の回りには緑が多い。建物が歴史的な姿を残していることもあって、時間が止まっているような感じだった。

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児童青年精神医学会に参加する3 2018年10月12日(金)

●子どもの人権と法に関するパネルディスカッション
◎少年法の適用年齢引下げ(20歳未満から18歳 へ)に関する議論状況(山健一)
・少年事件は大幅に減少し続けている。重大事件も減っている。子どもの総数が減っていることを考えて、人口比で調整してもやはりそうである。
・少年院の入所者の方が刑務所の入所者よりも再犯率が低い。
・少年司法には家裁調査官による丁寧な分析と働きかけがある。
・少年の処分は責任の大小だけでは決まらず、矯正教育の必要性を考えて決まる。
・少年院は本人の健全な育成という理念に基づいて運営されている。刑務所と違って、基本的に自由時間はなく、担当者はあらゆる生活場面に働きかける。
・少年院では刑務所とは違い、出院の時期も決まっていない。
・少年事件の顕著な減少を見ると、いまの少年法は有効に機能していると考えられる。
・現在、家庭裁判所で扱われる少年の約5割を18・19歳の少年が占めている。少年法の適用年齢を引き下げると、教育的な働きかけができなくなる。

◎児童精神医学の観点から「18歳問題」を考える(富田拓)
・非行少年の問題を考える歳には、虐待と発達障害の関与に注目する必要がある。
・少年院の入所者の約6割が過去に虐待を受けている。子どもの時期の逆境的な体験がいくつあったかを見るACEスコアも高い子が多い。
・発達障害などの精神疾患を持つ子も多い。少年院では精神障害が21.0%(うち発達障害が10.7%)。児童自立支援施設ではADHDが25%、自閉スペクトラム症が15%。
・虐待や発達障害など家裁調査官の調査をもとにわかることが多い。家裁裁判所にはアセスメントやケースワークの機能がある。
・少年院には教育的な処遇がある。刑務所と少年院では機能に大きな違いがある。

・ 脳科学的にも思春期から25歳ぐらいにかけて脳機能の可塑性があるとされており、この時期のうちに矯正教育が行われるのが望ましい。
・少年の殺人も強姦も激減しており、少年事件は量も質も史上最低を更新し続けている。世界的に見ても少年法はうまく機能している。

◎少年法の保安処分化に反対する(高岡健)
・少年事件の処遇には精神医療や教育が必要である。家裁の調査官が入らなくなると要保護性の判断がなくなってしまう。

◎会場も含めての討論
・少年院の現場では3割くらいに発達症があり、そのうちの6割は未診断で入所してくる。中学生の入所者は減っており、18・19歳の入所者の割合が高くなってきている。少年院は矯正教育の最後の砦である。
・18・19歳の子どもの社会的なサポートは手薄である。学校や児相も関われない時に、どこが支えるのか?
・元来刑務所は罰を与える場、少年院は教育を与える場として1世紀近く運営されてきた。文化が大きく違う。
・少年法の適用年齢を引き下げると、18・19歳の子どものケースで親への介入ができなくなってしまう。
・少年法の適用年齢を引き上げた方がよいという立場もあるが、個人と国家の関係などを考えて、慎重に議論すべきである。

 

●平和で持続可能な世界への道(Pathways to a More Peaceful and Sustainable World.  James F.Leckman)
・最初にトゥレット症候群と強迫症の原因や治療を探る研究に従事した。
・強迫症の人の脳脊髄液のなかのオキシトシンが上昇しているのを見つけた。この上昇はチック症の既往や家族歴のない人でのみみられた。
・オキシトシンは視床下部、心臓、胸腺、消化管、生殖器で生成され、報酬、ストレス反応、感覚、生殖に関わる。
・オキシトシンの神経系は対人関係の絆の形成において重要な役割を果たす。
・オキシトシンの上昇は母親が乳児とやり取りすることや、父親が子どもと遊びをすることと関連がある。
・乳幼児の養育に関わる生物学に関心を持ったときに、トルコの弟子から乳幼児養育の支援活動について教えてもらった。その活動に協力しながら研究を進めている。
・2013年のErnst Strungmann フォーラムではより平和な世界を作る方法が話し合われたが、その方法の1つに幼児早期の養育をよくすることがある。養育をよくすることで逆境的な体験の影響を軽減できうる。
・幼児期早期の親子への介入は社会経済においてもメリットがある。
・幼児の健全な発達は持続可能な社会の礎である。
・母子教育プログラムを政策的に活用できうる。
・子どもたちや将来の世代のために、この世界をより良い場所にする行動を起こさないといけない。

 

●発達障害に対する行政的取り組み(日詰正文)
・臨床家は目の前の患者を助けるのが仕事だが、法律の枠組みのなかでしか仕事はしていけない。臨床家がより良い仕事をするためには、行政官とのつながりを作り、自分たちが困っていることや改善すべき現状を伝えていくことが必要である。
・勤務している「のぞみの園」には、高齢の知的障害の人が多数入所している。高齢の知的障害者のケアの改善のために発信している。
・発達障害に関して今後の取り組みが必要な分野には以下のものがある。\在化している事例へのアプローチ。強度行動障害の人や施設を退所した知的障害・発達障害の人たちを支えていける地域づくり。災害や犯罪の加害・被害など緊急な対応が必要な場面への対応システム。つ拘的な支援のための体制づくり(高齢期までの支援、かかりつけ医や保健師の育成)。ヅ事者どおしが支えあえる仕組みづくり。専門的なアセスメントや治療プログラムの普及。 

 

●子どもの権利条約の視点からみた日本の子ども・若者問題(喜多明人)
・子どもの支援を真剣にやりはじめると、自分の専門や本業だけではおさまらなくなっていく。どこまでが自分たちの社会的な使命なのか、そのラインにとどまれなくなる。
・1991年当時、子どもの権利条約を日本が批准する見込みはなかった。NPO法人子どもの権利条約ネットワークを立ち上げたが、学者としてそこまでするべきではないという見方がほとんどだった。
・子どもの権利条約を条約化する提案はポーランドの医師が原動力となって行われた。ポーランドはホロコーストやカティンの森事件などで膨大な子どもや若者を失った。その苦しみを2度と味わわないように防波堤を作りたいというのが原点だった。
・医師ヤヌシュ・コルチャック(1878〜1942)は子どもの権利条約の「精神的な父」とされている。
・いまの子どもの権利条約だけでは、発展途上国の子どもの権利が十分に守られないために、不十分だという批判が世界的には多い。
・子どもの権利条約の精神を日本に広めていきたい。普及啓発が私たちの仕事である。
・現在の日本では、子どもが受け身になっていたり、自ら活動する意欲に欠けることが問題である。ダメージに弱い面がある。
・青少年の自殺も増えている。
・チャイルドラインは子どもの電話相談窓口だが、「子どもの相談を受ける」というスタンスではなく、「子ども自身が力をつけていけるように」と思って立ち上げた。子どものエンパワメントが目的。
・子どもに向けられた暴力の問題は悪化している。いじめ32万、虐待13万、体罰や暴言、セクハラなど。虐待死もあった。人権感覚の欠如が背景にある。
・子どもの権利についての条例を作った市町村が現在47ある。
・現在は学校の疲弊が顕著になっている。若者の教師離れも進んでいる。
・“鷙圈↓貧困・養育困難家庭、H達障害、への対応で学校はもはや限界に直面しており、助けを求めないといけない状況である。
・不登校も増えている。福祉的支援の強化が必要である。スクールソーシャルワーカーの導入など。また学校以外の多様な学びも認めていかないといけない。フリースクールなど。
・訪問型の子ども食堂を提案している。 

 

●子どもたちの高次脳機能障害(中島恵子)
・もともと成人の神経疾患への認知リハビリテーションをしてきたが、子どもの高次脳機能障害にも関わるようになった。
・高次脳機能障害の診断には’召隆鐚租疾患や事故があることを確認する(画像診断)。△修侶覯霧什澆瞭常生活に障害があらわれていること(注意・記憶・遂行機能・社会的行動)。除外診断の確認。が必要である。
・子どもの高次脳機能障害はアメリカでは子どもの500人に1人だが、学校で認識されているケースは少ない、とされている。
・原因としては、事故や低酸素脳症などがある。
・高次脳機能障害があれば、小中学校では特別支援学級(病・虚弱)を利用することができる。
・イギリスでは、子どもの高次脳機能障害の発症には2つのピークがあり、5歳未満では転落や虐待、14〜20歳では交通事故が多いとされている。
・以前は子どもの時期は脳の可塑性があるために症状が目立たないと考えられていたが、現在では脳の発達への影響から成績の低下や友人関係の悪化などさまざまな問題が起こりうることが認識されている。
・脳の認知機能は、ゝ淦期の落ち込み、△修慮紊硫麌、ある時期から発達ペースが緩やかになること、という3段階で変化する。
・成人の場合には高次脳機能障害による能力低下の回復が目標になる。子どもの場合には回復だけでなくその後の発達が問題になり、ある時期から他の子との開きが出てきやすいのでそこが難しい。
・認知リハビリテーションにおいては、モデリングが大事で、まずは見本を見てもらい、それを繰り返していく。
・最初は作業量を多くせず、できるようになってから増やしていく。
・抽象概念の把握が苦手になりやすいので、具体物を活用する。できるだけ多感覚に訴える表現をする。また言葉の理解ができているかをまめに確認する。
・短期記憶の低下には、繰り返しで対応する。論理的思考の苦手さには、まずは見本を示す。攻撃的行動にはクールダウンや刺激を減らすことで対応。
・問題となる症状には、イライラ、人のせいにしてしまう、物を投げる、不用意に大声で話す、ボーッとしてしまう、などがある。

 

写真1 安田講堂。思っていたよりもずっと小さな建物だった。

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児童青年精神医学会に参加する4 2018年10月13日(土)

●青年期の素行問題について〜外来でできること
◎児童思春期の発達障害における親に対する暴力をめぐって(館農幸恵)
・子どもの入院事例では、自閉スペクトラム症、ADHD、知的障害(と境界知能)のいずれもが半数以上にみられた。
・暴力のあるケースではないケースよりも入院期間が2倍近くになった。
・家族機能も予後に関係した。

◎兄弟間での問題(奥野正景)
・兄弟間の暴力問題はあまり注目されていないが、将来の精神的な問題のリスクとなる。
・どこまでが正常範囲の兄弟ゲンカで、どこからが問題なのかという線が引きにくい。
・ルールの設定、下の子の養育役割を多く与えない、療育機関の利用、親がケンカの解決のモデルになる、暴力を促進するようなメディアの利用も話し合う、などで対処している。

◎家族らと本人の悪循環による暴力頻発に苦慮した一自閉症例(猪股誠司)
・幼児早期の支援や保護者への養育支援が入らずに悪化するケースがある。
・経済的な安定や、発達障害への対応になれているスタッフのいる場所の利用、などで安定することがある。

◎多機関異業種連携のあり方と危機介入(山本彩)
・発達障害者支援センターでの対応に苦慮しているケースには、)椰佑忙抉腓鮗けるニーズがない、∨椰佑未診断のままである、F鷦‥な問題がある(暴力・引きこもり・強度の不安・強度の行動障害など)などがある。
・引きこもりのケースでは、家族だけの相談を受け続けることも多い。CRAFTという枠組みで支援すると、3分の2くらいのケースで、本人が相談や受診などの直接支援につながった。 
・普段の支援プランと別に危機的な事態の際のプランを作っておくと役に立つ。

◎討論
・家族機能の課題が大きいケースの支援に訪問看護を使えないか?
・相談支援機関のメリットとしては、支援の調整役になれることがある。また地域や支援システムの課題も見えやすい。デメリットとしては役割を可視可しづらく、過剰な期待を持たれやすいことがある。

 

●人間行動進化学からみた今どきの若者(長谷川壽一)
・人間行動進化学は、「我々はどこから来たのか、何者か、どこに行くのか?」の科学的な解明をはかろうとする学際的な学問分野である。研究プロジェクトの例として「共感性の進化・神経基盤」がある。
・ヒトの進化的適応環境の特徴。ヽ容精て颪聞皀┘優襯ーの食物に特化。道具の使用。集団内の協力。ぢ神ぢ紊任了勸蕕討伴匆馘な伝達。
・20万年前の若者といまの若者の違いは何か?古環境と現代環境のズレとは?
・ヒトの成長発達の特徴。^貳毛乳類には若者・思春期の時期がない。▲劵箸論成熟までの時間がきわめて長い。身長の伸びが鈍化する時期があり、この時期に脳が成長する。た板垢凌びのスパートが思春期。
・ヒトの脳は大きくゆっくり成長する。大きな脳を持つ代謝コストは大きい。エネルギーを多く消費する。
・コストを上回る利益とは?社会的な知性、メタ認知能力。
・大きな脳を維持するエネルギーを子どもは自力で得られない。そのためにヒトは共同養育システムを形成。高カロリー食物(ナッツ、根茎、肉など)を社会が供給。
・進化的にヒトの若者が直面してきたであろう課題。’朸者の探索。ペアボンドが基本。男性は配偶者獲得競争やひけらかしあり。この時期に内分泌の嵐あり。∪人の社会に加入する準備。自己制御、モラル、仲間との絆の形成、文化・知識・技術の習得、上の世代への挑戦。
・思春期と犯罪の関係。犯罪率のピークは10代なかば。男性が女性よりもずっと多い。20代になると急速に低下。ほとんどが窃盗や万引き。金品は同性間競争の手段と見なせる。脳の抑制系が未発達。
・前頭葉の完成は30歳ごろとされている。 
・不登校は中2・中3でピーク。主要因は情緒的混乱と無気力。校内暴力も中1〜中3がピーク。
・身長の伸びのピークの前後に性ホルモンの変化あり。男性はピークの前、女性はあと。
・殺人率にも性の効果と年齢の効果あり。男性が女性よりも圧倒的に多い。また若い男性の殺人率がもっとも高い。
・哺乳類でも同種間の殺し合いが死因の2〜4%を占めており、そのなかでいちばん多いのは雄どおしの争い。
・ところが日本では年齢の効果が1980年代に消失。若者の殺人率(攻撃性と見なせる)がいちじるしく低下。少年の刑法犯(リスク志向性と見なせる)も減り続けている。
・共感性の進化・神経基盤。痛み情動伝染が仲間の間で生じる。
・オキシトシンはヒトの親子だけでなく、ヒトと犬の絆にも関与している。オキシトシンは内集団びいきのホルモンとして働く。
・ただ共感には負の面もあるかもしれない。他集団排除を促すかもしれない。
・現代の若者が苦手なこと。‖侈魅灰潺絅縫院璽轡腑鵝⊇脇鼻熟書・熟話・熟聞。8浚兇鬚箸した現実把握。ぜ然とのふれあい。テ盻乎弔魃曚┐深匆馭Ъ院

 

●リスクを抱えた赤ちゃんと家族の出会いを支える(永田雅子)
・周産期には「親になる」という課題がある。
・昔は「授かりもの」だった子どもが、いまは「作る」という感覚。「元気な赤ちゃんが生まれてきて当たり前」という幻想を抱きがちなのかもしれない。
・不妊治療が一般的にはなったが、やはり心理的・身体的・経済的な負担が大きい。
・出生前診断は、もともとは「生」のための技術だったが、いまでは中絶のためになりつつある。染色体異常が発見されたケースの97%が中絶。
・生育限界は在胎22週であり、これ以後は赤ちゃんの人権が優先されるため、いかなる理由があっても中絶できない。
・在胎22・23週でも救命率が向上。しかし課題もあり。‘院の長期化、∈濛陲悗琉楾圓梁臺僂機↓H達面の予後。
・親の気持ちの揺れに寄り添い、葛藤を抱えるケアが必要。場合によっては親が低出生体重児の治療を拒否することもある。
・「どうして自分の子どもに起こったの?」「なぜ自分にだけふりかかったの?」と親は感じやすい。
・妊娠中や新生児期から母子を一体として治療する流れになってきており、多職種が協働するようになった。
・子どもの治療だけではなく発達を見すえて支援する。家族支援から退院後も含めての支援になってきた。
・周産期心理士ネットワークを1997年に立ち上げたときにはメンバーは5人だったが、いまでは180人以上になり、 8割以上のNICUに配置されるようになった。
・NICUの親子に起こりやすいこと。自分の思いを赤ちゃんに投影してしまう。無力感や罪悪感を抱く。赤ちゃんの状態が不安定であるほどネガティブな思いが誘発される。例えば赤ちゃんが目を開ければ「私をわかったのかしら」と思い、赤ちゃんが目を閉じれば「私を嫌がっているのかしら」と思うことがある。
・NICUの心理士として大事にしていること。\屬舛磴鵑鬟櫂献謄ブな存在として出会ってほしい。▲櫂献謄ブとネガティブと両方の思いを抱えたまま赤ちゃんといれる場の保証。赤ちゃんの行動や反応の読み取りを支えていく。た討隼劼離織ぅ潺鵐阿帽腓錣擦堂霪。
・退院したあとに面談を希望する保護者もある。
・心理士の立場から、家族が赤ちゃんと心理的に出会うことを助けることができる。
・スタッフも赤ちゃんに自分を投影して、親に批判的になりすぎたり、不安を感じやすい。
・場を育てることがNICUに心理士が入る目的。
・低出生体重児では、自律神経系・運動系・睡眠や活動の状態がそれぞれ未熟。発達障害が多い。限局性学習症、ADHD、自閉スペクトラム症。ただ自閉スペクトラム症とは別の状態だと見る流れあり。
・子どもが低出生体重だったり疾患を持って生まれてきた罪悪感は20歳を過ぎても続くことがある。子どもに何らかのつまづきがあったときに出現する。ゼロにはならない。

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しずくの入院 2018年10月20日(土)

   やすみと響をさざなみ保育園に送ったり迎えに行ったりするときに、いろいろな掲示を目にします。遠足や芋掘りといった行事であったり、地域のお祭りであったり、子育て研修会の案内であったりします。冬になるとインフルエンザウィルスやノロウィルスの感染者数なども掲示されます。
   最近保育園に行くときに、「RSウィルスの感染者数」が書いてあることは目に入っていました。僕は知りませんでしたが、RSウィルス感染症は冬に流行して、2歳以下の子どもが悪化しやすいのだそうです。最初に熱が出ますが、あとでは痰がらみや咳が目立つ、とインターネットの情報にはあります。
   あまり気にしていなかったのですが、響がかかってしまいました。情報の通りにまずは熱が上がってぐったりします。さらに咳や痰が続きます。ただそれ以上に問題なのが、子どもが病気をすると甘えたり不機嫌になったり赤ちゃん返りをするので、非常に手がかかるということです。ささいなことで泣き出したり、ごはんのときにも、「パンがいい」と言い出し、そしてパンを持ってくると全然食べないといった具合で、親は振り回されてしまいます(泣)。
   響は病院に言ってRSウィルスと言われました。飛沫感染や接触感染があるので、当面は保育園は中止です。1週間から10日ほどかかるそうです。予想通りにしずくにも移り、病院に連れていくとRSウィルスでした。やすみが体調を崩さなかったのが幸いでしたが、響としずくがグズグズ言ってママの取り合いなどをするので、美紗さんも1日中子どもに付いていないといけなくなりました。
   そこまではまだ想定内だったのですが、想定外だったのは、しずくの熱が高熱になったことです。38度台後半から39度台になりました。また息をするときにヒューヒュー音がするようになりました。美紗さんは心配して「聴診してみて」と言ったのですが、僕は面倒がってしないままでした。
   僕が当直の夜に美紗さんから「陥没呼吸になってるよ」とメールがありました。僕は「チアノーゼになったら病院に行かないとだね」と返しました。次に美紗さんから電話がありました。あまり苦しそうなので病院に行ったら、入院になったとのことです。
   僕は頭が真っ白になりました。入院はいいのですが、美紗さんが入院に付き添わないといけなくなると、やすみと響の面倒をみる人がいなくなってしまうのです。去年響が入院したときも、この人手の問題に困らされました。夜でしたが美紗さんが鹿児島のお父さんに連絡し、幸いにもお父さんが来てくださいました。入院は急に決まるので、家族は準備が大変です。家族としては、付き添いをなくしてほしいと切に思います。
   僕は翌日も日勤でしたので、しずくのもとに行けたのは翌日の夕方でした。美紗さんの話ではだいぶ改善したそうです。体に酸素や点滴やモニターの管がいっぱい付いています。まだ元気がなくグッタリしていました。
   しずくは食事はまだ食べませんでした。内服薬を飲ませたり、ネブライザーをすると、あとは僕の役割は見守りぐらいです。最初はソファーベッドから様子を見ていたんですが、看護師さんから添い寝でもいいですよと教えてもらいました。添い寝をした方がしずくも安心するようで、落ち着いています。
   ですが自動輸液のポンプがピーピーなったり、三方活栓から薬を入れたりで看護師さんが1〜2時間に1回は来られます。その度に目が覚めるので、寝たような寝ていないようなでした。ですが看護師さんが親切な方で、子どもの様子をまめに見てくださっているのがわかり、ありがたく思いました。
   看護師さんが処置などをするときに、しずくは申し訳ないくらいに泣き出します。親に付き添ってもらわないと子どもが泣いてしまい、看護師さんは大変だと思いました。家族にとって付き添いの負担は大きいですが、このやり方しかないのでしょう。
   次に僕が付き添えたのは、入院4日目の昼間でした。食事は半分くらいとれるようになったのですが、まだ呼吸が速いです。主治医からは徐々にステロイド剤を減量していきますと話がありました。改善傾向と聞くと、親としてはホッとします。しずくが目に見えて元気にはまだなっていませんが、少しずつ回復しているようです。
   ところでやすみと響ですが、美紗さんのお父さんとの生活では、普段よりもお利口にしているみたいです。子どもたちなりに「何か大変だ」と感じているのでしょう。響のRSウィルス感染症は改善して咳も出なくなり、保育園への登園許可も病院でもらえました。やっと響も保育園に行けます。徐々に日常に戻っていきます。
   しずくは4日目の夕方には少し遊びが出てきました。僕の方に足を伸ばしたり、指を僕の口に持ってきてチュッとさせたり、酸素飽和度モニターのヒモを触ったりします。子どもの回復は遊びの出現という形を取るんだなぁと思いました。これは大人も同じかもしれません。
   次に付き添えたのは6日目の昼間と夜でした。モニターや点滴がなくなり酸素カニューレだけですし、しずくが元気でベッドから下りて過ごしています。僕の靴をはいて歩こうとしたり、携帯を触ったり、遊びが活発です。「パパ」「これ」といった発語も多く、普段と変わらない感じになりました。もうすぐ退院になるという手応えを感じることができました。
   子どもが病気をすると、普段の家族システムが崩れてしまいます。当たり前だと思っていた生活パターンを回していけなくなるのです。最大の問題は人手が足りなくなることで、僕たちの場合は美紗さんのお父さんに助けてもらえたので良かったのですが、両親や親族と離れて暮らしている人は大変だと思いました。危機のときに家族をサポートする仕組みが、安心して子育てをできるためには求められているのではないでしょうか。子育て支援の仕組み作りは奥の深い分野だと思いました。

 

写真1 入院2日目のしずく。グッタリしている。

 

写真2 入院4日目のしずく。食事がとれるようになってきたが、まだ呼吸が速い。

 

写真3 6日目。美紗さんのバッグを持って遊んでいる。

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慈恵病院で話す 2018年10月24日(水)

   先月「周産期懇話会」という産婦人科スタッフの勉強会でお話させていただけました。そのときに質問してくださったのが産婦人科医の蓮田健さんです。自分が人前で話すときにいちばん恐れるのは、つまらなくて誰も反応してくれないことです。なので蓮田さんが発達症の困難事例の対応について質問してくださったときには、非常にありがたかったのでした。まさにそここそ僕がお伝えしたかったことだからです。
   会のあとにも蓮田さんと話し、非常に近い関心領域があると感じました。直感的なのですが、「自分にとって大事な人になる」と感じたのです。その後メールでやり取りしながら、僕も蓮田さんの慈恵病院に話しに行かせていただき、蓮田さんにも僕の病院の発達症勉強会でお話いただけることになりました。短時間の出会いからここまで発展することは異例ですが、人の出会いにはそういうことがあります。不思議ですね。
   ほんとうは家族で慈恵病院に行かせていただき、子どもたちと蓮田さんのお子さんたちで食事をしていただく予定でした。蓮田さんはきわめて大きなエネルギーで、僕たちのもてなしを考えてくださり、驚きでした。いままでにそんなに真剣に食事の場所や内容を考えてくださる方には出会ったことがなかったです。残念ながら娘のしずくが病気で入院してしまいましたので実現しませんでしたが、ぜひいつか機会を作れればと思います。
   そういうわけで僕1人で出かけました。蓮田さんの慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」という、赤ちゃんポストを行っている日本で唯一の病院です。いろんな事情で赤ちゃんを育てられない母親たちが、赤ちゃんを置いていかれるそうです。その受け入れをして、乳児院につないだり、特別養子縁組した手配をしたりされているそうです。それだけでも驚きですが、さらに相談員を3人も置いて妊産婦の電話相談を無料で受けたり、子ども食堂をされたりと、多様な支援を展開されていてすばらしいです。
   しかも人助けを経営も成り立たせながらされているというところがさらにすごいところです。熊本市のような大都市になると、産婦人科の病院の競争も激しく、運営していくだけでも大変です。そこに「お金にならない」活動をたくさんされています。蓮田さんで超人的に働かれているからこそ成り立っているのではないかなと想像します。
   さて病院スタッフの皆さんの勉強会で発達症の支援と、産婦人科と精神科の連携支援の話をさせていただきました。あとでスタッフの方とお話すると、やはり支援が難しい多問題ケースをたくさん抱えておられるそうです。多問題家族のケースなどは解決には何年もかかることが多いです。僕からすると、関わって悩んでくださる方がいること自体がすばらしいことだと思いました。ぜひこれからもいっしょに勉強や事例検討などをしていきたいです。
   そのあと蓮田さんのご家族にお会いできたり、蓮田さんと食事しながらお話を聞けたりしました。形は全然違いながらも、地域にある支援が入りにくい困難事例の解決に向けて取り組んでいるというところは共通でした。なので分野が違うという感じがあまりしませんでした。むしろ似ている点が多くて驚きました。
   僕の人生では、ときどきですが、新しい分野に目を開かせてくれる「人生の師」との出会いに恵まれてきています。蓮田さんもまた、僕を刺激して育ててくださる方なのでしょう。そういう出会いはまさに天の恵みで、感謝するほかありません。これからどんな形でいっしょに活動していけるか楽しみです。蓮田さんにお話に来ていただく。

 

写真1 「こうのとりのゆりかご」。いろんな事情で赤ちゃんを育てられなくなった親が、子どもを置いていかれるそうだ。慈恵病院ではただ受け入れるだけでなく、親の相談に乗ったり、さまざまな支援活動をされている。

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2018年10月日録1

10/2(火) 息子の響は3歳半になるが、まだトイレでウンチをできない。言葉のやり取りの発達の遅れとあわせて、僕たちの悩みの種だった。いままでにもいろいろ促してきたが、変わらなかった。僕もほとんどあきらめていた。ところが朝に響がしゃがみこんだときにトイレに連れていくと、なんとウンチをできた。「やっぱりできた」と当たり前のように響は言った。子どもの発達は徐々に進んでいくはずだが、ある日急に進展するようにみえる。生命の成長は飛躍を含むのかもしれない。
   球磨郡の保育園の保護者連絡会の方が講演会を企画してくださった。事前に打ち合わせに来てくださり、何回も連絡を取りながら非常に熱心に準備してくださった。参加者も200人を越え、保育園の先生や保護者の方たちが関心を持ってくださっているのがわかった。質問もたくさん出て、時間内には半分も答えられなかった。地域に関心を持つ方が増えれば、結果的に地域の支援体制も向上していく。人吉球磨の発達症支援はどんどん良くなっていくだろうと感じた。
10/3(水) 宮崎県えびの市の「生駒高原」がきれいだとは10年前くらいから聞いていた。去年美紗さんと1度行ったのだが、火山(新燃岳)の噴火でなかに入れなかった。この日、しずくを親子サークルに連れていったら、職員さんが生駒高原の話をされた。そこで急きょ美紗さんと出かけてみた。
   名物のコスモスの季節だけあって、人が多かった。台風にコスモスが倒されてしまったとのことで、入場料が半額だった。入ってみると、お茶などの出店があり、その向こうで急に視界が開ける。山の上から地平線を見るような広大さがある。えびのの市街地が遠くに小さく見える。
   お花もきれいだったが、それ以上に場所の気が良かった。美紗さんと散策や昼食をしたあとにも、1時間半くらいはボンヤリとして過ごした。時間が止まったような、あの世に近いような感じがした。場所自体の持つ力に驚いた。
   人吉市にある「青井阿蘇神社」の「半纏(はんてん)おろし」という行事の案内を保育園からもらった。子どもたちが喜ぶならと参加することにした。でも何をする行事なのかは知らなかった。当日に行ってみて、まわりの人と話してわかったのは、年に1回の大祭「おくんち祭り」の最初に、参加者の無事を祈願する集まりだということだ。蓋を開けてみると、本格的なちょうちん行列だった。ほんもののロウソクに火をつけて歩くので、子どもたちの服に火が移らないか心配だった。 思ったよりも長い時間かかったため、子どもたちは疲れてしまったが、厳粛さのようなものは感じたようだ。子どもたちには、良いことも良くないことも含めて、いろいろな経験をしてほしい。

 

写真1 やすみは保育園年長だが、地域の小学校の運動会に1種目だけ参加した。

 

写真2 宮崎県えびの市にある「生駒高原」。広々とした空間に安らげる。

 

写真3〜4は人吉市にある「青井阿蘇神社」の行事「半纏(はんてん)おろし」に参加した際に撮った写真です。


写真3 人がたくさん集まってきた。大祭「おくんち祭り」の無事を祈願する集まりとのことだった。  

 

写真4 ちょうちん行列に参加した。

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2018年10月日録2

10/5(金) フリースクール「学びの杜学園」の創立5周年記念誌が届いた。子どもたち、保護者、学園スタッフ、学園を支える人たちのそれぞれからの言葉が並んでいる。読みものとして作られているわけではないが、言葉に密度があり、「不登校になり、学園に通い、復学する」というプロセスを体感することができる。それは八方ふさがりの状態から、自分なりの抜け道を見つけていくということでもある。既存の学校システムはかなりよくできているが、どうしても合わない子どもたちもいる。その子たちに対してどんな風に教育支援をするのかは社会的な議論が必要だ。学びの杜学園は支援のモデルの1つになりうると思う。
10/6(土) 看護研究の発表会に参加できた。僕は時間に遅れて発表自体はあまり聞けなかったが、雰囲気は感じ取れた。どんな組織でもそうだと思うが、「どうせがんばっても何もならない」と言って、何もチャレンジをしない人がいる。文句を言うわりに何もしないという人たちだ。そういった敗北主義的で虚無的な雰囲気に、やる気のある人たちが、いかにして飲み込まれないかが大切になる。小さなことでもいいから、「自分が大事にしていること」とか「自分なりの活動」などを持っている人からは、たとえ成果が上がっていなくても、建設的な雰囲気がにじみ出る。「個人で進む道」を歩いている人と、出会い続けたいと思った。
10/7(日) やすみと響が通っているさざなみ保育園の運動会があった。今回はやすみと響が両方出場する。響は以前から言葉の指示理解が苦手で、保育士さんが個別で関わることもあると聞いていた。運動会の練習でもトラックの途中で走るのをやめてしまったそうだ。ちゃんと走ることができるのか、僕は心配していた。
   響は非常に遅くはあったが、なんとか走ることができた。走りながら客席の方ばかりを見ていて、あまり集中はしていなかったが、ともかくできたのでうれしかった。響も自信を付けたようだ。
   たまたまかもしれないが、響の言葉が増えてきた。またできないことにチャレンジすることが増えてきた。例えば自分からお箸を使って食べようとしたり、公園で難しいアスレチックスを自分で登ろうとしたりする。響に発達症があろうがなかろうが、自分なりにチャレンジして成長していってくれたら非常にうれしい。
   子どもたちが好んでいるのが、『講談社の動く図鑑MOVE 危険生物』(小宮輝之監修、講談社、2016年)だ。図鑑と付属のDVDで、動物の強さや危険性がよくわかる。実際に起こった事故や事件をもとにして書いてあるので、通常の動物図鑑に比べてリアルだと感じる。人吉球磨でも猪や鹿、猿などの農作物被害に悩んでいる。動物たちとのほどよいつきあい方を研究するのはとても大事な分野だと思う。

 

写真5 フリースクール「学びの杜学園」の創立5周年記念誌。特に子どもたちと保護者の文章に言葉の密度がある。

 

写真6 さざなみ保育園の運動会。響はゆっくりではあったが走ることができた。

 

写真7 『講談社の動く図鑑MOVE 危険生物』(小宮輝之監修、講談社、2016年)。動物の持つ危険性を通して、動物と人間の関わりを考えさせられる

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2018年10月日録3

10/8(月) 宮崎県小林市の「生駒高原」に行った際に、「ナイトコスモス」というイヴェントがあることを知った。夜にライトアップや花火があるらしい。たまたま僕たちが行ける日程だったので、出かけてみた。
   予想以上に非常に混みあっていた。コスモスのライトアップではなく、たくさん並んだキャンドルライトを楽しむ集まりだった。おもしろいのは参加型なことで、参加者が渡された点火器で火のついていないロウソクに火をつけていく。僕たちが参加したときには風で消えてしまったロウソクが一部あったので、つけていった。子どもたちは自分の力で火をつけられることに興奮していた。
   出店がたくさんあり、のんびり食事ができる。ステージではライヴが行われていた。そのうち花火が始まった。かなりの量と迫力だった。でも花火が終わったからといって、お客さんたちが急に帰ったわけではなく、多くの人たちがじっとロウソクの光に見入っていた。光が連なって天の川のようだ。電気の光と異なり、ロウソクの火はたえず変化していて、深い象徴性を帯びている。人間の命そのもののようでもあり、だからこそつい見入ってしまうのだろう。
10/9(火) 子どもたちが虫取りをしたいというので、「虫がいそうなのはどこか?」を美紗さんと考えた。草原がたくさん続いているところということで、「錦・くらんど公園」(熊本県球磨郡錦町一武)に出かけてみた。行ってみるとバッタがすごくたくさんいて、子どもたちが夢中になった。奥には小さな池があり、アヒルがいたり、コイが泳いでいたりする。池のまわりには沼地もある。僕自身が小さい頃に虫取りが好きだったので、子どもたちに虫取りを教えたかった。ジッと静かに周囲に目を凝らす練習になると思う。
   汗をかいたので、温泉に行くことにした。たまたま行こうとしていた2つの温泉が2つとも休館日だった。困ったが、美紗さんが比較的近くにある「温華乃遥(おかのはる)温泉」(〒8680431熊本県 球磨郡あさぎり町岡原北929、電話0966499151)を見つけてくれた。行ってみると、地域の人たちが続々と入ってくる。温泉自体もシンプルだが非常にくつろげるもので、子どもたちがなかなか上がりたがらなかった。さらに休憩室や売店もあり、夜ごはんまで食べられた。すごくいい保養施設だが、職員さんの話では1月に温泉は閉まるのだそうだ。残念に思った。
   上球磨の認知症初期集中支援チームに参加した。この日は普段は参加されないチームの検討委員会の方たちにも入っていただいての議論だった。「多問題家族ケースにどうやって予防的に介入するか?」というのが永遠のテーマで、本格的な虐待や触法行為などに至る前に支援を行う必要がある。地域の平和のためには、認知症だけではなく、子どもから高齢者までに支援を行えるチームが必要だ。

 

写真8 宮崎県小林市の生駒高原のイベント「ナイトコスモス」。参加者が自らロウソクに火を付けていくのがおもしろい。子どもたちは自分たちで火を付けられることに興奮していた。

 

写真9〜10は錦町にある「錦・くらんど公園」で撮った写真です。

写真9 虫取りをした。奥には池があり、アヒルやコイがいる。

 

写真10 しずくは上の子たちのまねをして、網を持ちたがった。

 

写真11 響が初めて自分から「お箸で食べる」と言い出した。

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2018年10月日録4

10/13(土) 学会に参加したときに、会場の書籍コーナーで『子どものこころの診療ハンドブック』(日本総合病院精神医学会 児童・青年期委員会編集、星和書店、2016年)を買った。非常に実用的であり、現場で求められる活動が包括的かつコンパクトにまとめられている。的確に要約されているので読んでいて退屈しない。僕の場合、病院の子ども支援チームで勉強するためのテキストにしてもいいなと思った。
10/14(日) 球磨支援学校の文化祭である「くましえん祭」に家族で出かけた。天気が良かったこともあり、去年以上に早くうどんが売り切れてしまった。生徒さんたちの作品である陶芸や手芸なども、僕たちが行った頃にはほとんど売れてしまっていた。参加者が多くて、活気がありうらやましくなる。自分たちの病院の文化祭もこのぐらい勢いがあればいいなと思った。
10/16(火) 子どもたちの保育園でRSウィルスの感染症が流行しており、響がかかった。2歳までの子が特にかかりやすく、発熱・咳・痰といった一般的な感冒症状を呈し、治療法は対症療法との情報だ。でも実際に子どもがかかると夜中や朝方に咳き込んで苦しそうだったり、咳こむあまりに吐いたり、不機嫌になったりして大変だ。また感染しやすいので、しずくにも移ってしまった。「子どもが病気をしだして、一家全滅になった」とはよく聞くことだが、実際に体験すると親は夜中に寝れなくなったりして大変なのだとよくわかった。
   球磨郡の保育士さんたち向けに発達症や虐待問題の系統講義をしている。毎回2事例のグループワークを取り入れている。皆さん慣れてきたのか、3回目の今回は議論する時間を15分に短縮したのに、複雑な問題を整理して、課題ごとの対策を挙げてくださっていた。次回が最終回で虐待支援がテーマなので、参加者の方たちがどんなふうに分析して支援を考えてくださるか楽しみだ。
10/23(火) 地域の小学校の家庭教育学級に招いていただいた。PTAが主催する集まりで、子どもの保護者や教員が集まる勉強会だ。40〜50人ほど集まっていた。非常に熱心に聞いてくださったので、僕も話しながら新しいアイディアが次々浮かんで、たくさん脱線した。でも脱線の方が本題よりも聞き手には伝わることが多い。脱線というのは、その場での参加者と僕の化学反応のようなものだと思う。

 

写真12 『子どものこころの診療ハンドブック』(日本総合病院精神医学会 児童・青年期委員会編集、星和書店、2016年)。コンパクトながら子ども支援の現場で求められる知識の要点がぎっしり詰まっている。

 

写真13 球磨支援学校の文化祭「くましえん祭」にて。子どもたちが風船シートに乗っても割れないから不思議だ。

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