4/1(日) 鹿児島市内の部屋を引き払い、人吉市内のマンションに引っ越しをする。以前から美紗さんが着実に準備を進めてきていたが、やはり荷詰めは大変で、前日も夜の2時まで、当日も朝6時から2人でパッキング作業。朝8時に引っ越し屋さんが来る直前になんとか荷造りを終える。
引っ越し屋さん4人に加えて美紗さんと僕も運び出し作業に加勢。かなり速く終わるかと思ったが、途中ソファーやテーブルの足がつっかえて廊下を通らなかったりして苦戦。結局10時半まで2時間半の作業になった。
ちょっと作業しただけで僕は腰が痛くなる。自分の非力さを実感。引っ越し屋さんたちは体幹部の筋肉の付きが違う。鍛えられていて頑強な体なんだなぁ…。おじさんたちに感謝をこめて美紗さんは飲み物とお菓子の差し入れをする。
引っ越し屋さんが出発してから大家さん(85歳、元気で米作りをされている、言葉が知恵深い)にご挨拶をし、最後の部屋掃除をする。2人で住むには小さかったけど、光がよく入り、便利な場所にあって住みやすい部屋だった。美紗さんは汚れがないか最後まで気にしている。
13時からは人吉市のマンションの部屋への運び入れ作業。こちらは玄関や廊下が広いこともあってかなり気楽な作業になる。ひたすら段ボールの山が積み上がっていくばかりで片付いたわけではないのだが、「やった〜」という気分になる。ぐちゃぐちゃだけど新しく部屋ができていく。
作業中、友人たちが差し入れをしてくださる。鶴上うしをさんはサンドイッチ、谷口博文さんと睦代さんは花束。知らない町で一人ぼっちで生活を始めるのとは違い、友人たちがついていてくれるので心強い。
2時間ほどで作業が終わり、ひとまず急須と湯呑みでお茶を一服。お花と食糧とは一番ありがたい差し入れだった。とりあえず休憩しないと前に進めない。
夜まで片付けを続けてクタクタ。とりあえず近くで何か食べようとフラフラと歩いていくと、150mほどで飲食喫茶店「プリンス」(〒868-0005人吉市上青井町140-20、0966-23-4978)が見つかる。木肌の黒が中心の落ち着いた内装で、おいしいコーヒーを出す昔ながらの喫茶店といった雰囲気。時間がスローで気持ちがゆったりとする。
美紗さんは「ミートドリア」、僕は「ミックスピザ」を食べる。おいしくてさらに「ペペロンチーノ」を注文してしまった。シェフの太田さん夫妻の息子さんが鹿児島市の方と結婚されたそうで、そんなことからシェフのお話を聞くことになる。18歳のときからもう44年もお店を続けておられるそうだ。シェフはフォークソングがお好きで、歌手を招いて店内でライヴを開いておられる。5/28(月)の19時からもライヴがあるという。この店で聞くと音楽と雰囲気が一体となって心を溶かすだろうなぁ…。
4/2(月) 新婚旅行に出かける前の最後の英会話レッスン。湯前町の古民家レストラン「Wabi-Sabi」で、ジミーくんから教えていただく。天気がよかったのでレッスン前にお庭でランチをいただく。外に並べられた石のテーブルセットからは湯前町の平野の広がりと取り巻く山々の両方が不思議なくらいに見渡せる。
ジミーくんの母・ラッセル光子さん手製のお好み焼きをいただく。お好み焼きといってもラッセル家風の個性的なもので、小麦粉ではなくヤマイモが中心になっている。やや広島焼きに近いが、お焼きのイメージがなく、「光子焼き」といった方が適切な気がする。カリッと焼けたお肉とたっぷり入った細麺をヤマイモの風味が包んでいて滋味。
今回のジミーくんのレッスンではScrabble(スクラブル、何かを探して動き回る、などの意)という英単語ゲームをする。ボード上に並んだアルファベットの駒に、手持ちのアルファベットの駒を付け加えて英単語を作り、得点を競う知的なゲーム。英単語を身につける練習になるかと思っていたがかなり難しく、いろんな単語を知っていないとやや遊びにくい。逆に語彙が豊富だと手持ちの7つのアルファベットと盤上の駒を使ってさまざまな単語を組み立てることができ、どの単語が一番高得点かを考えて駒を打てるので、高度に戦略的なゲームになる。やっているうちにいつの間にか夢中になり、頭が痛くなるほど一生懸命に考えていた。
4/3(火) 朝起きるとまるで空から砂利が落ちてきているかのような大雨。屋根からバラバラ音が走ってくる。ザーッと降り、ちょっと休んでまたザーッと、というように間を挟んで発作的に雨が降る。いまでは大して驚かないが、お休みどころに移り住んだ当初は平地との雨の質の違いにハラハラさせられた。
伊敷病院を辞めて3日目。根っこを抜かれた植物のような、心のどこかが風にさらされている感じがする。僕の精神医学の師であった神田橋條治さんや植村彰院長に頼っていた部分が大きかったんだと離れてみて感じる。特に植村院長には自分の父を重ね合わせていたところがあり、寂しいような、でも無事に働き終えられてよかったような、でも期待に応えられず申し訳ないような、悲喜こもごもな気持ちが湧き起こる。優れた医師たちの多い環境で、自分のねじくれた心も知らず知らずに治療していただいていたのだろう。
お休みどころから人吉市に向かう道中、水上村のカフェレストラン「kitchen cafe奥球磨だんだん」で休憩する。頼んだのは「だんだんクレープ」。オレンジのソースとアイスクリームともっちりした生地の組み合わせがとてもいい。いつもながらお座敷のたたずまいもスッキリと美しい。
料理人の吉田和江さんは小さいころ画家になる夢を持っていたという。その夢がいまになり形を変えて、料理の色合いや盛り付け、味わいのセンスとして活かされているのだろう。
美紗さんの住所変更や家具の購入、海外での携帯電話使用の確認などいくつか用事を済ませるともう夜になってしまった。また人吉の部屋の近くにあるお店に入ることにした。青井阿蘇神社のすぐ隣に偶然見つけたのがイタリア料理店「Taverna da Mizumoto(タベルナ・ダ・ミズモト)」(〒868-0005熊本県人吉市上青井町120-5、電話0966-22-3471)。非常に個性があって入ってとてもよかったと思える店だった。
清潔で小さな店内だが、黒板に(おそらくイタリア語の)メニューがたくさん書いてある。冊子のメニューにも(コース料理の説明がある以外は)黒板で選んでくださいと書いてある(笑)。シェフに詳しく聞こうと思っても、頑固一徹で無口な職人肌の方のよう。よくわからないのでパスタコースを注文した。
サービスのいい店とはいえないが、なぜかこのときすごくおいしいんじゃないかという予感がした。実際にそうであった。サラダ、パン3種、前菜3品、スパゲティー、デザートと出てくるそれぞれが素晴らしく、既製品にはない手作りの旨味のようなものがあった。この「ダシ」は何なのだろう?と何度も感じた。
味よりも接客を期待する人には不向きだと思うが、こだわり抜いた素材と調理でうならせる職人の店といった感じで、美紗さんも僕も大満足。量的にも豊富だ。いつか友人が人吉に来てくれたらぜひいっしょに行ってみたいと思った。
4/4(水) ジミーくんはピザ窯を庭に自分で作りたいと思っている。参考のために、鶴上うしをさんの案内で、あさぎり町在住の久保田さん(シイタケ栽培)の森を5人で訪ね、ピザ窯を見せていただく。僕の背丈ほどもありそうな立派なもので、大きな石を積み上げて作ってある。焚き木を燃やす部分のうえに厚い鉄板で囲ったスペースがあり、そこがピザを焼くスペース。炎と煙が鉄板の回りを巡って暖め、鉄板の放散する熱でピザが焼けるようになっている。だから焦げないまま、しっかり水気を飛ばして焼けるのだろう。
見学時にはお留守だった久保田さんがその後帰って来られ、お話を4人(ジミーくん、ラッセル光子さん、美紗さんと僕)で聞く。好奇心とチャレンジ精神が旺盛な久保田さんは、なんでも手作りの人。山小屋も燻製窯もピザ窯も自分で作られたのだそう。「まずは火に強い石を集めておくことです」という一言に始まって、ダーッと知識の奔流が始まる。「尊敬すべき人がいるわね…!」と光子さんも感嘆。頼りになる先生が見つかってジミーくんも少し安心したようだった。
4/6(金) 杉山さつきさんは美紗さんの高校同級生で親友。そのさつきさんが僕たちの新居を見に来たいとのことだったので、鹿児島市まで迎えに行き、いっしょに人吉を回る。人吉・鹿児島間は高速道路で1時間20分ほどであり、お休みどころから鹿児島に行くことを思うとずいぶん楽になった。
まずは人吉の部屋で一服。まだ段ボール箱があちこちに広げてあるなか紅茶とお菓子をいただく。「玄関が広いね〜」「部屋も広くて明るいね!」とさつきさん。確かに玄関は幅に余裕があって使いやすい。そして南側いっぱいに大きな窓があって明るい。
人吉の部屋の目の前には青井阿蘇神社と蓮池がある。蓮池には散った桜の花びらがいっぱい浮いていて花吹雪のよう。朱色の小さな橋もいっそう引き立って見える。鯉や鴨たちの姿が見え、ほのぼのとした景色である。
神社にお参りしたあと徒歩1分の「町屋ギャラリー 立山」(〒868-0008熊本県人吉市中青井町311、電話0966-24-0866)へ。古民家を利用した喫茶・展示・販売スペースだ。いつも迎えてくださっていた永田勝康・洋子さん夫妻がお辞めになったと聞き大変残念。勝康さんのスケールの大きな文化論や洋子さんの鋭い審美観について聞かせていただくのが楽しみだった。でも店内にはいまも変わらず美と実用を兼ねた生活用品が所狭しと並び、ひと安心。永田夫妻の息子さんの木工作品も展示されていて豪華であった。
お昼を球磨盆地を一望できる「Kura 倉 Cafe(くらくらかふぇ)」(〒868-0022熊本県人吉市願成寺町1007-20、電話0966-28-3080)でいただいたあとは、人吉観光の定番であるくま川下りと球泉洞。くま川下りの「急流コース」に乗船するのは初めてだったが、所々にある流れの速い瀬を通るときがスリリング。流れが穏やかでまったりうとうとするときと、流れが速くて水しぶきが上がるときの緩急の差がおもしろかった。この日は海外の方も多く乗船していたので、いつか日本語だけでなく英語での解説放送も付けていただけるとありがたい。
くま川下りの終点からはリフトを使って球泉洞の入り口へ(子どもたちはリフトが大好き!)。3人で「探検コース」に入る。探検コースに入るのはもう美紗さんと僕は5回目くらいだが、ガイドの大瀬さんは初めて。いままで行ったことのないところを見せてくださったり飽きることがない。初めて球泉洞に入るさつきさんにとってすごいインパクトがあったのはもちろんである。声を大にしておすすめしたい自然体験スポットである。
4/7(土) 人吉の部屋からお休みどころに行き、明日からの新婚旅行に向けての用意をする。ふと見ると置き手紙がある。「文学仲間と水上村に北御門二郎さんの調査に来ました。ひょっとして会えるかな…と思い寄ってみました…」。なんと鹿児島から友人の小原裕子さんたちが訪ねてくださったのだった。お会いできずに残念。お休みどころを始めて最初の数年間、集中的に助けていただいた方なので、いまの新しくなったお休みどころをいっぱい味わっていただきたかった。ぜひまたおいでいただきたい。
人吉市の部屋で新婚旅行のパッキング。ぎりぎり夜までかかる。美紗さんもくたくたである。夕食は徒歩3分の「好来らーめん(はおらいらーめん)」(熊本県人吉市下青井町76、電話0966-23-3330)で食べる。店内にメニュー表はなくラーメンのみ。豚骨スープの効いた大盛り麺で一杯550円。店内には次々とお客さんたちが入ってきて淡々と食べていく。皆さん満足そうである。学生さんでも来れる安くておいしい元気の出るお店である。
4/8(日)〜5/15(火)、オーストリアとイギリスへ新婚旅行。
写真1 引っ越し直前。段ボール箱のうえで朝ごはん。
写真2 引っ越し屋さんたちと運び出し作業。タンスなどをくるむ弾力性のある布(蛇腹)が大活躍。
写真3 2時間半ほどで無事に荷物はトラックに積み込まれた。
写真4 人吉市の新しい部屋。青井阿蘇神社の蓮池の隣にある。
写真5 初めての来訪者となった鶴上うしをさん。サンドイッチの差し入れを届けてくださった。
写真6 引っ越し屋さんが帰ったあと、とりあえずお茶で休憩。谷口博文さん差し入れのお花を飾り、サンドイッチをいただく。
写真7〜9は人吉市の飲食喫茶店「プリンス」で撮った写真です。
写真7 店内の様子。木の黒が基調の落ち着いた空間。
写真8 「ミートドリア」を食べる美紗さん。手前は僕が食べた「ミックスピザ」。味は上質。
写真9 店主の太田さんと。もう44年続けておられるという。
写真10〜15はジミーくんの英会話レッスンを受けた際に撮った写真です。会場は湯前町の古民家レストラン「Wabi-Sabi」。
写真10 Wabi-Sabiのお庭はオシャレ。美紗さんの右にいるのが飼い犬のロッキー。
写真11 天気がいいので外でランチをいただく。ジミーくん(左)と美紗さん(右)。食卓と椅子は石でできている。
写真12 いろいろな木が植わっている。根元には絶滅危惧種のツクシノイバラも育っている。ジミーくんは保護活動に携わっている。
写真13 ジミーくんの母であるラッセル光子さん特製のお好み焼き。広島焼きに近く、ヤマイモの風味を味わえる。
写真14 ボードゲームScrabbleをするジミーくん(左)と美紗さん(右)。盤上に英単語を作っていき得点を競う。かなり頭を使う。
写真15 結局夕ごはんまでいただけることになった。いつもよくしていただくばかりである。
写真16 雨の日はどんより。
写真17 突風のあと。杉の枯れ葉が道路に舞い散っている。
写真18〜23は美紗さんが撮影した水上村の桜です。
写真18〜19 「ほいほい広場」にて。
写真20 市房ダム湖沿いの道。ずっと桜並木である(1万本)。雨と強い風でだいぶ散ってしまったが、それでもまだまだ華やかであった。
写真21〜23 「桜の里展望所」にて。
写真24 「桜の里展望所」で撮影しようとしている美紗さん。
写真25〜26は水上村のカフェレストラン「kitchen cafe奥球磨だんだん」で撮った写真です。
写真25 お座敷の様子。
写真26 「だんだんクレープ」。オレンジのソースとアイスともっちりした生地の取り合わせがピッタリ。
写真27〜30はイタリア料理店「Taverna da Mizumoto(タベルナ・ダ・ミズモト)」で撮った写真です。
写真27 店内の様子。黒板にイタリア語のメニューがいっぱい書いてある。シェフは黙々と調理に励んでいる。
写真28 サラダ、パン3種、前菜3種。すでにこれだけでもお腹が満ちてくる。貝殻に入ったカキグラタンや小さなピザなど前菜のそれぞれがおいしい。水の入ったビンもおもしろい。
写真29 パスタ。美紗さんは「サーモンときの子のクリームスパゲッティ」、僕は「カルボナーラ」。かなりお腹いっぱいになる。どちらも既製品のソースにはない微妙で多様な味わいがある。きっと素材の1つ1つを吟味して作ってあるのだろう。
写真30 スパゲティーを食べる美紗さん。ウ〜ン、満足。
写真31 部屋のベランダから見える人吉の朝の風景。
写真32〜34はあさぎり町在住の久保田さんのところで撮った写真です。
写真32 立派なピザ窯。石板のうえがピザを焼く部屋で、石板の下が焚き木を燃やす部分。ピザを焼く部屋の壁は厚い鉄板でできている。煙はピザを焼く部屋の両脇を巡って熱を伝え、煙突から抜けていく。鉄板から赤外線が放射され、ピザがおいしく焼ける。
写真33 久保田さんのシイタケ栽培場にて。左からジミーくん、ラッセル光子さん、鶴上うしをさん。猿に取られてしまうので、上までネットで囲んである。原木が整然と並んでいる。
写真34 久保田さんのお話を聞く。左からジミーくん、ラッセル光子さん、久保田さん、美紗さん。久保田さんは山小屋も燻製窯もなんでも手作りしてしまう達人。若いころに仕事で身につけた測量の考え方が役に立っていると話される。
写真35 人吉市の部屋で初めて美紗さんが夕食を作ってくれた。引っ越し荷物の段ボールが少しずつ減るにつれ、ホッとできるスペースになってきた。
写真36〜38は人吉市のマンションの目の前にある青井阿蘇神社の蓮池で撮った写真です。
写真36 蓮池にかかる紅い小さな橋で結婚写真を撮るカップル。
写真37 マンションの方へ歩いていく美紗さん。
写真38 蓮池でコイのえさを撒いたらコイの代わりに鴨がやってきた。水面には桜の花びらがいっぱい。
写真39〜56は杉山さつきさんの来訪時に撮った写真です。
写真39 まずは人吉の新居で一服。杉山さつきさん(右)と美紗さん(左)。
写真40 青井阿蘇神社の境内で大きな「きじ馬」にまたがる美紗さん(左)。きじ馬は球磨地方の郷土玩具で、通常手の平に乗るくらいのサイズ。
写真41 「町屋ギャラリー 立山」に向かうさつきさん(左)と美紗さん(右)。
写真42 町屋ギャラリー立山でお買いもの。小物、衣類、陶器、タオル、木工品などいろいろ並んでいる。
写真43 青井阿蘇神社の蓮池でコイのエサやり。やはり鴨が寄ってくる。水面には桜の花びらがいっぱい。
写真44 レストラン「Kura 倉 Cafe(くらくらかふぇ)」の庭園。球磨盆地を一望できる。
写真45 「Kura 倉 Cafe(くらくらかふぇ)」で食事する美紗さん(左)とさつきさん(右)。
写真46 くま川下り「急流コース」の出発点にて。川面が光りに輝いている。
写真47〜50 くま川下りの様子。
写真51 くま川下りの終点から乗るリフト。
写真52〜56 鍾乳洞「球泉洞(きゅうせんどう)」の「探検コース」の様子。何度行っても楽しい。
写真57 夜遅くまで新婚旅行の荷造りをする美紗さん。
写真58 人吉の部屋はまだ段ボール箱がいっぱい。
写真59 「好来(はおらい)ラーメン」の店内の様子。
写真60 ラーメン。一杯550円と安く、しかもすごく大盛り。豚骨スープが効いていておいしい。